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至高の魔女  作者: みやび
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第65話

ルーチェとルドルフが戻って来てせっかく皆が揃ったというのに、全員が言葉少なであった。

あれからずっと一日中頑張ったと言うのに思う様な結果が出なかった俺とルーチェだった。


「あと五日。あれからもっと詳しいデータを集め、それをもとに計算を致しました。

五日後の正午すぎには双子星は重なることでしょう。」


疲れ果て気落ちした俺達に追い討ちをかけたのはアルバートの言葉だった。

あまりにも短すぎる時間であった。


その場を重い空気が流れた。


「しかし、もうひとつ判明した事があるんです。

異常な光が降り注ぐ時間なんですが、双子星が重なる約一分間が最も激しいものになる様です。」


「一分間・・・?思ったより短いものなのですね。」


そう言ったアルクが少しホッとしたような顔をした。


「それだけでは済まないだろう。いきなり激しい光が降り注ぐはずはない。」


腕組をしたルドルフが言う。


「その通りです。その少し前からだんだんと激しさを増していきます。

もちろんその後もだんだんと弱くなっていくでしょう。」


アルバートは分厚い書類をめくりながら説明する。


「王宮にあった日記の中からも今まで解明できなかった箇所がようやく解明できました。

それがどうやら降り注ぐ時間の事であると判ったのです。


残念ながら光の量については二倍なのか三倍なのか・・・・・

それについて記されている箇所はありませんでした。」


アルバートはパサリと書類をテーブルの上に置き、アルクに提出した。

そしてそのまま又研究室に戻ろうとしていた。


「アルバート・・・」


ルドルフが呼び止めた。

アルバートは足を止め振り返る。


「ぎりぎり・・・どれくらいだ?」


「双子星が重なっている間の一分間・・・その前後に二分づつ。

合計五分・・・・それがぎりぎりかと思います。


殿下であれば魔力の器が大きいので三分であっても耐えられるかと思われます。

しかし、子供や老人等、弱者の魔法使いの事を考えますと五分であってもあくまで死なない程度のぎりぎりです。」


アルバートはそれだけ答えると深く礼をして研究室へと戻って行った。


「成功したとしても重症者続出って事か・・・・

完璧な形で救おうとしたらもう一分づつ・・・計七分。」


ルドルフは腕組したまま下を向き独り言のように呟いた。


「たった十分にも満たない・・・

そんな短い時間でこれだけ栄えた文明が崩壊するなんて!」


アルクは両手でテーブルをバン!と叩いて悔しがった。

五日は短くわずか七分が長いとは皮肉な事である。


だがそれは正しかった。

大きな魔力を一度に使うより小さな魔力を長く継続して使う方がはるかに難しいのだ。


大きな魔法ならば、一度に魔力を使い切ってしまえばそれで終わりだ。

そう。東の森を消し去った魔法がそれだ。


小さな魔法を長時間継続して使うという事は常に魔力は放出され続け、その量の調節も一定しなければならない。

更に魔力を使い切ってしまわぬ様に常に補給も必要なのである。


今日ルドルフはサリーを使って光の塊を作り、ルーチェの訓練の為に一日中輝かせ照らし続けた。

それは誰でもが、たやすく出来る事ではない。


魔力に長けたルドルフであるからこそ出来た事である。

光の魔法使いならば光らせる事はたやすく出来ても一瞬である。


それを長時間も維持するのは並大抵の事ではない。

まして一日中など、とんでもない事なのだ。


まるで平気な顔をしてはいるがルドルフの負担も相当なものだったのである。

俺達はあの部屋ですら暗くは出来なかった。


帝都を闇で包むという大きな魔法を七分間も維持しなくてはならないのだ。

しかも訓練期間は五日しかない。


まさに五日は短か過ぎて、七分はとてつもなく長い時間なのである。

俺達の未来はすこぶる暗いものであった。


「明日からは私も行くわ!私もその訓練に連れて行ってちょうだい!」


突然ケイトが意を決したように言った。


「・・・・ケイトが?」


ルーチェが驚いてケイトを振り返った。


「ええ。私が補給を引き受けるわ。ルーチェは思い切り魔力を放出すればいいわ。

そしたらタオはそれを増幅することだけに集中できるでしょ?」


『そうよ。タオのその1/3しかない黒毛じゃ、増幅と補給の両方は間に合わないものね。』


ミーアがそのしっぽをゆっくり揺らしながら言う。


「さすがはケイトさん。なんて前向きなんだ。

その不屈の精神・・・感動です。」


アルクはケイトを褒め称える。


「そんな。私なんかに出来る事はしれてます。

でも今私に出来る事はそれしかないって思うんです。」


ケイトは強い意志を持ってはっきりとそう言った。


「そうだよルーチェ。それぞれが今出来る事を精一杯やればいいんだ。

結果など気にする事はないんだよ。」


ルドルフはルーチェに向かってにっこりと微笑んだ。


「ええそうよ。ルーチェあなたはあなたの出来る事をしっかりやってちょうだい。」


「そうですとも。それでどの様な結果であっても私は受け入れますよ。

出来る限りの事をやったのであれば後悔はありません。」


アルクとケイトもルーチェに向かって微笑んだ。

部屋の片隅に佇んでこの成り行きを見ていたセーラさんも頷いて微笑んでいた。


この日初めてルーチェは皆の笑顔を見る事が出来た。

それはルーチェの心を暖かく包み込む大切なもの。


守りたい・・・・ルーチェはこの時、初めて本気で強くそう願ったのであった。



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