第35話 時の扉が開くとき
――朝日が差し込む部屋の中。
気づけば、ボクはもう起きていた。
というより……眠れなかった。
胸の奥がざわついている。
(いよいよ、ボクの“正体”がわかる日だ……)
少しばかり時間は早かったけど、我慢できずに神殿へ向かった。
すると――
神殿の入り口で、ボクを待っていたかのように立つ三人の女性。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
そう言って、三人は静かに歩き出す。
まるで、夢の中を導かれているような感覚。
一人は、艶やかな黒髪が腰まで伸びた凛とした女性。
一人は、柔らかいウェーブのかかった銀髪の気品ある女性。
そしてもう一人は、年端もいかない少女――だが、その瞳はすべてを見通しているような深さがあった。
無言でその後を追っていくと、神殿の裏手に広がる“湖”へと出た。
澄んだ水面に浮かぶ、石畳の橋。
その橋の先には――
**『輝きの泉・オーブ』**と呼ばれる、神域。
湖の真ん中に建つ、純白の神殿。
その中心には、まるで守られているかのように一本の大樹が立っていた。
(あれが……)
「これは“ユグドラシル”。この世界に繋がる“命”の樹です」
黒髪の女性が、静かに口を開いた。
「この神殿は、三柱の女神の加護が重なる“特別な場所”。
私たち三人が手を取り合わねばならぬ時、この“聖樹の神殿”でのみ、それが許されるのです」
その声に、思わずボクは息を飲んだ。
「申し遅れました。私は、“現在”を司る女神ベルダンディの司祭」
「……ですが、私の力だけでは、あなたの運命を見ることができなかったのです」
そう言って、一歩後ろに下がった彼女の隣に、銀髪の女性が進み出る。
「私は、“過去”を司る女神ウルドの司祭」
「あなたの本当の名を知るには、遥かな過去へと遡る必要がありました。
それはベルダンディでは届かぬほどの……深く、古い時の記憶」
そして最後に、あの少女が一歩進み出る。
「わたしは、“未来”を司る女神スクルドの司祭」
「特別な運命を背負うあなたに、道を示すには……
これから起きる未来、運命の“選択”を見届ける視線が必要だったのです」
3人は円を描くように立ち、ボクを静かに見つめる。
「“時”を司る3柱の女神の名のもとに、今ここに“運命の扉”が開かれます」
「さあ、オゼリア=プルート。あなたの物語の“始まり”を、迎えるときです」
ボクの胸が――トクン、と鳴った。
(始まるんだ……本当の自分を知る旅が)
次回――運命の開示。




