第49話
「城外へ連れ出されたとなると確かに捜索は困難になるな。
時間はかかるが、帝都の街をローラー作戦でいくしかない。」
ルドルフが地図を広げて考え込む。
『俺の仲間は帝都中に散らばって大勢いるんだ。、どこだって情報は入るぜ。
大丈夫、そっちも任せときなって。』
パルスは胸をはって自慢げに言った。
「それでもまだ街中ならばいいのですが・・・・
もし人里離れた山中や森の中ならば、捜索のしようもありません。」
アルクはルドルフの広げた地図の山中を指差しその広い範囲を示す。
『そこなんだよなぁ。俺たちは人の住む所しか生息しないからなぁ。
なんたって食べ物が豊富だからなぁ。
人里を離れると、さすがの俺もお手上げなんだよな。』
パルスも小さな体で同じ様に地図を覗き込む。
後ろにいた灰色の鼠がもじもじしながらパルスをつつく。
『なあ。もう俺の用は終わったんだろ?ほら・・あの約束の物を・・・』
「あ・・あら。そうだったわね」
セーラさんは思い出したように台所の方へ向かった。
『約束の物って?』
俺はセーラさんの後姿を見送りながら聞いた。
『良い情報を知らせてくれたら、体の倍のチーズをあげるって約束なんだ。』
パルスが説明する。
『こんなごちそうが貰えるんなら、皆こぞって協力するさ。
俺がこれを持って帰れば、仲間たちは大騒ぎするぜ。すぐに噂も広がるさ。』
そう言って灰色の鼠はセーラさんから貰った自分の倍ほどもあるチーズを上手に抱えて嬉しそうに帰って行った。
「アルク、さっそく街中のローラー作戦の指示を急いでくれ。」
ルドルフはアルクに命じた。
「はい。早速に。
それから今まで神官は調査の対象に入っておりませんでしたが、それも含めてもういちど洗い出してみる事に致します。」
アルクはそう言うと瞬間移動ですっと消えた。
『私はちょっと山の上空を飛んでみるわ。キースは森の方をお願いね。』
サリーはそう言うと開け放たれた窓からスイーッと飛び立って行った。
『了解した。』
キースも部屋から出て行くと風のようなスピードで走り去った。
「ケイト、大丈夫よ。サリーの目はどんな上空でも見逃さないし、キースの鼻はバツグンに効くんだから。
ミーアはきっと見つかるわ。」
どんどんと状況が悪くなっていくほどケイトの顔色も冴えない。
ルーチェはそんなケイトを励ますことしか出来なかった。
「ええ。絶対希望は失わないわ。なんとしてもミーアを助けなければ・・・・・
私の足さえ、ちゃんと治っていれば街中でも探しに行くのに。」
「それはダメだ。狙われているのは君達二人なんだから。
これ以上なにかあったらどうするんだ。」
アルバートがケイトの言葉を遮った。
「そのとおりだ。ルーチェとケイトがこの部屋を出ることは許可できない。
キースの替わりにこの部屋には警備の者を手配しよう。
アルバートとセーラは二人の側にいて目を離さない様にな。」
ルドルフは地図を広げたままこちらを振り向きもせず、アルバートとセーラにそう命じた。。
「ええもちろんですとも。私だっていざとなったらお嬢様方をお守りしますからね。」
セーラは大きく頷いた。
俺もルドルフの横からそっと地図を覗き込む。
まだ俺達は帝都に着いてから城外へは出た事がない。
まだ見ぬ街の地図を俺は頭に叩き込もうとした。
う~ん・・・・さっぱりわからん。
街は広すぎてしかも複雑に入り組んでいた。
「よーし!覚えたぞー!完璧だー!」
隣で同じ様に地図を覗き込んでいたカラスが叫んだ。
『・・・・・・・』
こいつはもしかして本当に頭がいいのかもしれない。
『俺たちも街へ出ていいか?』
「タオあなたが?大丈夫なの?まさかタオまで攫われるなんてことは・・・・」
『それはないだろ? そもそも俺を見て使い魔だなんて思う奴なんていないさ。』
「・・・・・・・・・。」
ルドルフは無言で頷いた。
「俺はいいかー? 俺も街へ出たら狙われるかー?」
カラスも同じ様に聞いてきた。
『カラスだと思われるだけじゃないか?』
「???」
カラスは意味がわかってない様だった。
誰かこいつにカラスの本当の意味を教えてやってくれ・・・
そうして俺とカラスは街へ出る事になった。
俺があの日勝手に外に出た為に、ミーアがこんな事になったんだ。
部屋でじっとはしていられない。
これと言った当てもないが、少しでも役に立ちたかった。
『おーい。待ってくれよ。俺も一緒に行って街の仲間と連絡を取るよ。』
パルスが後から付いてきた。
俺達は街へ飛び出したのであった。




