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至高の魔女  作者: みやび
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第7話

それからあわただしく長い旅の準備が整えられ、出発の日が迎えられた。

その日、ルーチェの両親とケイトの母親も見送りに来ていた。


「しばらく会えないなんて・・・ルーチェ 父さんは寂しいよ」


「ケイトのお父様に迷惑をかけない様にね。自分のことは自分で出来るわよね?」


「父さん、ほんのしばらくの間じゃない。母さんも心配症なんだから」


ルーチェは心配する両親をなだめつつ笑顔を向ける。

少し離れた場所でケイトも母親とのしばしの別れを惜しんでいた。


「でも帝都と言えばたくさんの人がいるわけだろう?

もしルーチェが誰かお偉方の息子なんかに見初められたりしたら・・・・

まさか、このまま帰って来ないなんてことはないだろうな?」


どんどんと妄想の広がる父親であった。


「あなた! ルーチェはまだ15歳よ。そんな心配はまだまだ早いわよ。」


「いやいや。ルーチェはお前に似てなかなかの器量よしだ。

そんな事になったら父さんはいったいどーしたらいいんだい?」


頭をかかえてうなり込んでる父に皆呆れていた。


『絶対にそれはないわね。』


きっぱりと言い切ったのは黒猫のミーアである。

今日のミーアは首に金色のチェーンである。

チェーンの端にはハートのチャームと鈴がついている。


『ケイトならいざしらず、あんなできそこないルーチェなんかにそんな事あるはずないじゃない。』


『そんなこと、わからないじゃないか。

それより、これからずっと一緒だというのにお前、なんか臭いぞ。』


ミーアからプンプンへんな匂いがして俺の鼻はやられそうだ。


『まあ。このフローラルの香りの良さがわからないなんて・・・・これだから品のない猫は嫌いよ。

昨日は念入りにシャンプーしてもらったのよ。 爪だってこのとおりピカピカに磨いだわ。

せっかくのお出かけなのだからレディーとして当然のことよ。』


ペロペロと前足を舐めながら言う。

まいったぜ。これからずっとこの調子かよ。


学園の前には豪華な迎えの馬車が待っていた。

馬車から降りてきたのは、白髪の青年だ。


上着の袖口には刺繍が施され高級そうな生地である事が一目でわかる。

目は鋭くきりりとした顔立ちである。


「私はフリークと言います。これから帝都までお嬢様方のお世話をさせて頂きます。

なんなりとご用命を。」


ものごしもやわらかく丁寧な挨拶を済ませるとフリークは手際よく2人の荷物を馬車に積んでいく。


「こちらこそよろしくお願いします。フリークさん」


ケイトとルーチェは声を揃えてそう言うとペコリとお辞儀するのだった。

そうして馬車に乗り込んでいく。

俺とミーアも後を追って馬車に乗り込んだ。


フリークが手を上げて御者に合図を送ると馬車はゆっくりと動き始めた。

馬車の窓から身を乗り出すようにして2人は手を振った


「いってきまーす」


「気をつけてね」


「帝都のお父様によろしくね。」


見送る者達もそれぞれ、馬車が見えなくなるまで手を振り続けた。

帝都までは馬車で3日ほどはかかる。

治安はいいのでさほど心配はいらないだろう。


馬車の中では次々と変わる景色に2人ははしゃいでいた。


「ねえルーチェ 帝都の市場は村とは違ってすごく大きくてにぎやかなんですってよ。」


ケイトが目をキラキラ輝かせながら言う。


「じゃあなんでも売ってるわね。どうしよう。私もっとおこずかいを貯めておくんだったわ。」


ルーチェは悔しそうに眉にしわを寄せながら言う。


「今帝都で流行の髪飾りを買いましょうよ。いろんな種類のが売っているわよ。」


どこで仕入れてきた情報なのかケイトは得意そうに言う。


「そうね! そのくらいなら私のおこずかいでも買えそうよ。」


ルーチェの顔がうって変わってパァと明るくなる。


「その髪飾りで、私ルーチェの髪を綺麗に結ってあげるわ」


ルーチェのさらさらの黒髪を一房掴んでケイトが言った


「あら? ケイトってそんなに手先が器用だったかしら?」


ルーチェは疑惑のまなざしでケイトを見る


「失礼ねぇ。手先は・・・器用じゃないわ。、魔法を使うのよ。」


「ケイトってそんな魔法も使えるようになったの?」


「ええ。もちろんミーアの協力も必要だけれどね。手伝ってくれるわよねミーア?」


『やーよ』


ミーヤはプイッと横を向く。


「もちろんよと言ってるわ」


ケイトはにこにこ笑いながら通訳する。


『流行の髪飾りなんてルーチェに似合うわけないじゃない。やるだけ無駄よ。』


「ルーチェの黒髪には赤い髪飾りが似合いそう。最高にかわいくしてあげるですって」


『タオもルーチェも大嫌いよっ』


「なのでこれからもうんと仲良くして欲しいですって」


俺たち使い魔は人の言葉はすべて理解できているが会話ができるのは主だけである。

なのでミーアの言葉はルーチェにはわからない。


動物の言葉も理解できる俺が思うにケイトはなかなか、したたかだ。

ミーアの悪口雑言を笑顔で自分の都合のいい様に変換して伝える技は完璧だ。


「まあミーアったら、なんてやさしい猫なのかしら」


ルーチェはミーアを強く抱きしめた。


『く・・苦しいったら・・・離してよ。

あんたなんかに抱かれたくないわよっ』


「私もルーチェが大好きよ。抱っこされたら嬉しいわ」


そんなケイトの通訳にガックリとしたミーアは諦めたのかおとなしくなった。

なおもルーチェはミーアに頬を寄せすりすりしている。


すっかり騙されてるルーチェであったが、忘れるな。

そいつはどうしようもない性悪猫なんだぞ。



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