第20話 名を得た者「ギギ」
今日こそは――と、ぼくは朝から決意を固めていた。
今度こそあの6本足のパンケーキ、いや、進化パンケーキに決着をつけるんだと。
そして、リアさんとエイレンさんに一つの提案をした。
「僕が囮になります。二人は安全な場所に下がっててください」
「……えぇ~?」
リアさんの相変わらず脱力系の返事。
でも、これは本気の作戦。
なぜなら――昨夜、ブリューナクとグランから、とっておきの話を聞いたからだ。
曰く――
ブリューナクの中には雷の術、
グランの中には重力操作の術が刻まれているらしい。
そして、それは僕の意思で発動できる、と。
ただし――
・消費する魔力は、僕自身のもの。
・魔法の制御も、当然ぼく自身。
……魔法使いでもないぼくが制御できるのか?
それとも、暴走して大爆発?
だったら、誰かを巻き込む前に一人で勝負するしかない。
しかも今日は朝から小雨。
火術士のエイレンさんは、完全に出番なし。
「すみません、火が湿気てます……」
なんて言ってたけど、やっぱり雨の日に火は向かないよね。
というわけで、リアさんがエイレンさんの護衛兼退避要員に決定。
さて、もうひとつの秘策。
それは――自分の身体を剣と槍に預けること。
左半身をブリューナク、右半身をグランが制御。
ぼくは魔法制御だけに集中する。
そんな無茶なコンビネーション作戦で挑むことにした。
――そして、昼過ぎ。
また、ヤツと遭遇。
「キシャーーッ!!」
鋭くなったカマ、速さも攻撃も進化してる!
あれ絶対、もう冒険者ランクCクラスだよ!
ブリューナクとグランが主導で応戦してくれて、ぼくは隙を見て集中。
そして――その時は来た。
(今だ、叫べ、ジライオだ!)
「雷縛法陣!!」
地面から立ち上る、無数の雷の触手がヤツを捕らえ、拘束!
そして続けざまに――
「重圧結界!!」
地面を軋ませながら、重力の結界がヤツの身体をのしかかるように押さえつける!
雷と重力、ふたつの結界が、ついにヤツを地に縫いつけた!
ぼくはゆっくりと、ヤツの前に立つ。
こいつを倒すんじゃない。
――契約するんだ。
そう、こいつもぼくの使役獣に。
だから目を合わせる。ただ、ただ、じっと。
一時間――
二時間――
夕暮れの空が、だんだんとオレンジに染まっていく。
それでもヤツは諦めない。
三時間、四時間……
夜の森に満天の星が現れる頃、
ぼくの魔力も、精神も、もう限界ギリギリ。
それでも、ヤツはにらみ続けていた。
そして――
「……ギギ」
確かに、そう聞こえた。
それが、こいつの名。
それはつまり――ぼくを「主」と認めた証。
ぼくはすぐに呪文を重ね、その名で縛りをかけ、
影の中へと、そっと送り込んだ。
(ヒャッハー!やったな坊主、あのパンケーキ野郎を手懐けた!)
(お疲れ様です、主。我らの誇りです)
「二人とも……ありがとう。色々話したいけど、今日はもうムリ……」
そしてぼくはそのまま、背中からぱたりと倒れて、
――深い、深い眠りについたのでした。




