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その2
あの日、私はこんな風に空なんて眺めていなかった。
親から貰ったありがたい名前なのに、その時の私にはまったく似合わない。
ソラなんて名前は足先で蹴ってゴミ箱にポイ。そんな事から始まった親との熾烈な確執はこれからもその先もずっと続いていく。
街は寒さが日に日に増していく冬の真っ只中で、私はマフラーとコートに守られて、すべての世界を拒絶する。
歩く行く先は近くにある弁当屋。
今日はバイトの給料が入ったから久しぶりにご褒美のホカ弁を買いにいく途中だった。
今日は唐揚げ弁当とビールで一杯。その後、読み干した三島先生の甘美な世界に浸って酔う。
私にとって文字に囲まれた世界にいるときだけがリアルな世界で、それ以外の外の世界は空虚でつまらない、何もない世界だった。