第21話 回復薬ってそんなものですか?
目が覚めると、そこはキャンプの寝袋の中。
頭がぼーっとしている。空はすでに高く、どうやら昼をだいぶ過ぎていたらしい。
「……ずいぶん寝たなあ……さてと」
そう言って起き上がろうとした、――その瞬間。
「……あれ?」
体が――動かない。
(ヒャッハー! そりゃそうだ坊主。昨日、あれだけ魔力を空っぽにしたら、動けるわけねぇだろ?)
と、左手のブリューナクがいつもの調子で言ってきた。
(まぁ今日一日は寝てな。体に相当な負荷がかかってんだから)
「……それに、ずいぶんボロボロだ。無茶しすぎだ」
と、横で本を閉じながらエイレンさんがぼそっと一言。
でも僕としては、そこまで無茶したつもりはないんだけど――
……
…………
…………
あっ、そうか。
あれ、自分で体を動かしてたわけじゃなかった。
左半身がブリューナクで、右半身がグランだった。
……そりゃ加減もへったくれも無いわけだ。
「まあまあ、元気出してください。全部無事に終わったんですから」
と、リアさんが相変わらずのほわほわ声で慰めてくれる。
「でも、いつまでもここにいるわけにはいきませんから……」
と、取り出したのは――
小瓶。
「クスリで、回復しちゃいませんか?」
……その瞬間、あたりが静まり返る。
風の音さえ止んだ気がした。
「……く、クスリですよね?」
「そうですよぉ、私特製の魔法薬です!」
リアさんはにこにこと言いながら、小瓶を軽く振る。
「賢者の石の材料にもなる伝説の秘薬を完全再現しました!」
「な、なんだってー……」
「名付けて、エリクシール・ジェネリック!」
「……」
名前からして不安しかない。
「これを飲めば、一瞬で全快ですよ♪」
「い、いや……なんか僕なんかが飲むには、もったいない気が……」
「遠慮しなくていいんです~。帰ればまだたくさんありますし♪」
「そ、そうですか……でも、ちょっと色が……緑、というか……」
「そうなんですよねぇ~、最初はピンク色だったんですけどね。不思議ですねぇ~」
「……リアさん、それ……変色してません?」
「大丈夫大丈夫! ライアンだって飲みましたよ!」
「えっ!? あのライアンが!?」
「ええっ。涙を流して喜んでました! 『完全回復した!』って」
「ほ、本当ですか……?」
「はい! その翌日から地方のクエストに行ったらしくて、まだ帰ってきてませんけど♪」
(それって……帰ってこれてないだけじゃないのか?)
思わず、横にいるエイレンさんに「助けて!」という目でアイコンタクト。
すると――
『あきらめろ。お大事に。』
……って、手を合わせて合掌された。
―――それが、最後の記憶だった。
気づけば数日後。
自宅のベッドの上で目を覚ました僕は、たっぷりと水を飲み、静かに心に誓った。
「もう二度と、リアさんの薬は飲まない」
あとで聞いた話だと、リアさんが家に帰った後、
残っていた「エリクシール・ジェネリック」全部、処分してくれたらしい。
……その判断、英断だったと思います。ほんとに。。




