第37話 女神たちの言葉
そして、未来を司る女神の司祭――スクルドが、
まるで風に語りかけるように、静かに口を開いた。
「私は、“未来”の女神スクルドの司祭……
あなたの未来に待ち受ける、とても大きな“試練”を……すべて見通しています」
その声は、優しく、でもどこか寂しげで。
「ですが……掟によって、それをあなたに直接語ることはできません」
(なんだ、やっぱりそうなるのか)
「……でも、せめて“助言”だけは、させてください」
スクルドの目が、まっすぐにボクを見つめる。
「そう遠くない未来――
あなたに、一つの“大きな試練”が訪れます」
「それを皮切りに、次々とあなたを試すような困難が押し寄せ、
やがては“世界の行く末”を左右するような戦いに、あなた自身が巻き込まれていくでしょう」
(世界の行く末……って、スケール大きすぎない?)
「その時、あなたは――世界中の“勇者”や“英雄”と呼ばれる者たちと、
肩を並べ、その剣を振るうことになります」
(……うわ、ますます現実味がない)
「でも、覚えておいてください。
あなた一人の力では、その試練は決して乗り越えられません」
「だから――“信頼できる仲間”を集めなさい」
「苦しいときも、迷うときも、
あなたの傍にいて、背中を預けられる――そんな、仲間たちを」
「私が言えるのは、それだけです。
どうか……未来の女神の加護が、あなたの旅路にあらんことを」
静かに言い終えると、今度はウルドが一歩前に出て、声を重ねる。
「……あなたが望もうが望むまいが、
いずれ“あなたの過去”が、その身を蝕みにやってきます」
(……過去?)
「それでも、どうか忘れないでください。
大切なのは――“今”なのです」
「これからあなたが進む道が、あなた自身の未来を照らす“灯火”となるのですから」
続いてベルダンディが、穏やかに言葉を結んだ。
「過去も……現在も……
すべては、“未来”へとつながる通過点にすぎません」
「どうか――女神たちの加護が、あなたの未来にあらんことを」
…………
…………
ボクは、3人の司祭たちに深く頭を下げて、礼を告げた。
そして静かに、神殿を後にする。
ユグドラシルの聖域を抜け、廻廊を通り、ベルダンディの神殿をあとにして……
外に出ると、そこにはリアさんとメルディーが待っていた。
「……終わったんですか?」と、リアさん。
「うん、終わったよ」とボクが答えると、彼女は「そうですか」と、ただそれだけを返した。
「……人間だったの?」と、メルディー。
「人間だったよ」と言えば、彼女も「そう」と、やっぱりそれだけ。
(……まあ、そんなリアクションだろうと思ってた)
まだ、“感応者”とか“ルナリス”とか、
自分に待ち受ける“運命”のこととか……
今はまだ、心の奥にしまっておいても、いいかなって思う。
――“信頼できる仲間”。
女神はそう言っていたけど……
運命っていうのは、たぶん、自分が気づかないうちに、
もうすぐそばにあるものなのかもしれない。
ボクは、隣を歩く二人の姿をちらっと見て、ふと微笑んだ。
(……まさか、ね)
「帰りましょうか、私たちの町へ」
リアさんのその一言で、ボクたちは来た道を、また歩き出した。




