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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
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第52話 亡骸(なきがら)に、灯がともる時

その女騎士は、目の前にある自分の手をじっと見つめていた。


「……肉体が戻っている? それに、意識もはっきりと……」


驚きと戸惑いの入り混じった声が漏れる。


はっと我に返って周囲を見渡すと、そこには変わり果てたかつての仲間たちの姿。

骸骨と化し、意思なく動き続けるスケルトンたち。


「貴様ら、やめんか!!」


女騎士――魔炎将リシェーラの怒声が響いた。


だが、その声は届かない。もはや肉の耳は持たぬ亡骸たちには。


ふと、視界の隅に映ったのは――

火の魔法を放つスケルトン、ルーベン。


リシェーラは宙を跳び、そのローブをわしづかみにする。

「やめろと言っているのが聞こえんのか!!」

そのまま地面に向かって叩きつけ――バウンドしたその瞬間。


フーヨンの虹色の玉が飛んできて、ルーベンを包み込むように輝いた。


ぽわん。


光の中から現れたのは、目元がやさしげな、整った顔立ちの青年。


「……ルーベン……?」


同時に、辺りのスケルトンたちの動きがぴたりと止まった。

リシェーラとルーベン――二人の“支配スキル”が再び機能しはじめたのだのだ。


「終わったの?」

クリスさんが周囲を見渡して、ほっと息をつく。


「……生徒たちは?」


「無事ですよー!」

ジャニスの後ろで、手を振る子たちの姿。

ブリードも彼らの護衛についてくれていたようだ。


よかった……と胸をなでおろす。


「とりあえず地上に、生徒たちの無事を報告しないと」


ーーーーー


リシェーラが僕の方に歩いて来ると、眼の前でひざまずいた。


「雷帝ブリューナク……再び相見えられたこと、嬉しく思います」


って、そうか。ブリューとこの人、知り合いだったっけ。

……いや、知り合いって感じの態度じゃないよね、これ。

敬意というか……なんか、偉い人に対する礼儀って感じがするんですけど。


もしかしてブリューって、本当に偉い人なのでは?


『よう、リシェーラ。久しぶりだな。どうだい、久しぶりの生身の感覚は』 


宙に浮かぶ剣の中から、ブリューがのんびりと声をかける。 


「完全に生き返った……というわけではないようです。心臓は止まったままですが、意識ははっきりしています。……不思議な感覚です」


そこにジャニスが、ぽつりと補足した。


「アンデッド化したんですね。って、スケルトンの段階でアンデッドだったわけですけど…。

多分ですが……肉体が残ってたから、私みたいなスペクターじゃなくて、リッチになったんじゃないかと」


リッチ…最上位のアンデッド。

国家レベルで討伐対象になる危険種のひとつである。


うん、どうしよう?


「それと、遅くなりましたが雷帝のあるじ殿。

この度は、我らに新たな命を与えてくださったことに感謝を…」 


いえいえ良いんですよ。

やったのは僕じゃなくてフーヨンだし。

でも間接的に僕がやったことになるのかな? 


「本当は、この子も蘇らせてやりたかったのですが……」


リシェーラが、傍らにうずくまっている盾使いのスケルトンに手を添える。


「ここまで自我が崩壊していては……蘇らせても暴走するだけでしょう、残念です…」


きっと、大切な仲間だったんだろうな。


「自我のある魂があればいいんですか?」とジャニス。


「それならこの子はどうですか? 盾使いだったみたいですし、適性もあるんじゃないかと」


連れてきたのは、アンちゃんの霊体。


「もしかしたら人格が変わっちゃうかもしれないけど、肉体の記憶も残ってますし、半分その子で、半分アンちゃんみたいな存在になるんじゃないかなって」


もしできるなら、お願いしたい。私はこの子を失いたくないんだ。 


フーヨンがスケルトンを虹色の玉で包み、肉体が再生されると、僕は死霊魔術でアンミラーの霊体を憑依させた。 


それにしても、なんでこんなにスケルトンが集まってたんだろう。


『不思議なことじゃねぇさ。奴らは生気を求めるからな。長年、餌のなかったところにいきなり生きのいいのが三人も飛び込めば、そりゃ群がるだろうよ』 


…納得である。 


……で、この状況どうしたらいいんですかね?


リッチが三体に、その他多数のスケルトン。

この状態を報告したら、間違いなく国軍が討伐しに来ますよね?


「問題ない。オゼリアプルートがテイムすればいい」

って、さらっとメルディが言い出した。 


いやいや、いくらなんでも個人の戦力としてどうなんですか。


「我々は一向にかまわないが」とリシェーラ。


そして――


「所詮ハ『リッチ』ガ数体。S級冒険者ノ戦闘能力二比ベタラ、子供ミタイナモノデスヨ」


おぅ、全く役立たずのS級魔術士ライトロッドがここで軽口を…。


はいはい、わかりましたよ。やることやって、さっさと帰りましょう。


ーーーーー 


はい、やることやって帰還の準備が出来ました。

メルディ先生、お願いします。


「コントロール、帰還の転送陣の用意を」


そう呼びかけた、そのときだった。


『その指示は、より上位の管理者によって取り消されました』


……えっ、なんて?


《やあ、聞こえるかな? この基地の最高責任者としてのお願い……ちょっと僕のところまで来てほしいんだ》 


突如、上空に声が響き、ホログラムに少年の姿が浮かび上がる。


《僕はプロガノ。君たちが知る“大亀”の頭脳で、この大陸そのものさ》 


――なるほど。そう来たか。


どうやらこの冒険、まだ終わってくれないらしい。


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