第19話 六本足パンケーキ、進化形態
朝。
森の中で、目覚まし代わりにエイレンさんが放ったのは――
「火球の追跡探索魔法・通称ポチ」
なんか、かわいらしい名前だけど、意外と優秀らしい。
ブツブツと呪文を唱えるエイレンさんの指先から、ポフッと生まれた火の玉が4つ。
昨日の大ねずみの亡骸のまわりをくるくる旋回したあと、四方に飛んでいきました。
「感知したら、爆ぜるようになってる。
それまでは、普通に捜索しようか」
というわけで、今日も3人で手分けして森を探索開始。
……それから約1時間後。
――ドンッ!
鈍くて重たい爆音。しかも、間髪入れずに聞こえた――
「キシャーーーーーッ!!!」
間違いない。アイツだ!
ぼくは全力で爆音のした方へ走る。
途中、ブリューナクとグランに呼びかける。
「ブリューナク、グラン! 何か感じる?」
(ビンゴだ。魔法生物のにおいがプンプンするぜ)
(主あるじよ、あちらにて魔力の奔流が乱れております)
追いついた先に、ズタズタの大ねずみが。どうやら第二の犠牲者らしい。
そしてついに、ヤツとご対面。
――姿は……あの時と同じはずなのに、ぜんぜん違って見えた。
前足は大カマキリの鎌、
尻尾には大サソリの毒針、
目は大グモの複眼、
そして牙はまるで甲殻類の鋏のように分厚くて固い。
でも、胴体はちゃんとふわっふわのパンケーキ生地なんだよなあ……。
どうやら、狩ったモンスターの能力を取り込むタイプみたい。
えらいもん作っちゃったね、リアさん……。
そんな考察をしていたぼくに――
襲いかかってくる6本足パンケーキ!
「うおわっ!」
(あぶねえ、坊主!)
ギィンッ!
ブリューナクの刃が、襲いかかったカマの一撃を受け止めてくれた!
(捕獲結界を!)
グランの声で我に返り、結界魔法を展開。
けれど――速い!
捕まえきれない!
その間にヤツのターゲットが切り替わった。
――リアさんだ。
リアさんに向けて、カマが振り下ろされ――
『対物理防御を展開します』
突如、リアさんのペンダントが光り、透明な防壁が現れてカマを弾き返した!
さらに――
『光鎖によって捕縛します』
空中に走る光の鎖がパンケーキを縛る!
「今です!」
リアさんの声にあわせて、ぼくも結界魔法を追加!
……が。
「キシャーーーーーッ!!」
大声とともに、ヤツは結界も鎖も力づくでぶち破って逃走!
森の奥へと姿を消してしまいました。
(……ったく、やるじゃねぇか。ダメージを負わせた上で縛らないと無理みてぇだな)
(そのようだな、ブリューナク)
「ありがとう、ブリューナク。助かったよ」
(おう、オレ様じゃなかったら、お前の首はたぶん今ごろ樹に引っかかってたぜ)
「……その剣、喋るんですね?」
いつの間にかリアさんがすぐ後ろに。
(あんたが噂のビックリ錬金術士リアさんか。オレ様はブリューナク。よろしくな!)
「よろしくお願いしますねぇ」
(そして私がグラン・デス・ワイゼン。魔導と槍術を併せ持つ魔槍にて魔杖)
「素晴らしい方々ですねぇ。ね、アーデルワイト」
『同意』
「ペンダントが喋った……?」
「はい。これは『人工魂』と呼ばれる古代の魂結晶で、
私より強い魔法も普通に使えるんですよ」
……なんかすごいの出てきた。
たしかにこのペンダントがあれば、リアさんの戦闘力の謎も納得できる。
そうこうしていると、エイレンさんも合流。
「……で、やつは?」
「逃げられました~」
「二人がかりでの呪縛でもダメだった……。やるなあ」
というわけで、今日の捜索はここまで。
夜のキャンプで作戦会議することになりました。
夕暮れ、焚き火を囲みながら、ふと――
(おい坊主。ちょっと話がある)
ブリューナクが、少しだけ真面目な口調で話しかけてきました。
……なんだろう?
この後に来る「何か」が、少しだけ、気になる夜でした。




