第38話
今朝はいつもより遅い朝食であった。
昨夜は皆、興奮していた為かなかなか寝付けなかったのだ。
ルーチェはまだボーッとしたままだ。
ケイトは食後のお茶を優雅に飲んでいた。
アルバートは、そろそろ仕事に出かける時間なのか急いでお茶を飲み干した。
カップをテーブルに置き椅子から立ち上がったそのときだった。
コツコツ・・・
玄関ドアがノックされた。
セーラさんが応対に出ると、そこにはルドルフとアルクが立っていた。
ドアを開けるとすぐにサリーが飛び込んで来たので、居間にいた者全員が来訪者が誰であるかはすぐに判った。
立ったままだったアルバートはすぐ姿勢を正した。
ルーチェとケイトも立ち上がって礼を尽くそうとしたが、その暇もなくルドルフはまるで自分の部屋であるかの様にツカツカと居間に入って来た。
「そのままでいい」
ルドルフの言葉にルーチェは中腰のまま止まった。
ケイトに至っては松葉杖を取る暇もなく、そのまま座ったままだった。
「食事はもうお済でしょうか?」
「あ・・はい。今しがた・・・」
アルクの言葉にアルバートが答えた。
「でわ問題ないな。ちょっとルーチェを借りるぞ」
ルドルフはそう言うとツカツカと中腰のままのルーチェの側に行き、その腕を掴んだ。
「へ?」
素っ頓狂な声をあげたルーチェであったが、その途端に消えた。
サリーとタオも同時に消えていたのだった。
「も・・もちろんですが・・・どこへ?」
アルバートの言葉に返事をする者はすでにいなかった。
どういう事なのかと首をかしげながらアルクの方に振り返る。
「ルーチェはこれから魔力の訓練を殿下より受ける事になります。
私はケイトの警護の為、この部屋へ詰める事となりましたのでよろしくお願い致します。」
アルクの説明にアルバートは驚いた。
だが禁口令を布かれた事によってケイトの身を案じていたのも確かだった。
アルバートもケイトの身の危険は気づいていたのだった。
「アルク様が直々にケイトを守って下さるとは、こんなに心強い事はありません。
よろしくお願いします。」
丁寧に頭を下げた。
そしてカラスを伴って仕事に出かけて行ったのであった。
ケイトは訳もわからず事の次第を見守っていた。
ただ一つ不満な事もあって、いつの間にかむっつりとしていたのだった。
それに気づいたアルクが問いかけた。
「ケイトさん、どうかしましたか?」
「せっかく退屈な療養所から戻ってきたと言うのに、ルーチェを連れて行っちゃうなんてひどいわ・・・」
ケイトは不満を漏らした。
「そうでしたね。でわ私がお相手を致しましょう。
それとも私ではご不満でしょうか?」
アルクはにっこりとやさしく微笑んだ。
「い・・いえ・・そんなことは! そんなことないです。」
ケイトは真っ赤になりながら返事を返した。
「私は今後、毎日ここへ詰めますのでご心配はいりませんよ。
キースがいれば、もう二度とあのように怖い思いはさせませんとも。」
「私がアルク様に警護されるなんて、まだ何か危険でもあるのでしょうか?」
昨日の話からしても、何やら不気味な影が付きまとってる気がしてケイトは身震いした。
「必要があるから警備するのです。原因もわからず不安でしょうが、私を信じてお任せ下さい。」
自身に危険が迫ってる事など実感としてないケイトであったが、アルクが側にしてくれる事は嬉しい事であった。
「よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げたのであった。




