第55話 冒険者パーティー『水面の月光』
朝。
目を覚ました僕は、庭の様子に思わず笑みをこぼした。
軽やかに追いかけっこをしているメルディとフリード。
それを離れた縁側から見守るメイ・デュアルウィールドの表情は、とても穏やかで。
そのメイを、隣に座るジャニスがジト目でじーっと見ていた。……いや、よく見るとジャニスさん、ヨダレ垂れてますけど? どういう感情なんですかそれ。
……平和だなぁ。
「みんな、朝ごはんにしよう。あとでギルドに行かないとだし」
僕の呼びかけに、全員が自然と顔を上げてこちらに集まってくる。なんだろう、この家族感。悪くないけど、どこかくすぐったい。
リビングに入ると、リシェーラとアンちゃんが朝食の支度をしてくれていた。
「おはようございます、あるじ。勝手にキッチンを使わせていただきましたが、よろしかったでしょうか」
「いや、全然。むしろありがとう」
「この程度、当然です。我々は食事を摂ることもありますが、半分はあるじの魔力で生かされておりますので」
え、マジで? ……ああ、そうか、テイムしたってそういうことか。
スケルトンたちも僕の魔力で動いてるんだよね? 吸われすぎて僕がミイラにならないことを祈ろう。
ーーーーー
朝食を終え、みんなでギルドへ。
姫舞花亭に着くと、すでにクリスさんがいた……って、飲んでます?
「ちょこっとだけよ〜、昨日の打ち上げってことでさ~。にゃはは~」と返す彼女の目の前には、テーブルいっぱいの空き瓶と、グロッキーなライトロッド。
……まだ昼前ですけど!?
それよりクリスさん、ちょこっとの定義をいま一度確認させてください。
仕方ない、気を取り直してマスターも交え、昨日の報告を始める。
・転移先が古代の遺跡で戦場跡地であり、そこに残された大量の遺体がアンデッド化していたこと。
・突如現れた生徒たちに反応したアンデッドたちが暴走を始め、それを鎮圧するために何体かをテイムしたこと。
・その遺跡で生体ポッドから目覚めたチャイルドベースを保護したこと
当然ながら、プロガノの存在や地下のシステムについては伏せたけど、ウソはついていない。うん、完璧。
「本当にそれだけか? なんか隠してることあるだろ」」
マスターの疑いの眼差しに、クリスさんがふにゃっと笑って肩をすくめた。
「冒険者の守秘義務は絶対。それが民間、国家。実害に繋がらない限りギルドマスターであっても追及できない。それがギルドの鉄の掟だと思ってたんだけどな? にゃははっ」
「……まあいい、嘘は言ってないようだしな。で、そいつが保護したチャイルドベースか」
「うん、ボクはメイ・デュアルウィールド」
マスターはジッと彼女を見つめたかと思うと、僕に言った。
「なあオゼリアプルート。こんな事は言いたくないんだけどな...お前デリカシーがないってよく言われないか?」
えっ、何のことでしょう?
えっ、急にどうしたんですか?
「女の子にずっと布一枚の格好させて……いいかげん服着せろ!」
すみません……。
するとマスターが近くにいたティシリアさんに、
「ティシリア! 悪いが、こいつ連れて服と適当な装備買いに行ってやってくれ。支払いはオゼリアの口座で」
ええーっ!?
ーーーーー
「さてだ...お前さんがテイムしたリッチたちについてだが。個人所有としては過剰戦力ではあるような気はするが、まあ問題はない」
ありがとうマスター。良識あって助かる。
「ただ、自立活動させるなら、従魔証明の首輪か腕輪は付けとけよ。あれがないと紛らわしい」
わかりました。でも高いんだよな〜。しかもジャニスにもまだ付けてないし……
何個必要なんだこれ。
指折り数えてると、マスターが興味津々で言ってきた。
「従魔の把握、ちゃんとしてんのか?どれ、ステータス見せてみろ」
はい、喜んで。実は細かいのは自分でも把握してないのでしてないんですよね。
水晶に手を乗せて、ステータス書き出し開始!
