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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
28/59

第28話 銀狼亭の夜は更けて

ここが、北の国境の町「ニブルヘルム」かぁ……


列車の窓から見下ろすその町は、岩山を切り開いて築かれた要塞都市で、ぐるりと町全体を取り囲むのは、まるで巨人の盾みたいな分厚い城壁。


見た瞬間、ちょっと圧倒された。


「ここまで厳重って、やっぱり国境だからですかね?」


(いえ、主あるじ。あの壁は“外からの敵”を防ぐためというより、“中からの何か”を閉じ込めるためかと…)


え、こわいこと言わないでグラン。


それはさておき——


例のモンスター騒ぎの影響で、僕たちの列車は4時間遅れ。


乗る予定だった登山ルート行きの馬車は、当然ながらもう出発済み。


「今日はここで一泊だな」


ライアンのその提案に、全員一致でうなずいた。


駅前の掲示板には【本日、魔導登山馬車の最終便は運行終了】の張り紙。……まぁ、仕方ない。


でもギルドのマスター、実はちゃんと手配してくれていたらしく、僕たちは紹介状を持ってとある宿へ。


その名も――

風雪の銀狼(シルバー・ブロキオン)亭』


なんていうか、妙にカッコいい名前だ。


姫舞華(サンベリーナ)亭」の兄弟ギルドが運営してるって話だけど……入口をくぐった瞬間、みんな同時に固まった。


——そこには、まさしく“あのギルドマスター”がいたのだ。


「おぉ、お前らか。ギルのとこの若ぇのってのは」


「……ギ、ギルさん?」


「……いや、ちょっと待って。声が違うような?」


「ヒャッハー、あれはギルの影武者だ! やべえ、こいつら何人いるんだよ!?」


(ちがいます、ブリュー。たぶん双子です)


「あっはっは、びっくりしたか? オレはギルの双子の弟、ルドってんだ」


……納得。そっくりだけど、ちょっと声が低くてガタイがいい。確かに双子っぽい。


「長旅おつかれさん。今夜はゆっくり休んでけや」


「ありがとうございます!」


二階に荷物を置いて、夕食の時間。1階の酒場で、遅めの晩ごはん。


おぉ……さすが北の国境。鹿肉のローストに、スープは根菜たっぷり。どれもこれもおいしい!


そして始まる、宴(という名の飲み会)。


「飲むわねぇ、メルディさん……」


と、ぼそりと呟いたリューディアさんの視線の先には、ジョッキ片手にガンガン空けていく、ツインテの小柄な少女(外見)。


「わたしを子ども扱いするな、悠に500は越えてる」


「えっ……?」


(チャイルドベース……なるほど、納得です)


「……そう」


それだけ言って、メルディさんはまた無言でジョッキを煽った。


……なるほど、深く突っ込んではいけない系の事情ってやつだ。


よし、これは後でこっそりグランに聞いてみよう。←(やめとけ主あるじ、命が惜しけりゃな)


そんなこんなで、ニブルヘルムの夜は静かに更けていく。


明日はついに、ノルズ山脈への登山開始。


あの山の向こうに、ボクの“正体”があるんだ。


わくわくと、ちょっぴり不安を胸に抱えながら——

今夜はぐっすり眠れるといいな。

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