第4話
俺が戻ると部屋は元どおり綺麗になっていた。
床や壁、カーテンにいたるまでベッタリとカボチャが塗りつけられたような悲惨な状態はかけらほどもない。
爆発の勢いで倒れたイスやテーブルにいたるまで、完璧なまでに元どおりに復元されていた。
もちろん、魔法で復元したのなら一瞬の作業だろう。
「ケイト本当にありがとう。
ケイトが手伝ってくれなかったら、この部屋はこんなに早く綺麗にはなってなかったわ」
申し訳なさそうに肩を落としたルーチェが言う。
ケイトも闇の魔力をもって生まれた少女だ。
やはり一見、黒髪と黒い瞳だがルーチェと並ぶとずいぶん茶色であることがわかる。
ちょっと冷たい感じのするほど整った顔立ちは知的美人といったところか。
ルーチェより半年ほど後に生まれたが、身長はルーチェより高く発育がいいようだ。
ほっそりとしてはいるが、その体つきはもう大人のそれに近い。
この村にその年に2人もの闇の魔女が生まれるのはめずらしいことだ。
2人は妙に気が合うのか、幼い頃より仲がいい。
「いいのよそんなこと。いくら罰とはいえ、魔法も使わずあの部屋を片付けるなんて1人じゃとても無理よ。
ルシア先生も厳しすぎると思うわ」
そう言いながらケイトはミーアの額についたカボチャをハンカチで拭きとっていた。
ミーアも呼ばれたのだろう。
そう。ミーアはケイトの使い魔だ。
時間が経ってこびりついたそれはなかなか取れにくいのだろう。
強く擦られて痛そうだ。
ミーアはそのつり上がった目を閉じて耐えていた。
ざまあみろだ。
笑った俺をミーアは横目でギロリと睨んだ。
「はぁ~。よく働いたからお腹へっちゃったぁ」
ルーチェはおおげさなジェスチャーでお腹を押さえた
「ふふ・・・実は私もよ。まだ食堂は閉まっていないわ。行きましょ。」
2人は勢いよくイスから立つとドアのほうへと向かう。
「今日のメニューは確か・・・・カサスの煮付けよ」
ルーチェが振り向いて俺とミーアに言った。
それを聞いた俺とミーアのしっぽは思わずピンと立った。
カサスはけっして高くはない庶民的な魚だ。
だが味は最高なのだ。
俺は一生カサスだけ食べて生きていたいと思うほどだ。
高級志向のはずなミーアもどうやら好物らしい。
食堂はガランとしていた。
どうやらまだ食べていないのは掃除で遅くなったルーチェとケイトだけのようだ。
簡単な祈りを済ませたあと俺はカサスにがっついた。
ミーアは上品にちびちび舐める様に食っている。
「それにしても今回の失敗で来月からの休暇がなくなるなんて・・・・
すっごく楽しみにしてたのにあんまりだわ」
スープを飲む手を止めてルーチェは溜息をつく。
「なんとかならないものかしらねぇ・・・」
ケイトも同調するように溜息をついた。
2人は今度の休暇には帝都で過ごすという計画があった。
ケイトの父親が帝都の城内で研究職に就いているからだ。
つまり宮勤めという訳だ。それはすばらしい優秀な魔力を持っているらしく、村では一番の出世頭だ。それもあってケイトの生家は裕福だ。
きっとケイトはその血筋を受け継いだのだろう。
この学園でも成績は常にトップでもある。
しかし母親は普通の人間である。
魔力を持っていない者はたとえ家族であっても城内には入れないのである。
ゆえに母親はこの村に残り、父親が休みの度に帰ってくるという別居生活を余儀なくされているのである。
2人はこの父親の元で休暇を過ごす計画を立てていたのである。
既に父親には了承を得てあるというのに・・・・
答えもでないまま2人は食事をすませて、それぞれの部屋に戻るのである。