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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
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第58話 オゼリアプルート勇者化計画始動

夕食も終わり、宿併設の酒場ではすっかり飲み会モード。

酔いもいい感じに回ってきて、テーブルを囲むみんなのテンションも上がり気味だ。


そんな中、クリスさんがテーブルの上にひょいと一本の短剣を置いた。

「そういえば、これのお礼がまだだったね」


綺麗な短剣だった。刃も柄も磨き上げられていて、まるで宝飾品みたいだ。


「これ……なんだろう?」


「忘れたの? 地下遺跡で君がくれた《アーマーキラー》だよ」


──アーマーキラー!? あれって、もっとサビだらけで、触るのも躊躇うくらいボロボロだった記憶が……


「戻ってからリペアしたのさ。なんせ古代の逸品だからね」

にこりと笑うクリスさん。


「ちなみに査定価格、140万GP。ただでもらうにはちょっと気が引けるから、せめて……一晩付き合ってあげようか?」


そう言って、ちらっとウィンクを飛ばしてくる。


「それとも、これはもう嫁になるしかないかな?」


ちょっと待って!? それ、選択肢として成立してるの!?


ドンッ!


ジョッキをテーブルに叩きつけたのはメルディだった。

顔を真っ赤にして、むくっと立ち上がる。


「オゼリアプルートには、私がいるから!」


……うん、ありがたいけど、ここ酒場なんで暴れないでください。


しかし、そんなメルディの対抗意識をさらっと受け流すクリスさんは、冷静に言い放った。


「ねぇ、メルディちゃん。知ってた?

冒険者って、勇者とか英雄とか、字名あざなをもらえるくらいの立場になったら──何人娶ってもいいんだよ」


……えっ、それって本当なの?

というか、メルディの視線が鋭くなってきてません?


「オゼリアプルート。今すぐ勇者になって」


「む、無理ですからねっ!?」


横ではメイがくすっと笑っていた。


「ボクは嫁になるつもりはないよ。安心してね、パパ」


……ありがとね。いやほんと。頭痛くなってきた。


そんな馬鹿騒ぎの最中、ふと入口が開いて一人の青年が現れた。


夕食の時も顔を見せなかったレーベンだ。


どうやら彼は、坑道内に置いてきた《ミニミニゴーレム》の視界を通じて、ひとりで探索を続けてくれていたらしい。


「おねぇさん、ビールジョッキでね」


そう言いながら席についたレーベンは、グイッとビールを飲み干す前に、妙な前置きを口にした。


「ねぇ、悪い知らせと、悪い知らせと、悪い知らせがあるんだけど──どれから聞きたい?」


「……悪い知らせしかないんかい!」


「だって、悪い知らせしかないんだもん」

さも当然のように言いながら、ビールを一口。


「まず一つ目。坑道の奥にアーマーアントがいたよ。しかも群れで」


アーマーアント──装甲蟻。

鉱物を食べて外殻を形成するという特性から、単体でも危険度B。

群れになれば危険度Aの厄介な魔物だ。


「どうやら、巣が鉱物を求めて広がっていった結果、坑道と接続しちゃったらしい」


うわぁ……。


「で、二つ目の悪い知らせ。

そのせいで坑道が、どこかの天然洞窟に繋がっちゃったみたいなんだけど──そこにリッチがいた」


リッチかぁ……ウチにもリシェーラさんがいるから珍しくはないけど……ヤバそうな予感がしてきた。


「で、三つ目が一番ヤバい。

そのリッチの目的が、どうも地底王の使役っぽくてさ」


──地底王!??


「もう半身くらいは洞窟内に出てきちゃってたよ。

魔物が溢れ返ってるのも、アーマーアントが繋げた洞窟経由で地底王の眷属たちが活性化してきた結果じゃないかな」


……ねぇレーベン、それ、国家級のクエストレベルじゃない?


「オゼリアプルート勇者化計画、始動!」


目を輝かせながら叫ぶメルディ。


待って待って、計画とかやめて!? 目が、目の輝きが痛い!


「ハッハッハ。面白いね死霊使いくん。

これ、ハーレムコース一直線だよ?」とクリスさん。


「……ハーレムって何?」とレーベン。


「先ほどクリスどのが(あるじ)に求婚した件で、

正妻のメルディ様とクリスどのとの関係に火花が飛びました。

結果、重婚の為には勇者になるしかないという結論に至ったのです」

と、真顔のリシェーラさん。


いや、その説明、語弊ありすぎですって!


「……うん、おおむね合ってるよ」

と、隣で頷くメイ。


……もうダメだ。


落ち込み気味の僕の肩に、ポンと手が置かれた。

見ると、レーベンが静かに言った。


「大変そうだね」


……うん。わかってくれてありがとう。

やっぱり僕たち数少ない男同士、気持ちが通じ合う気がするよ。


「……男、肩身狭いなあ」


「ところで地底王って何?」


と聞いてみた僕に、レーベンがビールを一口飲んでから答えた。


「ん? ああ、エンシェントゴーレムって、大昔に作られたオリハルコン製のゴーレムなんだけどさ。

オリハルコンって魔力伝導性と精神感応性が高い素材だから、強大な意思を持っちゃってるうえに、自分で自分に魔力供給できる魔力電池みたいなもんなんだよね」


え、なにそれ……無理ゲーじゃない?


「でも大丈夫でしょ。僕だって伊達にゴーレムマスターって呼ばれてたわけじゃないし」


そう言って肩をすくめるレーベン。


「リッチはとりあえずタコ殴りにして、オゼがテイムしたら解決でしょ? 僕としては、最大の難関はアーマーアントの方だと思ってるよ」


さらっと言ってるけど……いや、ちょっと安心感湧いてきた。不思議と。


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