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オゼリアプルートの冒険日記  作者: 鳳 翔平
20/59

第20話 名を得た者「ギギ」

今日こそは――と、ぼくは朝から決意を固めていた。


今度こそあの6本足のパンケーキ、いや、進化パンケーキに決着をつけるんだと。


そして、リアさんとエイレンさんに一つの提案をした。


 


「僕が囮になります。二人は安全な場所に下がっててください」


 


「……えぇ~?」


リアさんの相変わらず脱力系の返事。


でも、これは本気の作戦。


なぜなら――昨夜、ブリューナクとグランから、とっておきの話を聞いたからだ。


 


曰く――


 


ブリューナクの中には雷の術、

グランの中には重力操作の術が刻まれているらしい。


 


そして、それは僕の意思で発動できる、と。


ただし――


 


・消費する魔力は、僕自身のもの。

・魔法の制御も、当然ぼく自身。


 


……魔法使いでもないぼくが制御できるのか?


それとも、暴走して大爆発?


だったら、誰かを巻き込む前に一人で勝負するしかない。


 


しかも今日は朝から小雨。


火術士のエイレンさんは、完全に出番なし。


「すみません、火が湿気てます……」


なんて言ってたけど、やっぱり雨の日に火は向かないよね。


というわけで、リアさんがエイレンさんの護衛兼退避要員に決定。


 


さて、もうひとつの秘策。


それは――自分の身体を剣と槍に預けること。


左半身をブリューナク、右半身をグランが制御。


ぼくは魔法制御だけに集中する。


そんな無茶なコンビネーション作戦で挑むことにした。


 


――そして、昼過ぎ。


 


また、ヤツと遭遇。


 


「キシャーーッ!!」


 


鋭くなったカマ、速さも攻撃も進化してる!


あれ絶対、もう冒険者ランクCクラスだよ!


 


ブリューナクとグランが主導で応戦してくれて、ぼくは隙を見て集中。


そして――その時は来た。


 


(今だ、叫べ、ジライオだ!)


 


雷縛法陣(ジ・ライオ)!!」


 


地面から立ち上る、無数の雷の触手がヤツを捕らえ、拘束!


そして続けざまに――


 


重圧結界(クラビティーフォール)!!」


 


地面を軋ませながら、重力の結界がヤツの身体をのしかかるように押さえつける!


雷と重力、ふたつの結界が、ついにヤツを地に縫いつけた!


 


ぼくはゆっくりと、ヤツの前に立つ。


 


こいつを倒すんじゃない。


――契約するんだ。


 


そう、こいつもぼくの使役獣に。


だから目を合わせる。ただ、ただ、じっと。


 


一時間――


二時間――


 


夕暮れの空が、だんだんとオレンジに染まっていく。


それでもヤツは諦めない。


 


三時間、四時間……


夜の森に満天の星が現れる頃、


ぼくの魔力も、精神も、もう限界ギリギリ。


 


それでも、ヤツはにらみ続けていた。


そして――


 


「……ギギ」


 


確かに、そう聞こえた。


それが、こいつの名。


それはつまり――ぼくを「主」と認めた証。


 


ぼくはすぐに呪文を重ね、その名で縛りをかけ、


影の中へと、そっと送り込んだ。


 


(ヒャッハー!やったな坊主、あのパンケーキ野郎を手懐けた!)


(お疲れ様です、主。我らの誇りです)


 


「二人とも……ありがとう。色々話したいけど、今日はもうムリ……」


 


そしてぼくはそのまま、背中からぱたりと倒れて、


 


――深い、深い眠りについたのでした。


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