第46話 転送開始
「準備完了」の報せを受けて、再び遺跡へ向かった。
現地にはすでにマスターをはじめ、各ギルドの冒険者たちがずらりと集結していた。
あの床一面の魔法陣には、リアさん特製の魔法薬が流し込まれ、
うっすらとした魔力の光をまとい始めている。
青白い輝きが遺跡の内部をぼんやり照らし、否応なく気分は高まる。
ただ、ひとつ問題が残っていた。
──誰が最初に転送されるのか、というやつだ。
「魔法薬の効力は……多分、一日程度ですね。
帰ってくる時には、もう一度魔法薬を流し込む必要がありますよ~」
と、リアさんがさらっと爆弾発言。
つまり、帰りの分の準備はこっちに残るリアさんの役目。
はい、リアさん残留決定。合掌。
すると、メルディが一歩前に出る。
「多分、私この中知ってる。道案内できる」
……やっぱり。
一昨日も気になること言ってたけど、やはりこの遺跡、メルディと何かしら関係あるな?
「メルディが行くなら、保護者もつけないとな」
と、マスター。
保護者って誰だよ。まさか……
「実際、お前が適任なんだよ」
と、予想的中で僕を指さすマスター。
「魔女の首飾りっていう、何があっても外部と連絡を取れる手段を持ってるし、
なにより古代魔法王国の遺産を二つも所持してる冒険者なんて、そういないからな」
うう……納得せざるを得ない理由が並ぶのやめてほしい。
「大丈夫ですよ、私が付いてますから!」
とジャニスが元気に手を挙げるが──
「ダメだ」
マスターが即ブロック。
「もし向こうに破邪結界でもあったら、一瞬でお陀仏だぞ。
安全が確認されるまで、影の中で待機だ」
うう、ジャニス、影の中でしょんぼりしないで……
「でもマスター、こういうのって探索系スキルの高い人のほうが良いんじゃ……」
と僕が不安を口にすると、横から別の声が挟まった。
「うちから一人出そう」
声の主は白雪姫亭のマスター、アミラさん。
「うちのギルドの前身は盗賊ギルドさ。探索なら今でも他には負けないよ」
そうして選ばれたのが──
遺跡探索者のクリスさん。
青いショートカットの童顔で小柄な女の子……に見えるが、冒険者ランクはクラスB。
そのあたり、見た目通りの年齢じゃないことはメルディで学習済みだ。
「よろしく、死霊使いくん。あのときは爆笑させてもらったよ~」
と、気さくに笑いながら背中をバンバン叩いてくる。
いや、背中が割れる。死霊使いの防御力なめないで。
---
ちなみに、僕の家の物置は現在「臨時対策本部支部」に改造されていて、
現地との連絡は魔女の首飾りを通して行われることになった。
やり取りには、薔薇姫ローゼアミーラ亭の召喚士が呼び出した“通信鬼”という小悪魔が使われる。
どうやら、音声を録音・配達できる優れものらしい。
まさか僕の物置がここまで国際通信の要になるとは思わなかった。
---
ともあれ、準備は万端。
クエスト開始──
達成条件:魔法学校の生徒の発見および保護
「では、行ってきます」
僕はメルディ、クリスさんと一緒に、魔法陣の中心へと歩を進めた。
ふと、メルディが僕の手をそっと握る。
「手をつないで」
……言われるままにぎゅっと握り返すと、彼女は小さく呟いた。
「転送開始──トランスファー」
青白い光が、世界を包んだ。
遺跡探索者の名前がクリスさんであるところ、何を思っていたのかクレアさんと書いているのに気づき訂正しました。
きっとクレイモアを読んでいたからでしょう。
たまには過去を読み返してみるものです。




