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その1
1K、風呂なしの2階のアパート。
窓辺に置いた使い古しの小さな机で私は今日もタイプを進める。
気にしなければ気付かないタイプ音はこれまた使い古されたパソコンのキーボードから、今日はちょっと悩み、迷うそんな音。
窓からは春らしいそよ風が鳴らすカーテンの揺れる音とすずめの音と車の音。気にし出したらキリがないそんな音だけど、あなたはそんな音すら愛おしいと言っていた。
私には分からないそんな世界。そこにあなたは生きている。
あなたは今日もたぶんどこかで音に囲まれ、生きているんだと思う。
そして、私とおんなじ、このどこまでも青く進む空を見ているのかな。
ねぇ、リク。私は今日も小説を書いてるよ。