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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
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第44話 死霊騎士とバカ息子

今日はマスターの命令──いや、指示で、「姫舞花(サンベリーナ)亭」「薔薇姫(ローゼアミーラ)亭」と肩を並べるもうひとつのギルド、「白雪姫(スノーホワイト)亭」に来ている。


というのも、あのジャニスをお払い箱にして、挙句、魂ごと物置に封じ込めた張本人が、ここのマスターの次男坊──つまりバカ息子だという話が浮上したためである。


さすがに僕も腹は立ったが、マスターはその数倍、いや数十倍ほどキレていたようで、


> 「先方のマスターには話を通しておくから、お前らはあのクソガキから有り金全部ぶんだくってこい。やり方は任せる」




……とのお達しである。


というわけで、我々チーム「オゼリア興業」は一致団結して一芝居打つことにした。


そのために、町の外まで足を運び、動物系モンスターを一体捕まえる羽目になった。いやぁ、大変だったよ。運よく、首のない黒馬のアンデッド『首無し馬』を発見できたからよかったけど。


そして、その馬の名は──デュラン。

……安直? いいえ、語感が大事なんです。


さて、作戦開始。


僕はグランを携え、デュランにまたがって白雪姫亭の正面扉から堂々と突入。

町中を「パッカパッカ」言わせながら、首なし騎士スタイルで颯爽と登場した。


中にいた人たちの顔ときたら、驚きと恐怖で固まってた。まあ無理もない。いきなり首のない馬に乗った騎士が現れたら、大体の人は、人生を振り返るレベルでびっくりする。


そこへ、打ち合わせ通り、ギルドマスターのアミラさんが登場。


「馬から降りな。いきなり何のつもりだい」


「オレは姫舞花亭所属、死霊使いオゼリア・プルート。

ある男に用がある。グレインという剣士を出してもらおうか」


出たな、バカ息子。見るからにチャラくて気が強そうな男が現れる。


「てめぇ、いきなり何の用だ!」


「つい先日、俺の『しもべ』となったアンデッドがどうしてもお前に会いたいと言っていてな。名を、ジャニスという」


……グレインの顔色が、見事に青から灰色になった。


「冗談言ってんじゃねえ! アイツは死んだんだ!」


「そうだ。だからアンデッドなんだよ」


そして影の中から、霧をまとったジャニスがゆらりと登場。

この霧の演出、裏でメルディとリアさんが物置で霧氷を発生させて、魔女の首飾りで遠隔演出してるという力技。


そこで、ジャニスのセリフ。


「会いたかったわ、グレイン。今でもあなたのこと、愛してるの……殺したいくらい」


……グレイン、完全に震えてる。

後ろでアミラさんが背を向けてプルプルしてるのは笑いをこらえてるせいだ。こっちも危うく吹き出すところだった。


「彼女は今、オレの支配下にある。命じなければお前に手は出さない……が、未練が強すぎて、ときどき支配を逸脱しそうになる。

このままでは……お前の生、保証できんな」


グレイン、今にも漏れそうな顔して「どうすればいい……?」と聞いてきた。


アミラさんが前に出てきて──


「アンタ宛にクエストを依頼するよ。

内容は“そのアンデッドの今後10年間の継続使役”。報酬は年10万GPで前払い。さらに魔力増幅の魔道具を進呈」


「受けよう。そのクエスト、確かに受注した」


「発注者はお前だよ、グレイン。

報酬の150万GPはギルドが立て替える。死に物狂いで稼げ!」


「ま、ママァ……」


「冒険者なら腹くくれ!

いつまでも甘ったれた根性してっから、あの程度のアンデッドにビビる羽目になるんだよ。10年の猶予をやる。自分でケジメをつけな!」


──これで一件落着。


ギルドで遠見の水晶球を覗いていたマスターと仲間たちは、腹を抱えて笑っていたらしい。

そりゃそうだ。こっちも我慢するのに必死だったんだから。


ちなみに、ジャニス本人もかなりキてたらしい。あとで聞いた話では、途中から吹き出しそうで下唇噛み切ってたとかなんとか……



---


その夜。


ギルドで夕食をとっていると、アミラさんが現れた。100GPと魔道具を持って。


「悪かったね。これで、アイツにもいい薬になったろう」


そして、もうひとつの皮袋を差し出して言う。


「100万GP入ってる。バカ息子の母親として、せめてもの詫びだ。受け取ってくれ」


「いえ、とんでもない。受け取れません」とジャニス。

「こうしてまた、仲間とおしゃべりできるようになっただけで十分ですから」


でもアミラさんも引かない。


「受け取るまで帰らない」


「いえ、絶対に受け取れません」


――さて、どうしたものか。


そこにマスターが登場。


「だったらその金、オレに預けろ。幽霊でも着られる服を仕立ててやる。さすがに一着だけじゃ気の毒だろ」


そんなわけで、100万GPはジャニスのワードローブ代になりました。



---


少しして、メルディ登場。


「メルディちゃーん!」とジャニスが元気よくダイブ……のつもりが。


「気安くまとわりつくな。私は550歳だ。歳の差を考えろ」


──ジャニス、目を見開いて硬直。


今日一番のダメージはバカ息子じゃなくて、間違いなくジャニスだったと思う。


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