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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
44/59

第43.5話 メルディの日記①

認識番号:2355641

個別名称:メルディ・フランシスカ


人造人間「チャイルドベース」っていう戦争の道具として生み出されたのは

もう2000年も前のことになる。


フランシスカとは投擲斧のこと。

つまりワタシの名前は、投擲斧部隊所属のメルディという意味だ。


生み出されてから130年くらい稼働した後は

次世代型のチャイルドベースが開発されたこともあって

予備戦力として、休眠状態で保管されることになった。


目覚めたのは1300年も経ってからのことだ。

偶然ワタシの入っているポッドを見つけた冒険者のおかげで

ワタシは休眠状態から再起動された。

もう550年も前のことだ。


戦争は終わって、ワタシを生み出したはずの文明も滅びたらしい。

基地だった場所も、古代遺跡と化していた。


ワタシは本体の核を壊されない限り永遠の時を生き続ける。

身体が破損すれば自己修復機能が働き、

重度の破損であっても数日あれば行動が可能になる。


あいにく使い慣れた投げ斧は一緒に保管されてなかったので

ここへ来る途中に魔物の襲撃で命を落としたという

重戦士の両刃ダブルビット大戦斧(グレートアックス)を貰い受けることになった。

大きさは身の丈以上もあったが、手に妙になじんだのを覚えている。


この日、ワタシは生まれ変わったのかもしれない。

そう思うことにして、大戦斧(グレートアックス)を手に冒険者メルディとして

この日、新しい生活を始めることを決めた。


プロガノという大地の中で、まだ探索が手付かずだったその場所には

少しずつ冒険者たちが集まり始め、

彼らを相手にする、行商人や馬宿

いつの間にか宿屋や酒場なんかも出来始めて

50年もたつ頃には一つの町が出来上がっていた。

それが港町タートルヘッドの始まりだった。


最初のギルドが出来上がったのもちょうどその頃だ。


冒険者ギルド、薔薇姫ローゼアミーラ亭と

盗賊ギルド、白雪姫スノーホワイト亭。


ワタシはすぐにローゼアミーラの冒険者として登録した。


最初はほかの冒険者とパーティーを組んでクエスト攻略をしていたが

何年たっても変わらない容姿と、表に感情を出さないことが気味悪がられ

いつの間にかソロの冒険者になっていた。


転機が訪れたのは35年ほど前のことだ。


ワタシあてにクエストの依頼が届いた。

クエストの内容は、町から馬車で一日ほどの洞窟に住みついた

ドラゴンの討伐に向かった冒険者たちの救出だった。


竜殺しの勇者ティフェレト・シンクと言えば

何匹ものドラゴンを討伐している有名な冒険者だ。

そのパーティ一行がもしかすると返り討ちにあったかもしれない、らしい。


生存は望めないかもしれないが、せめて身元の分かる遺品だけでも──という依頼だった。

アンデッド並みに死なない体をもっているワタシにとっては

うってつけの依頼だった。


でもソロのはずのワタシに、盗賊ギルドから同行者を出すといわれた。

待ち合わせの場所に現れたのは、銀色の長髪のエルフ

「ティシリア」というらしい。

普通のエルフは金色か緑色の髪だけど、たまに銀色の子が生まれる。

銀色の髪は不吉な色とされ、魔女の血を引いていると言われるらしい。

そのせいで彼女は、多くの町から疎まれてきたんだとか。

ダークエルフのイメージがあるから分からなくもないけれど、ずいぶんな偏見だ。

そんな偏見のせいで色んな町を転々として今の場所に落ち着いたんだって。

ほかの町に比べるとこの町の人間は寛容みたいだ。


ワタシたちは馬車で洞窟へと向かったけど、そこはもう洞窟ではなくなっていた。


まるで星を召喚して落とす魔法「メテオ」を使った後みたいなクレーター。

昔、戦争中に何度も見たことのある光景、それに酷似してた。

そこの中心に地面に倒れこんだ3人の人影。

聞いていたパーティーの数は6人だったはずだけど。


近くによるとその3人はひどい怪我だったがまだ息があった。

すぐに回復アイテムで手当てを始めた。


手当てをしながらことのあらましを聞いた。

ドラゴンの数は聞いていたのと違い3匹いたらしい。

そのうちの一匹が凶悪なアンデッドドラゴンだったそうだ。


2匹は比較的簡単に討伐できたらしいが、最後の1匹がくせ者で、

知能も高くて、色んな魔法も使う。

そんな魔法で退路を断たれてから覚悟を決めて特攻をかけたんだって。


その結果、


ティフェレト・シンクはドラゴンと相打ちで死亡。

最後の切り札「竜人化」を使った反動か、砂となって死体も残らなかった。

メルトの魔法を使ったのはティフェレトらしい。


二刀剣士のライアード・メイスンは、ドラゴンのレベルドレインの呪いによって

最低の冒険者レベル1にまで力を落とされた。

レベル1でドラゴンの攻撃を受けたダメージは計り知れない。


白魔術士で闘士のギルティ・ベイは、ドラゴンの呪いで

魔力を高めると全身に激痛が走り、二度と魔法の使えない体になった。


皆をかばって最後のドラゴンの一撃を受けきった重戦士リミエッタ・バン・プラウスは

傷もだけど、体中の気脈もやられていて、二度と立ち上がることはできないと思う。


魔術士、魔杖使いのライオネット・サイリーは行方不明。

彼の杖だけを残して異空間に飛ばされた。

飛ばされた先が魔界や霊界なら救いがあるけど、多分もう生きてはいないと思う。


そしてもう一人、ファミリア・プレイシア。

腕のたつ剣士で魔術士だったけど、

最後に倒れたアンデッドドラゴンに乗り移られて闇に消えた。


きっとあのドラゴンは、ファミリアの姿で復讐にやって来る。

何年先のことになるかわからないけど、きっと、もっと力をためて。

それに備えるために仲間を集めよう。

ギルがリーダーになって、ワタシもそれに賛同した。

そうして自然と、ライアンとティシリアはくっついた。


それが冒険者ギルド「姫舞花サンベリーナ亭」の始まり。


色んなことがあったけど、30年が経った。

ある日の朝、港で海に人が浮いてるって大騒ぎになってた。

でもそれがワタシの転機になるなんて思いもしなかった。


何百年も生きてきたけど、自分にも感情があるなんて実感したのは始めてだ。


「メルディはもう、オゼリアプルートのものだから」


うん、あながち嘘でもない。

崖から落ちたワタシを追いかけて飛び降りたあいつの姿をみてから

時々なんかワタシの胸の中が変な感じになる。

それがどんな感情なのかは分からないけど、一つだけ言えることがある。


ワタシは、今のワタシが一番好きだ

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