第54話 騒がしくなりそうな予感
地上へ戻ってきた僕たちを、周囲にいた皆さんがぽかーんとした表情で出迎えてくれた。
……まあ、無理もない。
だって本来、戻る前には魔法陣に魔力薬を流し込むための準備が必要だったのに、僕ら勝手に帰ってきちゃったんだから。
リアさんなんて瓶を持ったまま立ち尽くしてたし。
ごめんなさい。
「行方不明になった生徒三名の救出任務、完了しました」
とりあえず目に入ったギルドマスターに声をかけた。
「……生徒はまあ、いいとして……なんか、増えてねぇか?」
マスターの視線の先には、リッチ化したアンデッドたちがぞろぞろ。
ええ、増えてますとも。
メルディが代わりに説明してくれる。
「端的に言えば、向こうにいたアンデッドをオゼリアプルートがテイムした……訂正、テイムして進化させた」
うん、さすがにそれは訂正が必要な内容だったよね。
「って、進化させたって……リッチじゃねぇか、こいつら……」
「問題ない。すでにオゼリアプルートの支配下。安全は保証されている」
と、メルディが淡々と返す。
「しかも、赤い鎧と緑ローブは古代魔法王国時代の有名人」
「……有名人?」
「炎魔将軍リシェーラと、ゴーレムマスター・レーベン」
その名前を聞いた瞬間、後方から「なんとおっしゃられましたかっ!」と勢いよく飛び出してきた人物がいた。
魔法学園の学園長だった。
「本当にレーベン殿なのですか!? 我が学園では古文書で何度もそのお名前を拝見しております。もしよろしければ、未解読の文献の解析や古代技術の伝承にご協力を……!」
必死だ。
が、メルディがあっさり言い放つ。
「レーベンはテイムされたアンデッド。オゼリアプルートの所有物」
所有物て。僕の方を見てくる学園長の目が真剣そのものなんですが。
「えーと……まだ正式に登録もしてませんし……できればギルドを通して、指名依頼としてお願いできればと……」
「そうですか。では、後ほど依頼という形で提出させていただきます」
納得はしてくれたけど、食い気味だったなあ……学術の情熱、すごい。
その間、生徒たちが僕の方に駆け寄ってきた。
その中のひとり、トレイシーっていう女の子が、ぴしっと立って言った。
「あの、私はトレイシーって言います。魔法拳士を目指してます。学園を卒業したら冒険者になるつもりです。その時は……私をパーティーに入れてくれますか?」
「え? う、うん……いいよ。卒業したらね」
「ありがとうございます!」
ぱあっと笑顔になって、ぴょこぴょこ駆けていく彼女。
……あれ、そういえば僕って、今まで正式なパーティーって組んだことなかったよな。
今回の一件も、臨時の合同パーティーだったし。メルディあたりは誘えば入ってくれそうだけど、まあ、後で考えよう。
「とりあえず、詳細な報告は明日でいい。今日は帰って休め。疲れたろ」
マスターがそう言ってくれた。ありがたい。
「お疲れー、明日こっちのギルド行くから、その時に報告まとめよっか」
クリスさんも手を振ってくれた。やさしい。
さて、じゃあ帰るか――と歩き出す僕の後ろには、メルディ、リシェーラ、レーベン、アンミラー、ジャニス、ブリード、そしてメイ・ドゥーエ。
うん、増えたな……。
メイが僕の方を見て、ひょいと手を上げた。
「とりあえず、ボク、行く場所ないんだけど。キミが保護者なんだろ? プロガノからそう聞いてるよ」
えっ、保護者?そんな話だっけ。
さらにメルディが言い添える。
「私が預かると約束した。私はオゼリアプルートのモノだから、私が預かったものはあなたが預かったものと同じ」
うん、まあ、そういう論理構成になるよね。
「はぁ……分かりました。部屋は……まだ空いてたと思うし……」
なんか騒がしくなりそうな未来が、すごく濃厚に迫ってきてる。
でもまあ、賑やかなのも嫌いじゃない。
そう思いながら、僕は皆を連れて、久しぶりの我が家へと向かった。




