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至高の魔女  作者: みやび
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第50話

一方、ミーアはさっそくペットショップの店頭に並べられていた。

通りすがりの人々がミーアの前で足を止める。


漆黒の艶のある毛並みとその容姿は美しく、見る人の目を引きつける。

たちまち店頭には人が集まり始めた。


店主はいい看板が出来たとほくほく顔で満足していた。

なにやら訳けありそうな二人組みが突然現れて猫を買ってくれと言う。


見れば極上の黒猫だったのだ。

二人組の足元を見て、相場より半分にも満たない安値で叩いて買い取ったのだった。


あんな破格値でこんな極上の黒猫が手に入るとは・・・・

店主は笑いが止まらなかった。


ミーアの前で足を止め、見とれる様に見入ってた人々もその価格を見て溜息をつき、帰っていく。

かなりの高値がついているのだろう。


ミーアは魔法の施された檻の中でそんな人々を見ているしかなかった。


『お前ってすごいな。客の数がいつもの3倍はいるぞ。』


隣の檻から急に話しかけられた。

白と黒が半々くらいに分かれている毛並みの雄猫だ。


『でもその値段じゃなかなか売れないぞ。よほどの金持ちでもないとな。』


ミーアは振り向いた。


『別に売れたい訳じゃないわ。それに私の価値はそんな値段じゃ安すぎるくらいよ。』


『へっ。お高くとまってやがるな。 ちょっと美猫だと皆これだ。』


隣の檻の猫は呆れていた。


『あなた、ここの生活は長いの?』


『俺か?俺はもう半年になるかなぁ・・・・

俺はハチって言うんだ。ほらこの顔の黒の部分がちょうど八って字に見えるだろ?


こういう柄をハチワレって言うんだけど、そのハチさ。

白黒だから光でも闇でも両方の使い魔になれるってんでここに連れてこられたんだけどよ。


両方使えるってことは両方とも中途半端なんだよ。

俺が使い魔なんかになれるはずないさ。売れる訳ないだろ?』


ハチはふてくされたように言った。


『そんな事ないわ。私はもっとありえないくらいの使い魔を知ってるもの。』


ミーアはタオを思い出した。

タオは体の1/3ほどしか黒い毛はないが、少なくてもこのハチは半分はあるのだ。


『へへ。ありがとうよ。そんな風に言ってもらえたのは初めてだぜ。

ちょいと気位は高いようだが、お前は今までの中では特別な美猫だから許してやるよ。』


ハチはどうやら信じなかったようだ。ただの慰めと思ったらしい。


『べつに俺も売れて使い魔になりたい訳じゃないんだ。ここから出たいだけなんだよ。』


『私も出たいわ。私を心配してくれている人がいるのよ。

きっと探しているわ。なんとか私がここにいる事を知らせる方法はないのかしら』


ミーアは溜息をついて俯いた。


『元の飼い主かい?でもお前を売ったんだろ?』


『そうじゃないわ。私は攫われたのよ。私の主はケイトしかいないわ。

だって私は使い魔なんだもの。』


『なんだって?もう契約済みの使い魔なのか?』


ハチは驚いたように目を丸くした。


『そうよ。連絡さえつけば必ず迎えがくるわ。

その方法さえあれば・・・・』


ミーアは悔しそうに爪を立てた。


『あるぜ。そのかわり迎えが来たら俺もここから出してくれる様に頼んでくれないか?』


ハチが思いかけない事を言い出した。

ミーアはピンとしっぽを立てて期待の目をハチに向ける。


『夕方になったら店頭に俺の妹か来るんだ。

まあお前ほどじゃないが、これがなかなかの美猫なんだぜ。


俺を心配して毎日カサスを持ってきてくれるんだ。

ここの店主はケチでろくな餌を与えないんだ。とても食えたもんじゃない。


特別にお前には半分やるよ。

妹に話したらなんとか外と連絡できるんじゃないかと思うんだ。』


『ほんとうに?』


ミーアは飛び上がらんばかりに喜んだ。


『だが、妹は普通の猫だからなぁ。

人と話せないから、どうやって伝えたらいいのかが問題だなぁ。


ここらは貧民街だし、魔法使いも居なけりゃ、使い魔もいない。

通訳も頼めないからなぁ』


ミーアはガックリと項垂れた。

どうやらこのハチはミーアの気持ちを上げたり下げたりする天才らしい。


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