第12話 玄関修理と糸と、謎の進化系わたあめ
今日は、うちの玄関の屋根の修理に大工さんが来てくれる予定だった。
そう、あの嵐の夜にどこかへ旅立っていった我が家の可愛い屋根。
そろそろ現実と向き合おうと思って、ギルド経由で職人さんを呼んだのだ。
ところが。
来たはずの大工さんが、ほとんど仕事らしい仕事をしないまま帰ってしまった。
理由:
フーヨンが勝手に玄関を修理してしまったから。
……説明しよう。
フーヨンとは、例のぷもーんの正式名称(※名乗ってきた)。
影に収納していた使役獣のひとり。ふわふわ浮いてて、発光してて、あまり役に立たないと思われていた彼である。
が。
どうやらこの子、「物体再生」系の魔法能力を持っていたらしい。
大工さんが到着して、「あーこりゃ柱からいくね」なんて言ってるとき、
ぼくの影がモゾモゾし始めた。
フーヨン、騒ぐ。
「ぷも〜ん!」
仕方ないので影から出してみたら、突然、口から糸を吐き出し始めた。
あの時のぼくの顔は、多分すごかったと思う。
え?
フーヨンってそういう構造?
っていうか、繭?
一気に玄関が白い糸に覆われ、完全にサランラップ案件になった我が家。
大工さんと一緒に数分待っていると、ふいに糸が崩れ落ちた。
そこには――
元通りの玄関があった。
綺麗に、ビフォーより美しいまである。
ぴっかぴか。新品レベル。
「こりゃすげぇな……」と大工さん。
「アンタが修理の仕事はじめたら、うちら食えねぇや」と、
笑いながら帰っていった。なんか申し訳なくて、交通費くらいはお渡ししました。
というわけで、フーヨンの能力、物質再生と判明。
これはすごい。すごいけど、ちょっと怖い。
構造理解とかどうなってるんだろう。3Dプリンタ的な何かなのか。
ていうか、あれだけのことができるなら、
パンケーキを焼く程度の加熱能力も、実は持ってるんじゃ……?
ついでに、回復魔法とかも使えたら便利なんだけどなあ。
そのへんは、また別の機会に試してみよう。
なんだか最近、やたらと周囲が便利になってきてる気がする。
でも、肝心の“自分の正体”は相変わらず不明。
この感じ、ソシャゲで仲間はどんどん増えてるのに、主人公のステータス画面がずっと「???」のまま、みたいな。
まあ、明日こそちゃんとギルド行って、旅の段取り確認しよう。
そろそろ、行かないとね。中央教会。
ぼくが一体、何者なのか。
この影に棲む、もふもふたちの謎も含めて。
きっと何か、分かるはず――たぶん。きっと。おそらく。そうであってほしい。




