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至高の魔女  作者: みやび
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第54話

『そろそろ妹が来る頃だな。言っておくがこの店で出される餌を間違っても食うんじゃないぜ。

ときどき腐ってたりするんだ。』


隣の檻のハチがそんな事を言ってくる。

確かにここの環境は劣悪そうだ。


ミーアは昨夜連れて来られたばかりなので檻も綺麗だが、他の動物達の檻を見るとその事が窺がえるというものだ。

掃除も行き届いてないし、腹を下してやせ細った動物達も多くいた。


どの動物達もその瞳に輝きはなく、暗い表情に見える。

イサンのペットショップとは大違いである。


ミーアはほんの数日しかイサンの店に滞在してはいないが、あの店には愛があった。

商品ではある動物達だが、金儲けよりその動物達の幸せをなにより優先していた。


掃除も行き届いていたし、餌だってそれぞれの栄養を考えた物が出されていたのだ。

其れゆえ動物達も人を信頼し、その瞳も希望に溢れたものであった。


『お・・来た来た!あの路地のところを見ろよ。』


ミーアがハチの言う方向を見ると、路地の角から出てきた魚を咥えた一匹の猫が見えた。

茶トラの美しい猫だ。


咥えた魚が大きすぎるのか落とさぬ様に慎重に歩いて来る。

ダメ元であったとしても、今はハチの妹だけが頼りなのだ。


『どーだ?俺の妹はなかなかきれいな猫だろう?

おーいチャチャ。俺はこっちだ。』


声のする方を見たチャチャは驚いた。

昨日まで一番目立つ場所にいた兄の檻は移動されていた。


この店には高価な動物は置いてはいない。

むしろ劣悪な環境の為に、羽の抜け落ちた鳥や痩せ細った動物達ばかりだ。


そんな中で一番元気で毛艶のいい兄が一等場所に置かれていたのだ。

それが、今その場所に居るのは首に赤いリボンを付けた綺麗な黒猫だった。


兄の檻はその隣に移動されていたのであった。

昨日来た時にはそんな黒猫は居なかったのだ。


『待ちわびたぜ。腹が減ってたんだよ。』


ハチの言葉にチャチャは檻に近づき咥えていたカサスを檻の中へと入れた。

そして黒猫の方に振り返った。


『待ってろよ。今半分分けてやるからな。』


ハチはそう言いながらカサスの解体に取り掛かっていた。


『そんな事は後でいいわよ!早く私の事を頼んでちょうだい。』


ミーアはハチの呑気さにイラついた。


『その赤いリボン!あなたはもしかして・・・・』


チャチャはその黒猫に近づいた。

タオが話してた通りの本当に漆黒の美しい毛並みの猫だ。


『私はミーアよ。私の事を知っているの?』


チャチャのその様子に気付いたミーアも檻の中からそっと近付く。


『あなたはタオが探していた黒猫?』


タオの名前を聞いたミーアは身を乗り出して聞いた。


『タオですって?タオがこの近くにいるの?』


『ええ。さっきまで一緒にいたのよ。あなたの事を探してしたわよ。』


そう言ったチャチャからはわずかにタオの匂いがした。

ミーアはすぐ近くに居たであろう事を確認した。


『こんなにすぐ近くまで来ていると言うのに、私を見付けられないとはなんて間抜けなのかしら!』


ミーアは自分の立場を忘れてそんな事を言っていた。


『どこまでも高飛車な雌猫だなぁ・・・・』


ハチはどんなに綺麗でもこんな雌猫だけはごめんだな。

それに比べて妹のチャチャはどこまでもやさしくてやっぱり猫の中では一番だと改めて思った。


『それでタオはどこへ行ったの?』


『えっと・・・・黒い鳥を追いかけて行ったわ』


チャチャはあの時のタオの様子を思い出すように首をかしげた。


『黒い鳥・・・・カラス?カラスじゃダメだわ。

サリーならあの鋭い目で必ず私を見付け出してくれるだろうけど、カラスじゃねぇ・・・』


ミーアはあからさまにガッカリした顔をした。


『待っていて。まだそんなに遠くへは行ってないはずだわ。

もう一度戻って探してみる!』


チャチャはひらりと身を翻して元来た道へと走って行った。


『お願い!必ず私がここに居る事を伝えてね!』


ミーアはチャチャの後ろ姿に向かって叫んだ。



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