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至高の魔女  作者: みやび
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第67話

翌日俺達は神殿の塔の最上階にやって来た。

あと五日しかないんだ。


早朝より起き出して、早い朝食を終えるとさっそく訓練に取り掛かったのである。

今日はケイトやアルクも一緒だ。


ルドルフが昨日と同じ様に宙にいるサリーを使って光の球を作る。

するとみるみる光の球は激しく輝きだす。


ルーチェは集中し、呪文を唱えた。


「この部屋を・・・闇で包み賜え!」


言霊を使ってその魔力を増幅した。

俺も毛を逆立て、精一杯増幅だけに集中した。


ケイトも自分の魔力をルーチェに注ぎ混むのに呪文を使う。


「この魔力を・・・ルーチェの中へ!」


ミーアもその漆黒の毛を逆立てケイトの魔力を増幅する。

アルクは時間を計っていた。


ついに部屋は暗くなった。

やった!俺は喜んだ。


だがすぐに元の明るさに戻った。


「今のは3秒ですね。」


アルクの声がしーんとした部屋に響きわたる。

たったの3秒である。


それでも昨日よりはうんと進歩したのである。

昨日は暗くさえならなかったのだから・・・・・


ケイトが補給してくれるおかげで俺もルーチェも昨日と比べて格段に楽になっていた。

これは最初から幸先がいいぞ。


この調子なら意外と早く上達するかもしれないぞ。

俺はそう思った。


だがそれはすぐに間違いである事がわかった。

ルーチェの集中が続かないのだ。


やっとルーチェが集中し始めると今度はケイトの補給が続かなくなるのだった。

回を重ねるごとに時間が延びるどころか逆に短くなる始末だった。


ケイトもここに来て初めて継続する事の難しさを思い知ったのであった。

学園でトップの成績を誇るケイトではあるが、学園では長時間続ける様な魔法は使わなかった。


予想はしていたが、思った以上に困難な事であった。

ルドルフが作った光の塊を見て溜息をついたケイトであった。


彼はいとも簡単そうにその光の塊を輝かせ続ける。

その輝きは衰えるどころか最初の頃よりますます輝いている様にも見えるのだ。


いかに高等な技術であるかが窺がえるというものだ。

それと共にもうひとつ気づいた事もある。


ルーチェに魔力を補給していて判ったのだ。

いかに自分の魔力を注ごうともその器が満たされる事はなかったのである。


全身全霊をかけて注いだ魔力だというのにルーチェの魔力の器は底なしの様に感じていた。

注いでも注いでもきりがないのである。


「少し休憩しましょう。」


アルクの合図でようやく全員に、しばしの解放が許されたのであった。

その場に崩れ落ちる様にしゃがみこんだルーチェとケイトであった。


「ごめんなさい。私が続かないばっかりに・・・・」


ケイトが項垂れて詫びる。


「そんな事はありませんよ。ケイトさん。

闇の魔法使いはもっと集めますし、今はまだ練習なのですから。」


アルクがやさしく慰める。


「そうよ。ケイトのおかげで暗くする事が出来たわ。うんと助かっているわよ。

私の集中力が足りないのがいけないのよ。」


ルーチェもしゅんと肩を落としてして呟いた。


『俺もうまく増幅してやれなくて・・・・ごめんよ。』


それぞれが自分の欠点に気づいていた。

でもその欠点をどう克服すればいいのか答えは出ない。


「まだ始まったばかりなんだ。そう簡単にはいかないさ。

とにかく少しでも慣れておくことだ。」


ルドルフが皆を落ち着かせようとそう言ったとき後ろから人の気配がした。

ルドルフの背後に誰かが瞬間移動して来たのだ。


「タジン・・・?」


振り返ったルドルフがその姿を確認した。

見覚えのある穏やかな優しい笑みを浮かべた老人である。


後ろに十数人の神官を引き連れたタジンであった。

全員が闇の魔法使いである。


「殿下。この年寄りも少しはお役に立てますかな?

神殿内の闇の魔法使いを取り急ぎ集めて参りました。」


そう言うとタジンはルドルフとルーチェの前に跪く。


「至高の魔女様、お目にかかれて光栄でございます。」


後ろに控えていた神官達も口々にそう言うと同じ様に跪いた。

ルドルフとアルクの表情がパッと輝いた。


ルーチェとケイトはその状況にうろたえていた。

オロオロとしながらも二人はとにかく深くお辞儀をして礼を返したのであった。


「タジン様が来て下されば、これ以上心強いことはありません。」


アルクがタジンに向かって跪く。


「タジンご苦労である。力を貸してくれ。」


ルドルフが命じた。


「御意。」


タジンはそう返事を返すとさっそく準備に入った。

訓練とはいえ、一気に闇の魔法使いの数が増えたのである。


これで補給が途絶えることはないだろう。

俺達はがぜん勢いづいた。




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