第75話
ルーチェとケイトは帝都の城下街にある市場に来ていた。
ようやく当初からの予定どおり、楽しみにしていたお買い物である。
二人の気持ちも高揚していた。
どういう訳かルドルフとアルクも付いて来ていた。
ルドルフは案内だと言い、アルクは視察ですと言っていた。
だが二人とも市場は初めての様である。
綺麗なショーウィンドウが立ち並ぶ店、目新しい品々にルーチェとケイトは目を奪われる。
その後ろをキョロキョロ見回しながら付いて歩くルドルフとアルクであった。
ルーチェは村で帰りを待つ両親にささやかなお土産を買った。
ケイトはなかなか決められないらしくあれこれと迷っていた。
ルーチェは隣のお店が気になっていた。
お目当ての髪飾りが豊富に取り揃えられたその店には大勢のお客が集まっていた。
ルーチェは自分のお気に入りが売れてしまわないか気が気ではなかったのである。
先に行っていいわよと言うケイトの言葉に甘えてルドルフとその店に来たのであった。
遅れてケイトとアルクがその店に来た時、あれほど大勢いた客は誰もいなかった。
そしてルーチェとルドルフは喧嘩をしていたのであった。
「お前はほんとうに非常識な奴だな!」
ルドルフの声が聞こえてきた。
「どうかしたの?」
ケイトは二人の仲に割って入る。
「髪飾りが欲しいと言うから買ってやったのに、礼も言わずいきなり怒りだすんだ」
ルドルフが事情を説明した。
「だからと言って店の商品を全部買うなんてどっちが非常識よ?」
ルーチェはプンプン怒っていた。
「私のどこが非常識だと言うんだ。あれこれと迷って時間をかけるのはムダな事だ」
「だからそれが非常識だって言うのよ。選ぶ楽しみというのがあるのよ」
ケイトとアルクはただただ呆れていた。
こんな調子で買い物は滞りなく?終わったのであった。
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一方ルドルフは大仕事を終えた事で今後は正式に国務に務める事になったのであった。
父である皇帝サミエルはさっさとルドルフに皇位を譲って早めの楽隠居を決め込んだ様である。
サミエルは念願であった世界の視察の旅に出るつもりで嬉々としていた。
タジンも今回の事では深く思うところがあったらしく、早々に若い者に職を譲る事にした。
白羽の矢が立てられたのはアルクであった。
強い魔力を持ち律儀で礼儀正しく、信仰心も厚いという事はもちろんである。
今回、大勢の闇の魔法使いをパニックも起こさず自然な形で世界中から集めた事。
またそれをグループ別に分け交代制にして魔力が途絶える事なく供給する事が出来た手腕が認められたのである。
タジンはサミエルの旅に便乗し、今回自分の為に犠牲になった若い闇の魔法使い達の供養に回るつもりであるらしい。
ルドルフもアルクもかなり過酷な引継ぎになりそうであった。
二人ともしばらくは忙殺される日々が続く事は避けられそうもなかったのである。
こうしてのんびりして居られるのも今しばらくの間だけなのであった。
「ねえルド。お願いがあるの。
例の損害賠償の事なんだけど、今しばらく待ってくれない?」
ルーチェはまだ東の森を消してしまった損害賠償の事を気にしていた。
「両親に心配させたくないの。私が大人になれば、どんな事をしても支払うわ」
「一生タダ働きだぞ?」
そう言ったルドルフはすこぶる機嫌よく見える。
「それは仕方が無いわ。ルドが城内での仕事を与えてくれるだけでも有難いと思っているわ。」
頷いたルドルフに満足してルーチェは前を歩くケイトの方に走って去った。
側にいたアルクはそれを聞いて驚いた。
「損害賠償って・・・殿下それは酷いですよ。
帝都は深い森に囲まれていて、東の森が消えたくらいではなんの問題もないはず。
むしろあの時、森が消えていなければあの大火です。
周りの森に燃え広がって帝都が火の海に囲まれていたかもしれないんですよ?」
アルクはルドルフのあまりに理不尽な所業に苦言を呈していた。
「だが、王妃という職は一生タダ働きだからなぁ・・・・仕方が無いだろう。」
ルドルフはしれっとした顔でそう言ったのであった。
アルクは開いた口が塞がらなかった・・・・
いつものアルクならルドルフの暴挙にはもっと食い下がるところであるが今回はそれ以上何も言わなかった。
ルーチェの割りに合わない取引を気の毒に思いながらも、今後もこのままケイトと会う事が出来そうだ。
己の将来設計の方に重きをおいたアルクであった。
いよいよ次回で完結です。
物語としては今回で終了なんですが・・・・
この物語を読んでくれてる方々はきっと動物好きに違いない!
思い込み激しいですね(笑)
やっぱり最後は使い魔たちに登場してもらわなくっちゃね。
ちょっぴり未来を覗いてみたい方はぜひご覧くださいませ^^