便利だよねこの装置。
従魔リスト(固有名あり)
・ギギ:青晶蟲・変異種(戦士)
・ミョニル:コスモサーペント
・フーヨン:神獣・変異種
・フリード:フロストドラゴン
・デュラン:首無し馬
・ジャニス:スペクター(上級魔術士)
・リシェーラ:リッチ(魔剣戦士)
・ルーベン:リッチ(上級魔術士)
・アンミラー:リッチ(盾使い)
従魔リスト(固有名なし)
・インプ(15体)
・ゴースト(6体)
・ホーント(3体)
・スケルトン(105体)
・ワイト(5体)
・スケルトルジャイアント(3体)
……ん? インプとかゴーストとか、知らない名前あるんですけど?
「たぶんジャニス。寝てる間にかわいいのだけ集めて遊んでた」
メルディの爆弾発言!
「ジャニスさん、ちょっとお話が…」
呼び出そうとしたけど、ジャニスは僕の影の中に潜って無言ガン無視を決め込んでいた。ハァ……
「ハッハッハ。洒落のつもりで死霊使いくんって呼んでたのに、そんなにアンデット従えてるんじゃ、名実ともにじゃないか」とクリスさん。
「所でこのワイトって何ですか?スケルトンとは違うの?」
「スケルトンとワイトは似て非なるもの。生前の未練から死体がアンデッド化したのがスケルトンで、死体に死霊系のアンデッドが憑依したのがワイト。だからワイトの方が基本性能は高いし魔法も使う」
「でもスケルトンメイジとかいるよね」
「あれは生前の素質と魂の素養。強い魂ほど上級化しやすい。あと密集した中でだと、共食いで進化する個体もいる」
なるほど博識でらっしゃる。メルディ先生ありがとう。
ーーーーー
「さて、ところで死霊使いくん」とクリスさん。
「冒険者パーティー、組まないの? 毎回急造パーティーじゃ危なっかしいでしょ」
僕もそれは思ってた。
「でもパーティーには人数制限があるから……リッチたちってパーティー枠に入るの?」
「従魔は入らんぞ」とマスター。
「従魔は個人の所有物だからな、人数には含まれない。つまりお前がいるだけでそのパーティーは反則級になるってこった」
なるほど、オプションで上級職が数人所属してるようなものだからね。確かに反則だ。
というわけで、パーティー結成することに。
「メルディは入ってくれる?」
「確定事項。私はオゼリアプルートのものだから」
メルディさん、事あるごとにそのセリフ言うけど気に入ったんですか?あらぬ誤解を生みそうで怖い。
「ボクも当然入れてよ! 保護者でしょ?」とメイ。
「私も面白そうだから参加しようかな〜」クリスさんまで!?
ギルド違うけど、それOKなんですか?
……ルール的にはそんな制約はないらしい。
「そのパーティー、私も入れてくださいよ〜」
うわっ、ビックリした。リアさん、いつからそこにいたんですか。
ともかく、これでパーティーメンバーも決まって再スタート出来そうです。
「おい、登録してやるから早くパーティー名決めてくれ。それとメイの冒険者登録もな」
はいは〜い、とカウンターに小走りで行くメイ。
さて、パーティー名ですか。
「...水鏡の月光ってのはどうだろう」
「なに、それって自分のこと?自分を種族名にするなんて自信家だねぇ」というクリスさんに、
「いや...このパーティー、なんか色々集まってるからさ。オールラウンズとかよりは良いかなって」
「いいんじゃない?」
「いいと思うよ」
「賛成」
かくして冒険者パーティー『水面の月光』はスタートしたのでした。
「あの~」
はいリアさん、何でしょう?
「オゼリアくんのステータス見ちゃったんですけど…パンケーキくんの青晶蟲はいいとして、ミョニルちゃんの種族がコスモサーペントになってますよ?」
リアさんの指摘に、僕もびっくり。
「え? 本当だ。進化したのかな。呼び出してみる?」
「やめてください! 本物だったらこの建物壊れます!」
それは大げさ……じゃなかった!
街の外で呼び出してみたら、でっかい水蛇。しかも体の中に宇宙が見える? だからコスモサーペントか。
それよりもその大きさ...20メートル以上ある。
なるほど、あの時進化したのはフーヨンだけじゃなかったんだ。そりゃ魔力根こそぎ持っていかれるよね。
さらにギギも、青いクリスタルボディの、腕が4本あるイケメン蟲戦士になってたし。
お前ら勝手に進化しすぎ...
魔力持ってかれて僕が干からびそうです




