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至高の魔女  作者: みやび
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第70話

ルーチェは夢を見ていた。

真っ白い霧の中に一人ぽつんと立っていた。


目をこらすと霧の向こうに誰かがいる。

その姿がだんだんとはっきりと浮かび上がって来る。


見た事のある少女だった。

あの教会の礼拝堂にある祭壇に立つ少女であった。


「あなたは・・・至高の魔女様!」


ルーチェは駆け寄った。


「私はレイシアよ。」


「レイシア? でもあなたは確かに・・・」


見間違うはずもなかった。確かにあの像と同じ姿である。

ルーチェは跪いた。


「教えてください。私は特別な力など持っていない。

なのに至高の魔女だと言われて・・・どうすればいいの?

あなたの様な力など持っていないのに。」


「私もあなたと同じよ。何一つ特別な事などないわ」


「でも、あなたはこの世界を救ったわ。

私にはそんな力はないもの。」


「救えるわ。特別な力など必要ないのよ。

その時、出来る者が出来る限りの事をする。

ただそれだけの事よ。」


レイシアはそう言うとすっと姿を消した。


「待って・・お願い。それってどうすれば・・・?」


ルーチェは縋るようにその姿を追った。

すると今度は頭の中に直接、声が響いた。


この世界を愛して欲しい。

愛する心が世界を救うの。


愛する人、愛する両親、愛する友達・・・

それら全てをを育んできたこの世界を。


小さな虫の一匹でさえこの世界に生まれてきた意味をもっているのよ。

必要だから生まれてきたの。

この世界にいらないものなんて何一つないのよ。


私はこの世界のそんな小さな愛の結晶。

守りたいと思う心から生まれた者


愛を怖がらないで・・・

信じるの。


そしてあなたが心から守りたいと念じる事。

そうすれば、きっと願いは叶うわ。


能力が違うだけよ・・・・・・

魔力が使える者も・・・使えない者も・・・


小さな虫も・・花や木も・・・・

あなたと同じ・・・・


この世界に必要なもの・・・

それぞれが・・その能力に応じて・・・・


出来ることをやるだけ・・・

その価値は皆同じ・・・・


だんだんと声が遠く、小さくなってやがて聞こえなくなった。

ルーチェは一人その場に残されてポツンとただ佇んでいた。


目が覚めた時、ルーチェの頬は涙で濡れていた。

悲しくて泣いた訳ではない。


なんだかとても心の中に暖かいものが溢れてきて自然と涙が出ていたのだった。

その朝ルーチェは大きな決心をしたのであった。


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その日・・・早朝から神殿の鐘の音が高らかに鳴り響いていた。

この鐘は神殿が建てられてからと言うもの今まで一度として鳴った事などなかった。


帝都に住む者は皆知っていた。

この鐘は世界に危機が迫った事を知らせる為の物。


できれば生涯一度もこの鐘の音を聞くことなく過ごしたいと誰もが願っていた事だろう。

その鐘が今日は高らかに帝都中に知らせる為になり続けていたのだった。


神殿の広場にはぞろぞろと闇の魔法使い達が集まって来た。

城内には光の魔法使い達が集まってきていた。


その為の準備は既にルドルフとアルクの指示により整えられていた。

警備と案内はまずまず順調に進められた。


一人でも多くの闇の魔法使いを神殿に集めて広場からルーチェに魔力を送って貰う為だ。

一人でも多くの光の魔法使いを城内に集めてその命を守る為だ。


そうして全ての準備は午前中のうちに整ったのであった。

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