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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
52/59

第51話 神獣の覚醒

……なんだこれ?


視界がはっきり戻ったと思ったら、

目の前には、ピンク色の――羊。


しかも、その頭の巻き角が黄金色に輝き、

リシェーラの紅い魔剣を見事に受け止めていた。


突然の乱入者にリシェーラが後ずさる。

対する羊は、満足げに目を細めると、

「大丈夫ですか?」とでも言いたげな瞳で、こちらを見つめてくる。


そして聞き覚えのある――声?


『ぷもーん』


……ぷもーん?


「お前……まさか、フーヨンか?」


『ぷもーん♪』


間違いない。うちの使役獣、ふわふわの癒し系だったフーヨンが……

進化してピンク色の羊になっていた。


いや、ツッコミどころ多すぎて頭が追いつかない。


フーヨンは軽快にピョンピョンと跳ね、

ステップを刻んでいる……つもりなのか、右へ左へ忙しなく動いている。


時折、金色の巻き角で頭突きを繰り出すが、リシェーラも回避が上手い。

一方でリシェーラの攻撃はというと――


まるで通らない。


金の巻き角で完全に受け止められたかと思えば、

それを外したところでピンクのモフモフな毛並みが、刃を一切受け付けていない。


そこへ駆け寄ってきたのは、メルディ。


「オゼリアプルート、無事!?」


未だ動けずにいる僕を抱き起こしながら、顔を覗き込んでくる。


「おそらく、マインドスルー。

魔力の枯渇に加え、生命力も削られている」


「原因は……あれ?」と指差した先には、もちろんフーヨン。


「……あれ、家で宙に浮かんでた『わたあめ』?」


「そう、たぶん……だけど」


「でも、使役獣をあんな急成長したらダメ。

魔力を根こそぎ持っていかれる、足りないと命まで」


つまり、僕の体が突然ぶっ壊れたのは、フーヨンのせいってことか。


「いやいや、僕はなにもしてないよ!? 勝手にアイツが!」


すると、そばで様子を見ていたクリスさんが口を開く。


「使役獣が主人の意志を無視して行動するなんて、

つまり……格が逆転したってことだよ。おめでとう、下僕くん」


「やめて……現実が重い……」


クリスさんは鞄からごそごそと木の実を取り出すと、僕に手渡してくれた。


「ほれ、これ食べな。魔力、瞬間で戻るよ」


見た目は緑と紫がマーブル模様になったクルミみたいな実。


「マギマグっていう植物の種で、深層ダンジョンにしかない希少種。

並の魔術師なら一粒で全回復できるよ」


僕は即座にボリボリとかじる。

うん、まずい。でも魔力がモリモリ戻ってくるのがわかる。生き返る……。


それにしても、進化したフーヨンの能力はどうなってるんだろう?

元々の能力は「物体の再生」。

今では、黄金の角で斬撃を受け止め、魔剣をはじき、羊毛は刃を弾く。


それって、もう……戦えるモフモフじゃん。


今までギギやミョニルはそれなりに攻撃手段を持ってたけど、

フーヨン(旧名)は唯一の非戦闘系だった。


「自分も戦いたい!」って思いが、あの巻き角になったのかもしれない。


……だとしても、勝手に進化はやりすぎだろ。

後でたっぷり説教決定。


フーヨンは、何度か頭突きのフェイントを入れた後、

くるんと尻尾を振り、その先端――虹色に輝く球体をリシェーラに向けて放った。


シュルルッと飛んで、回避されるかと思いきや、ぐるりと円を描いて――


「背後から!?」


虹色の球体がリシェーラの身体を包み込む。


ぶわっと発光。


骨だけだったスケルトンに、筋肉が、皮膚が――再生されていく。


「あれは修復リペアってレベルじゃないよ」と驚愕の表情を見せるクリスさん。


「……違うよ、あれは……!

魂が残っていれば、失われた肉体ごと完全に蘇らせるという伝説の魔法。

最上位白魔術――《リペレイター》、神の奇跡だよ」


光が消えたとき、そこに立っていたのは――

紅の鎧を纏った、美しい赤髪の女騎士だった。


神の奇跡…僕はノルズの神殿で聞いた神獣という言葉を思いだした。

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