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至高の魔女  作者: みやび
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第44話

「タジン様がその様な事を? 信じられない・・・・」


アルクは両手を頭に当て天を仰いだ


「だが、本当なんだ。

確かに魔力の流れが気にはなってたが、まさかあの使い魔がそんな力を・・・」


ルドルフは興奮ぎみに昼間の出来事を説明していた。


「我々は白と黒以外の使い魔なんて知りませんからねぇ。

その様な事はタジン様でないと気づきもしないでしょう。」


アルクも感心したように頷いた。


「それにしても・・・あれからずっとルーチェはかぼちゃの魔法を?」


「6時間以上だな。ずっと魔力を使い続けたのに空にはならないんだよ。

すごいだろう?」


ルドルフは自慢げに言う。


「殿下、いくらなんでもそれは酷ですよ。

女性には、もっとこう・・やさしくしないと嫌われますよ。」


「嫌われた・・・・?」


興奮したルドルフのさっきまでの高かったテンションは一気に下がったのだった。


---------------------------------------------------------------------------------


まだ夜明け前か・・・・

俺は変な夢を見て早く目が覚めてしまったようだ。


いや。昨夜は疲れ果てて、いつもよりうんと早く寝たからだな。

俺は大きく屈伸して体を伸ばした。


そしてドアの取っ手にジャンプして、うまく開けると少し外の風に当たる事にした。

玄関のドアを出るとキースが寝ていた。


こいつだけは俺だってびびるほど怖い。

慎重にそっと側を通り抜けてテラスの方へ出た。


なんだか気持ちがすごく重かった。


昨日は結局、あの歪な形の馬車が1つ出来上がっただけだった。

あんなに頑張ったのに、すべて失敗だ。


やっぱり俺には無理なんだ・・・・・

ルーチェの力は俺が一番よく知っている。


やはり昨日のあの、高齢の神官の言う様に至高の魔女なんだろうか?

そんなすごい魔女に俺なんかが釣り合うはずもない事だ。


『どうしたのよ。そんなに耳もしっぽも垂れちゃって。』


後ろから突然ミーアが声を掛けてきた。

どうやら俺の後を付けて来たらしい。


『ミーアになんか分からねぇよ。』


『なによ。せっかく心配してやってるのに・・・』


ミーアは不愉快そうにしっぽを横に振る。


『そんなきれいな漆黒の毛をしてる奴には俺の気持ちなんかわからないさ。

どんなに、それが羨ましいかなんて・・・・』


『失礼ねぇ。私だって羨ましいと思う気持ちは人一倍知っているわ。』


『へえ。ミーアもそんな風に思う事があるなんて、どこまで贅沢なんだ?』


今日の俺は機嫌が悪いんだ。

今一番見たくないのはその漆黒の毛並みだって事がなぜわからないんだ?

ミーア・・・こいつはどこまでも俺の神経を逆なでする奴だ。


『そんないい方、かわいくないわねぇ。』


『どーせ、かわいくないさ。俺なんて・・・・

ルーチェに俺みたいな使い魔は相応しくないんだ。』


俺は完全に拗ねていた。


『今更、何を言ってるのよ。 それはもう変えられない事じゃない。

タオは間違いなくルーチェの使い魔よ。 契約は変えられないもの。』


ミーアが呆れたように言う。


『その契約が間違ってたんだよ。ルーチェは選べなかったんだ。

俺が死に掛けてたから、助ける為にしかたなく・・・・』


『タオ それは違うわ!』


俺の言葉を遮り、ミーアははっきり言い切った。


『あの時、ルーチェは選んだのよ。

私はあの夜の事をはっきりと覚えてるわ。』


『俺を選んだ?ルーチェが?』


くるりと背を向け、俯いたままミーアが続ける。


『あの夜、ルーチェは月の光を求めてどんどん森の奥へ入って行ったわ

途中、もうここでいいんじゃない?と思う場所もいくつかあったのに・・・


それでもルーチェは誘われる様に奥へ奥へと入って行ったの。

そしてあの倒木の所に来た時、求めていた月の光をやっと見つけたのよ。


そこに月の光を浴びてきらきら光る二つの瞳を・・・・・

それは空に浮かぶ本物の月よりも眩しく輝いていたわ。』


『俺の瞳・・・?』


『あの時、ルーチェは確かに選んだのよ。

この私の漆黒の毛並みよりも、タオあなたの瞳の中に映る月の光を。』


ミーアは後ろを向いたままだった。

俺の方を見ようとはしない。


『ルーチェが俺を・・・選んだ?』


『私が羨ましいと思ったのは生まれてこのかた、たった1つだけよ。

月の光をその瞳に宿したあなたが一番羨ましい。』


後ろ向きでも俺にははっきり分かった。

ミーアの耳としっぽが垂れ下がっているのを。


『それは・・本当に・・?』


本当にルーチェは俺を選んでくれたのか?

しかたなくじゃないのか?


『こんな事で嘘なんて言わないわ。早くルーチェの元に帰りなさい。

私はもう少し外の風に当たっているわ。』


そう言って振り返ったミーアはもう、いつものミーアだった。

ツンと顔をあげピンとしっぽを立てている。


それを聞いた俺はたまらずルーチェの元へと急いで戻ったのだった。


私はそんな事など、もうとっくに乗り越えたわ。

タオ・・・今度はあなたの番よ。


タオの後姿を見送りながらミーアは思った。


その上空には白鳩が舞ってる事など誰も気づいてはいなかった。

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