第6話 職業と正体について
第六話 職業と正体について
今日はギルドで、相談という名の雑談をしていた。
話題の中心は、ぼくの正体について。
先日、教会で「職業不明」と判定された一件が、予想以上に皆の興味を引いたらしい。
あのとき、たまたまその場に居合わせた占い師が
「あなた、人間ですらありませんね」
と意味深な言葉を漏らしたのも火に油を注いだ形になった。
以来、ぼくの職業は何なのか、種族は本当に人間なのか、ギルド内ではちょっとした賭けの対象にまでなっている。
「ハーフエルフじゃないか?」
「いや、耳が普通だから違うだろ。むしろ半竜人とかドラゴンハーフの方がまだ――」
「だったら、竜亜人の方がリアルだって。ドラゴニード?とかいう」
「いっそ、天使系か妖精系かも。名前忘れたけど、ああいうの」
「妖精だったら、もっと繊細な見た目になるでしょ。あれがそう見える?」
「じゃあ半獣人は?リカントロープとか」
「月見ても変身しないって本人が言ってた」
「……まさかの、昆虫系?」
「虫ぃ?」
冗談半分、本気半分のやり取りが延々と続いていく。
そうこうしているうちに、中央教会にもう一度正式な判別を受けに行く、という話がほぼ決定事項になった。
しかも、どういうわけかギルド全体の「総意」として、ぼくが中央教会に行って正体を確かめることになってしまった。
中央教会があるのは、ノルズと呼ばれる山の中。
険しい山道に加え、魔物も出ることで知られている。
さすがに一人では無理だと判断されたらしく、数名が同行してくれることになった。
冗談みたいな経緯だけど、どうやら近いうちに、ちょっとした旅に出ることになりそうだ。
何が分かるのかはわからないが、少なくとも、自分について今より少しは知れるかもしれない。
ちょっとだけ、楽しみでもある。