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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
31/59

第31話 白き山と心なき者の声

――夜明けとともに、ぼくたちは細く険しい山道を登り始めた。


ここはノルズ山脈。

目指すは、その頂にあるという“中央教会”。


まだ秋のはずなのに、山のてっぺんはすでに雪化粧。

しかも、空模様はどんよりと曇りがち。


(ヒャッハー、こりゃ凍える旅の始まりだな)


ブリューの不謹慎なテンションに苦笑しつつ、黙々と登る。


が、道中はなかなかスリリングだった。


ちょいちょい湧いてくるモンスターたち。

この山の険しさと合わせて、これ一人旅だったら普通に遭難コース。


……うん、ギルドのマスターが同行者をつけてくれた理由がようやく理解できた。


途中、雪がちらつき始め、視界もじわじわと白く閉ざされていく。


そして――それは中腹にさしかかった時の出来事だった。


「うわっ――!」


モンスターの奇襲を避けようとしたメルディが、足元を踏み外してそのまま谷へ落下。


「まずい!」


考えるよりも先に体が動いてた。

ぼくは即座にグランの重力制御を使い、自分ごと谷にダイブ。


加速 → 接近 → 捕まえる → 減速 → 着地!


漫画みたいな展開をリアルにやってのけて、なんとか無事に谷底へと着地した。


……うん、グラン様々である。


(主、ナイス判断でした)


魔力光で無事を上空に知らせると、すぐにリアさんからテレパシーが飛んできた。


《助けに行きますので、そこから動かないでくださいね~》


……うん、声にぜんっぜん緊張感がないのも、リアさんらしい。


「自力で戻れます。このまま先の山小屋で合流しましょう」


《わかりましたぁ~》


で、谷底でぽつんと佇むふたり。


メルディは小さな声でつぶやいた。


「どうして……」


「理由なんてないさ。仲間だから」


そう言うと、「解らない」と、ぽつり。


雪はさらに強くなる。

このまま進んでも遭難コース確定だ。


そんな時、近くの岩陰に洞穴を発見。

ちょっと窮屈だけど、ふたりならなんとか入れる広さだった。


「とりあえず、天気が落ち着くまでここで待とう」


ぼくたちは、その小さな避難所で、しばしの休憩を取ることにした。


中は意外と暖かく、風もさえぎってくれる。


そして――多分、仲間たちの前では言えないような話が、自然と始まった。


「……私は、心がないの」


ポツリと漏れたメルディの言葉。


(え?)と一瞬思ったけど、彼女は真顔だった。


「永遠に子供のまま存在するように作られた“チャイルド・ベース”。

最初に作られた初期型たちは、“心”が壊れて、みんな消えていった。

だから、私たちⅡ型は最初から“心”を持たないようにされたの」


長く生きるうちに、周りは老いて消え、自分だけが取り残される。

出会いと別れを繰り返すうちに、心が耐えられなくなっていく。


だから、“最初から心などない存在”として生きる選択肢が生まれた。


……だけど。


「あなたが、崖から私を助けて飛び込んでくれた時。

心がないはずの私の中で、何かが震えた。

ほんの少しだけど――何かが、芽生えた気がしたの」


そう言って、雪の粒が舞う洞窟の口をじっと見つめるメルディ。


「私たちは人間じゃない。

でも、どんなに研究しても、心って……完全には消せないんだね」


しんしんと降り続いていた雪が、気づけば止んでいた。


まるで空が、メルディの心に静かに寄り添っていたかのように。


ぼくたちは無事に仲間と再合流し、

さらに二日をかけて、ようやく“教会都市ノルズ・グニル”に到着した。


いよいよ、明日。


ぼくの“正体”が明かされる――そんな予感がしていた。


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