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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
24/59

第24話 列車と神と大地の亀

この魔導列車は、北の国境へ向かう道中、いくつかの主要都市を経由して走ります。

だから意外と混んでいて、でも設備はけっこう豪華。


「でも、まさか食堂車まであるとは思いませんでした」


そうなんです。

この旅の3日間は、列車の中で寝て、食堂車でご飯を食べるという、わりと快適な冒険者ライフ。


今夜もその食堂車で、全員そろって遅めの夕食をとりながら――

いつものように、世間話やギルドの噂で盛り上がっていたところで、ふとぼくは前から気になっていたことを聞いてみました。


 


「でも、タートルヘッドって変わった名前の町ですよね。なんか由来でもあるんですか?」


……その瞬間、周囲の空気が止まりました。


 


「え? ぼく、なんかまずいこと聞いちゃいました?」


 


「オゼリアくん、知らないんですか?」とリアさん。


「冗談だろ?」とライアン。


「……勉強不足」とメルディ。


「は~っ」とため息をつくリューディアさん。


 


な、なにその「え、マジで言ってるの?」的リアクション。

空気が凍るってこういうことか……


 


「お前な、仮にもタートルヘッドで冒険者やろうってんなら、少しはこの辺りの歴史、伝承のさわりくらいは勉強しておけよ」


と、ぶつぶつ言いながら、ライアンが大陸の伝承について語ってくれました。


 



---


北の国境にそびえるノルズ山脈の中腹に、『輝きの湖オーブ』という場所がある。


この湖から東西に流れる川が、もともとの海岸線だった。


つまり――それより南、今ぼくらが暮らしている大地は「もともと無かった」土地らしい。


 


ノルズ山脈のさらに北には、『魔法王国イリュージア』がある。


そこの初代国王「カイサンク」――通称カイが、ある日こんな宣言をした。


 


「人間こそが地上で最も優秀な種族。よって、全ての亜人は我が軍門に下れ。さもなくば――死を」


 


こうして始まった“亜人狩り”。


亜人たちは逃げ惑い、反旗を翻し、あるいは従属し……

南へと逃げた者たちは、もう逃げ場のない断崖に追い詰められた。


 


そのとき、現れたのが――『プロガノ』。


巨大な亀。神の使い。伝説の存在。


彼は亜人たちをその背に乗せ、断崖へ突撃し、その甲羅で道を切り拓いた。


その一撃でできたのが――現在のノルズ山脈。


そして、「もう安心して暮らせるように」と言って、背中に国を築かせた。


それが『八門王国プロガノ』。


そして、「頭」にあたる場所に作られた町こそ――『タートルヘッド』。


 



---


「なるほど~勉強になる!」


と、感心したようにメルディが呟くと、


「……八門王国」と、ぽつり。


 


「そうそう。ライアン、八門王国と呼ばれる理由も教えてやらなきゃ」とリューディアさん。


 


「えっ、城壁に門が八つあるから……じゃないの?」


 


……またしても勉強不足認定。


そして、リアさんの解説が入ります。


 


「この国、亜人種が多すぎるじゃないですか。昔はそれぞれが勝手に“異界ゲート”を作って通ってたんです。でもそれで問題が続出しまして……」


 


「そこで国が管理する“八つの門”を設けて、正式に申請した者だけが異界に行けるようにしたんです。それで“八門王国”と呼ばれるようになりました」


 


(へえ~。ボーっとしてるようで、ちゃんと知識あるんだ)


……なんてことを考えてたら、どうやらバレたらしく。


「いつも迷惑かけてすいませんね?」と、ちょっと怒った口調で言われてしまいました。すみません……


 


寝台に戻ったあと、食堂車で聞いた話を、グランとブリューにも聞いてみました。


 


「ねえ、さっきの話、知ってた?」


 


(もちろん知ってるぜ~)とブリューナク。


(ですが、あの話にはいくつかの疑問点があります)とグラン。


 


「疑問?」


 


(“カイ”ってのは、魔法王国の初代王カイサンクのことだろう)


(でもその人が“亜人種討伐令”を出したのは今から550年前)


(その時点でプロガノは、すでに王国として成立していた)


(前の主と共に、多くの亜人種族を助けた記憶がありますから――間違いありません)


 


「ええっ!? じゃあ、あの話って――」


 


(ヒャッハー、作られたおとぎ話ってこった!)


(ちなみに、魔法王国よりもプロガノの方が歴史は古いんだぜ?)


 


「でも、そういう話って訂正しちゃまずいんでしょ?」


 


(そう。一応“冒険者の心得”として、あの話は信じてるフリしとけ)


(うっかり矛盾を指摘でもしたら――村八分だぞ? ヒャッハッハ)


 


 


――こうして、真実と伝説の境界をまた一つ学びながら。


列車の旅、一日目の夜は静かに更けていきました。

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