第46話
部屋のいる者すべてが暗い顔をしていた。
一昼夜が経とうと言うのに何一つ手ががりさえ見つからないのだ。
ケイトは何度も返事のないテレパシーを繰り返していた。
皆その様子を息を呑んで見守っていたが、ケイトは溜息をつき首を振るばかりだ。
『私がドアの外に居たというのに、こんな事になって申し訳ない。』
キースはその大きな体を小さくさせんばかりに項垂れていた。
『猫族の忍び足は特別だもの。キースが気づかなくてもしかたのない事だわ』
サリーがシャンデリアの上から言った。
『そうだよ。俺達は忍び足が一番の得意なんだ。
キースが怖いもんだから特に慎重にやったんだから気づかれるはずもないよ。』
俺はその一番の得意技が仇になるとは思いもしなかったんだ。
「ねえルド・・・ミーアはどうなっちゃったの? このまま見つからなかったらどうなるの?」
ルーチェは一番気になる事を聞いてみた。
「使い魔の方から主と離れるのは考えられない。
テレパシーも使えないとなると、魔力が施された檻に入れられて隔離されているとしか思えないな。」
ルドルフは腕を組み眉間に皺をよせたまま答えた。
「魔法使いの囚人には皆、その方法で使い魔を隔離するんですよ。
使い魔さえ離せば本人の魔力などしれていますからね。魔力を封じるには一番有効な手段なんですよ。
もちろん本人の能力にもよりますが、まず8割方はそれだけで日常生活程度の魔力しか使えなくなります。」
アルクが詳しい説明をする。
「それじゃ・・・ケイトはその囚人達と同じ様に・・・」
ルーチェは両手で口を押さえて絶句した。
「もちろんケイトが牢に入る訳などないですが、日常生活程度の魔力しか使えないと言うのは同じでしょうね。」
アルクは悔しそうに眉をしかめる。
「これほど探しても見つからないとなれば、もはや城外に連れ出されたのかも・・・
そうなると捜索は困難を極めるな。」
ルドルフの言葉にますます部屋の雰囲気は暗いものに包まれていくのであった。
「こんなときはなー!俺様の頭脳に頼るといいんだぞー!
使い魔パワー全開だー!」
『カラスまたお前か・・・
こんな時ぐらいバカは黙ってろ!』
俺はカラスに飛びつき、前足で押さえつけた。
「またバカって言ったなー!離せー!
パルスー!パルス出てこーい!」
『パルス?パルスってなんだ?』
俺は足元でバタバタ暴れているカラスを離した。
「こんな時はなー!人間より使い魔の方が役に立つんだぞー!
俺様がおりこうなのを見せてやるー!パルスー!」
セーラさんのエプロンのポケットがもぞもぞと動きだした。
『いやだー!俺はここから出たくない!
猫に鷹に狼だぞー!食われちまうよ!』
『なんだか知らないけど、私は鼠が好物なのよ。
今すぐ出てくれば特別食わないでいてあげるわ。さもなければすぐにでも・・・』
『・・・はい。出ます!』
サリーの脅しは効果的だった。
セーラさんのポケットからぴょんと白い鼠が飛び出してきた。
「パルスなら城外でも情報は集められるんだぞー!
なんせパルスは大家族だからなー!」
『わかったよ。協力するよ。
なんせ俺の仲間は帝都中にはびこっているからな。
帝都の事ならどんな小さな情報でも簡単に集められるよ。』
「いけー!パルスー!
すぐに情報を集めるんだー!」
カラスは羽をバタバタとさせてパルスを急かした。
『そのかわり、お前ら一匹たりとも鼠を食うんじゃないぞー!』
『わかったわよ。あんたが良い情報を持って帰ってきたら、この先一生鼠は食わないと誓うわ。』
サリーが返事を返す。
『約束だからなー。』
そう言うとパルスはすばやく部屋を出て行った。
『サリーっていつも鼠を食ってるのか?』
俺はサリーに聞いてみた。
『そんなはずないでしょ。私は皇子の使い魔なのよ。
高級食材しか食べる訳ないじゃない。』
やっぱりこいつもミーアと同じ種類なんだ・・・・俺は確信した。




