第45話
いつもの朝のはずだった。
ルーチェはもう食卓に座り、朝食を半分ほど済ませていた。
「まったく・・・今日もだなんて・・ほんとやってられないわ。」
ぶつぶつ文句を言いながら、スープを飲んでいた。
アルクは約束通り早朝からこの部屋に詰めていた。
アルバートさんはそろそろ時計を気にし始めている。
仕事の時間が近づいてきたのだろう。
ケイトはまだ部屋からは出てこない。
ケイトが寝坊するのはめずらしい事だ。
アルクはケイトの居る部屋をチラチラと見ては気にしていた。
「ケイト遅いわねえ・・・・」
ふと気づいた様にルーチェが言う。
「まだ眠っているのでしょうか?」
アルクはやきもきしている様だ。
「そんな事はないわ。私より先に起きてたわよ。」
「ケイトお嬢様は支度に時間が掛かってるんですよ。
誰かさんがいるからじゃないですか?」
セーラさんがチラッとアルクを見てからかう様に言った。
アルクは一瞬、顔を赤くして頭をかいた。
「ルーチェお嬢様も早く食べておしまいにならないと、そろそろ殿下がお迎えにまいりますよ。」
そうだった。ルーチェはあわてて皿の上の料理に手をつけた。
その時、アルクがずっと気にしていたドアがやっと開いた。
ケイトがなにやら顔を曇らせて出てきたのだ。
「ねえ・・・誰か・・・ミーアを見かけなかった?」
「ミーアがどうかしたの?」
ルーチェが食事の手を止めて聞き返す。
「今朝からずっと姿が見えないの。テレパシーで呼んでも返事がないし・・・・
こんな事は初めてだわ。」
『ミーア? ミーアなら明け方、外のテラスで見たぞ。
俺は先に帰ったけど、ミーアはもうちょっと外の風に当たりたいって・・・・』
俺はなにげに答えただけだった。
「外だって?昨夜外へ出たのか?」
アルクは顔色を変えた。
『な・・なんだよう?外へ出ちゃいけないのか?』
「どうかしたのか?」
突然ルドルフが現れた。
いや、ルドルフは約束の時間に訪れちゃんとドアをノックしたのだった。
だが、誰も返答する者はいなかった。
本当にこの部屋に訪れて、まともな対応を受けた事のないルドルフであった。
しかたないので勝手に瞬間移動で入ってきたのであった。
「殿下、申し訳ありません。私の不手際です。」
「ミーアがいなくなったの!」
ルーチェがルドルフに訴える。
ケイトは立ちすくんだまま声も出ない。
「私は昨夜、ここを出る時に外から防御魔法をかけていたのです。
外からの侵入者には効果はありますが、内から出ていったものに関しては・・・・」
アルクが悔しそうに唇を噛む。
「まさか、使い魔の方を狙うなんて・・・・」
セーラさんがわなわなと怒りに震えた。
「確かに使い魔がいなければ、増幅も補給もできないからな。
元々持ってる魔力など、たかがしれてる。」
「大きな魔力を使わせないという意味では効果はありますね。」
『俺か?俺のせいなのか・・・・・
俺が勝手に外に出て行ったりしたから。』
「明け方ならまだそんなに時間は経ってない。
今からでも手分けして探せば、何か手がかりが残ってるかもしれない。」
アルバートの言葉に皆は頷いた。
アルクは即座に部下たちに捜索の命令を出した。
あわただしく城内すべての捜索が開始されたのであった。
城中の下働きの者までが庭のすみずみまで、メイド達は部屋の一つ一つまで、くまなく捜索したのだ。
しかし、それらしい手がかりはまったく見つけられる事はなかった。




