第8話 嵐の後で
今朝の天気はと……
おおっ、カーテンを開けると、見事な快晴!
昨日の嵐が嘘みたい。青空はどこまでも高くて、雲ひとつない。
……でも、その分、昨夜はひどかった。
びゅうびゅうと吹き荒れる風に、窓ガラスが鳴って、
屋根を叩きつける雨の音がまるで太鼓のようだった。
おかげで、ろくに眠れず……今、めちゃくちゃ眠い。
目の下にクマができてないといいなあ……
ふらふらと玄関を開けて外をのぞくと、
通りにはいろんなものが散乱していた。
木の枝、バケツ、よく分からない鉄のパーツ、そして……
(ん?)
我が家の玄関の屋根が、ない。
……うん。ないね。完全に飛んでってる。
(……まいったなぁ)
これは……大工さん呼ばなきゃだなあ。
ああ~、また余計な出費が……財布が薄くなる音がする……
でもまあ、ひとまずお腹すいた。
まずは朝ごはんを作ろう。現実逃避も兼ねて。
冷蔵庫から材料を取り出して、パンケーキの生地を準備。
フライパンにバターをひいて、ジュッと音がして……
生地を流し込み、フタをして、火加減を中弱火に。
……5分。
……まだかなー。
……そろそろ、いい感じの甘い香りが……
と思ったそのとき、
「ぷもーん」
(……え?)
フタを開けると、そこには――
なにか、こう……わたあめ? いや、もっとふわふわしてる。
でも明らかに、顔がある。目と口がついてる。
しかも、浮いてる。
「ぷもーん」
(……またか)
これ、たぶん……というか間違いなく、
リアさんにもらった「お詫びの砂糖」から出たやつだ。
あれ、どう見ても砂糖じゃなかったよね。
ラベルも「しゅがー」じゃなくて「しゅごー」とか書いてあったし。
「ぷもーん……」
……こっち見てる。懐いてる?
どうしようこれ。食べられるの?
いや、食べちゃだめな気がする。
とりあえず……牛乳をあげてみようかな。