第56話 嵐の旋風とデュアルウィールド
朝。プロガノからの念話通信で叩き起こされた。
『キミが地下遺跡に置いてあるスケルトンたち、有用に使わせてもらってるよ。たださ、装備がボロボロなんだよね。もう何百年も前の代物だし。で、新しく作ってやりたいんだけど……』
それはぜひお願いします。
『ただ、この場所素材が全然ないのよ。だからさ、キミの家の庭の隅にポータル置いとくから、そこから使えそうな素材、なんでも送ってくれない?』
──というやり取りが、今朝の話。
いやそんな、急に素材を用意しろって言われても……あれだけのスケルトンに装備するって、結構な量になると思うんですけど?
どうしたもんかと思いつつ、ギルドの掲示板を見てみると。
運命。神の采配。天の思し召し。
【依頼書】鉱山に現れた魔物の討伐と原因究明
魔物:鉱物系ゴーレム/クリスタルローブ/鉱物系地竜 等
報酬:各種鉱石(原石)で現品払い/坑道への採掘立入許可
目的:坑道内の魔物討伐と出現原因の調査
……素材の宝庫じゃん!! これは行くしかない!
「受付さーん、この依頼、受けます!」
ーーーーー
家に戻ってみんなにクエスト行くよーと声をかけたところ、メイが手を挙げる。
「行ってもいいけど、その前にボクの武器が欲しいな〜」
あっ、そうか。素手で戦わせるわけにもいかないし。装備整えないとダメだよね。
向かったのは、そう、ブリューとグランを手に入れたあの武器屋です。
「おっ、あんちゃん。ブリューナクは元気かい?」
「ヒャッハー。オヤジ、オレは元気だぜぃ」
背中から威勢のいい声が聞こえる。
グラン、いつも通り元気すぎ。
「こんにちは。ボク、メイ・デュアルウィールド」
「オヤジさん、この子の武器、見繕いたいんだけどいいかな?」
「おう、勝手に見ていってくれ」
店内を物色するするメイ。
そこで選んだのは、身の丈近くありそうなグレートソードを2本。
「嬢ちゃん、それは両手持ち用の武器だよ?」
というオヤジの言葉に、無言で二刀流グレートソードを構えるメイ。
わー、チャイルドベースの筋力怖い。
その間、こそこそと店内を物色していたメルディの足が止まった。その視線の先にあったのは、半分埃を被った白鋼の投擲斧。
「これ…私の武器」
なに、この斧が欲しいの?
「そうではない。かつて私が使用していたものという意味。目覚めた時には失われていた」
ああそういえば以前そんな事を聞いたことがあったような。今使ってるバトルアックスは、昔仲間から譲り受けたものだったっけ。
「その斧ならもう一振りあるぜ」
店の奥から同じ投擲斧を持ってきた。
「投擲斧・嵐の旋風。風属性付与の魔斧、投げたら手元に戻ってくる」とメルディ。
「そいつはかなり昔に冒険者が遺跡から発掘してオークションに掛けたのを、俺の先々代が競り落とした物らしい。が、硬すぎて研ぎも出来ないし、見た目の良さだけで、まともに斬れない粗悪品だってんで埃被ってたんだ」
「これを使うにはコツがいる。斧自体に刃は付いてないけど、投擲の瞬間魔力を込めることによって、風の刃を纏う。それに…」
嵐の旋風を胸に抱きしめメルディが言う。
「これには個人認証がしてある。私という所持者が稼働している限り、他の人が使いこなすのは難しい」
個人認証。聞いたことがある。
危険な物や高額な物が、不特定多数に使われないように血の契約で能力を制限する魔法だったっけ。
それにしてもメルディの表情、とっても嬉しそうだ。懐かしい友人とでも再会したような。
その笑みを見てたら「おじさん、これいくら?」って自然と口に出ちゃった。
「お代はいらんよ。嬢ちゃんが持ち主ってなら、そいつも持ち主の所に帰れて嬉しいだろ。武器ってのは自分で持ち主を選ぶ、そいつら大事にしてやんなよ」
「感謝する」
「ボクもそんな魔剣欲しいな〜」と言うメイに。
「運命があるならいつか出会うはず」とメルディ。
……運命、か。便利ワードだよね。
「それより懸念がある…坑道の中での大剣使用は難しい。狭い場所での戦闘用に違う武器も持つ事を勧める」
「そうだよね~、何がいいかな」
「これなんかどうだい」
そう言ってオヤジが勧めてきたのは──二丁拳銃。
「魔力で刃を形成する事が出来るタイプの魔法銃で、《デュアルウィールド》って名前なんだ。嬢ちゃんと同じ名前だな」
白い銃身に赤いラインが入ったスタイリッシュな二丁拳銃。
それを手にしたメイは、いくつかのポーズを決める。
「いい感じだよ。ボクの二刀流スキルにもしっくりくる感じ。それじゃあ支払お願いね、保護者でしょ?」
ーーーーー
「おーい、死霊使いくん!」
武器屋を出たところで現れたのは、クリスさん。
「留守番してるリッチたちに聞いたよ。クエスト行くんでしょ? もちろん私も同行するからね〜♪」
ええ、もちろん大歓迎です。あとで隣のリアさんにも声をかけないとですね。
「出発日決まったら教えてねっ」と笑顔で手を振る彼女を見送り、僕は思い出した。
──あ、魔道具屋寄らなきゃ。
従魔証明の腕輪を買わないと、リッチたちを外に連れ出せないし、お使いも頼めないんだよね……。
出費がどんどん増えていく……冒険って、金かかる。
次回、鉱山の魔物討伐編スタート! かな?




