第41話
「・・はははっ・・・あはははは・・」
突然タジンがその皺だらけの顔をさらに皺だらけにして笑った。
「なるほど。これでは殿下がいくら探しても見つからぬはず・・・」
タジンはそういうとルーチェの方ににスタスタと近づいた。
そうしてルーチェの前まで来るとその手をとり、うやうやしく跪いたのであった。
「至高の魔女様。私はタジンと申します。どうかお見知りおきを・・・・」
「へ?・・・・」
ルーチェは固まっていた。
ルドルフはその姿を見て驚愕した。
引き連れていた神官たちは驚いてザワザワと騒ぎだした。
タジンが跪くのは皇帝陛下とその世継ぎの皇太子だけである。
それ以外にはたとえ皇室の者であってもタジンが跪くことなどありえない。
それほどに最高神官長という職は地位が高く、威厳のある職なのであった。
周りの者達が驚くのも無理のない事であった。
「タジン、どういう事だ?
これは・・・・・まだ何も分からないと言ったはずだ。」
ルドルフは憤慨したようにタジンに食って掛かった。
「殿下・・・私はまだ耄碌はしておりませんよ。
間違いなく、このお方は捜し求めていた人。
よく、お見付けになられましたな。」
タジンのさっきまでの厳しい顔はまた穏やかなやさしい笑顔に戻っていた。
「だが・・・もし・・たとえルーチェがそうであったとしても、使い魔がこのタオでは・・・・」
ルドルフとタジンは俺をまじまじと見つめるのであった。
「お前はタオと言うのか。なかなか器用な奴よのう。
使い魔がその様な働きをするのは初めて見たが・・・。」
俺がルーチェの魔力を弱めていた事をどうやらタジンは見抜いたらしい。
今まで誰も気づいた奴はいなかったのになぁ
「殿下、この使い魔はこの黒い毛で魔力の増幅や補給など通常の働きをしておるのですが・・・
なんと、あめ色の毛を使って分散し、魔力を弱めるなど自由自在に魔力の調節をしておるのですよ。」
タジンの説明にルドルフは驚いた。
ルドルフが知っている使い魔は皆、全身が黒か白である。
魔力を弱める等、出来るはずもない事なのだから思いつきもしなかったのだ。
魔力の流れが変なのは気づいてはいた。
いきなり大きな魔力を感じたと思ったら突然消えてしまうのだ。
一瞬の事だが、それが気に掛かっていたのだった。
今までルドルフは大きな魔力の痕跡をずっと探し求めてきたのだ。
たとえルーチェが大きな魔力を発したとしても、このサビ猫がすべて消し去ってしまってたとしたら・・・・
見つかるはずもない事だった。
ルドルフが俺を刺すような目で睨んでいる。
ちょっと怖いと俺はびびった。
「しかし、この黒毛の量では増幅の力はかなり劣るのは確かだ。」
せっかくの至高の魔女の力も制限されてしまう・・・・
ルドルフはガックリと項垂れた。
「神がお選びになったのであれば、それなりの理があるのでしょう。
我ら常人には計り知れない事ですなぁ。」
タジンはルドルフにそう声を掛けると、付き添いの神官達に向かった。
「この事はまだ他言は無用じゃぞ。」
神官たちは無言のまま、うやうやしく礼をした。
こうして再び禁口令が布かれたのであった。
「長生きはするものですなぁ。今日はおもしろい物を見ることが出来た。
さっそく陛下にお伝えするとしよう。」
そう言い残してタジンは当初の目的であった皇帝陛下のもとへと赴いて行ったのであった。
まったく何がなんだか、訳がわからず立ち尽くすルーチェであった。
「至高の魔女って?・・・・どういうこと?」
ルドルフはルーチェの側に駆け寄った。
「そろそろ休憩にしよう。 昼食にでもするか。」
ルドルフはルーチェの腰に手をまわすと、フッとそのまま消えた。
「え? でも・・・さっきの・・・どういう意味?」
そう言ったルーチェの言葉だけがその場に残ったのであった。




