第41話 ある冷え込んだ朝
秋が深まるにつれて、じわじわと寒くなってきた。
特に朝晩。空気が肌に刺さるような、あの感じ。
……こうなると、なぜか布団のささやきが聞こえるようになるんだ。
朝、目を覚ますたびに耳元で――
「布団の外は寒いよ~」
「どう? ここはあったかくて気持ちいいでしょ?」
「もっと一緒にぬくぬくしようよ~、ほら、ねぇ、お願いだから」
……こいつ、喋るだけじゃない。
最近じゃ「眠りの魔法」まで覚えやがったらしくて、
結果、今日も昼過ぎまで意識を布団に封じられていた。
完敗だよ、もう。
気を取り直して着替えて下に降りてみると――
暖炉の前で、例の二人(?)がのんびりしていた。
いつの間にか我が家に居座ることが確定したメルディーと、
もはや犬扱いに疑問を抱く余地もなくなってきたブリード。
「あー……腹減ってないか?」
僕がそう尋ねると、
「……空腹……」
「ワウ~ン」
と、揃ってテンション低めに返事してくる一人と一匹。
……何か作るのも面倒だったので、今日は姫舞花亭までご飯を食べに行くことにした。
たまには、ね。
で、食堂で耳にした話――どうも最近、山の方で「雪の精霊」がずいぶん騒いでるらしい。
もしかすると、明日あたりこの辺にも初雪が降るかもしれないって。
なるほど、寒いはずだ。
そろそろ本格的に冬の支度を始めなきゃな。
ということで、木材屋へ行って薪の丸太を買ってきた。
ギギに荷車を引かせてね。
こういう時、獣魔術ってほんと便利。
で、大きめの丸太を5本ほど買い込んで、家まで引いて帰ってきたら――
ちょうど玄関先でメルディーとブリードが遊んでいた。
「おーい、メルディー。巻き割り手伝ってくれ」
そう声をかけると、メルディーはこくんと一つうなずいて、
家の中から――身の丈以上ある戦斧を、ずるずると引きずって持ち出してきた。
……いや、それ出す!? しかも片手で!?
「……これ、全部割るの?」
「う、うん。できる?」
「……危ないから……離れてて」
言い終わるやいなや、彼女は丸太を一つ空中に放り投げ――
その丸太が地面に落ちるころには、綺麗な“薪”に変わっていた。
ぱっかーん。
しかも、その斧を……片手で、ひょいって……。
……これはもう、なにかの武道だよね。技じゃなくて、力の暴力的進化だよね。
教訓:腕力でメルディーに勝てる日は、来ない。




