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至高の魔女  作者: みやび
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第34話

本格的なお調べとあって話しは長くなりそうだった。

全員がそれぞれ席に着き、質問形式で話は進められている。


ルーチェは自分の定位置が、どうにも落ち着かないでいた。

ルドルフの膝の上なのである。


さっきから頃合を見計らっては、ずるずるとそっと位置をずらして降りようと試みてみるが腰に回った腕が引き戻す。

そんな相手をキッと睨んでみてもにっこりと微笑み返された。


そんな事が何度か繰り返されて、とうとうルーチェも諦めたのであった。

ルーチェの中の王子様像がこの時点でずいぶんと崩壊していた。


符合する所といえば整った顔と姿のみで、その他はすべて理想とは大きく懸け離れたものであった。

夢から覚めて、現実の厳しさを思い知らされた瞬間であった。


「それで落石の時にもケイトさんの防御ですべて避けられたのですね。」


アルクが中心となって話が進んでいた。

今はケイトが尋問を受けていたのだった。


「そういえば後の調査で東の山腹にもわずかな魔力の痕跡が残っていたとの報告があったな」


ルドルフが調査報告との一致を確かめながら調べは進められているのだ。


「その絶壁の上には人工的な仕掛けの跡があったとの報告もあるのだが・・・間違いはないのか?」


『私のこの目が見間違いなどする訳ないわ。

それにあの上を飛んだ時、風に乗ってわずかな火薬の匂いもしたわ。』


サリーが答えた。


「人工的ですって? まさか・・・あれは地盤が緩んでいたんじゃないんですか?」


「その件についてはまったく気づかなかったのですね?」


「え・・ええ。危険だと判断してすぐに移動しましたわ。」


「それでその後は・・・森でテントを張って・・・・私は疲れて休んでいました。

ぐっすり寝込んでしまっていたので、ミーアが起こしてくれた時にはもう火の海で・・・」


「なんということだ。そんな恐ろしい目に合われたとは・・・さぞ怖かったことでしょう。そんな時に私が側にいられなかったとは残念な・・・」


おいおいアルク、ずいぶん私情が入っていると俺は思うぞ。


「ここまではルーチェもまったく同じなのか?」


ルドルフが急に話しをこっちに振ってきたので、驚いたルーチェは飲み掛けのお茶をこぼした。


「・・・・・・・・っ!」


その場にいた全員が一瞬息を呑んだ・・・・


ルドルフの高級そうな真っ白な上着が茶色に染まった。

ルーチェはポケットから出したハンカチでそれを必死で拭いたが茶色い染みは取れなかった。

叱られるのを覚悟したルーチェは上目遣いでルドルフの顔色を伺う。

生まれて初めてをこの3日ほどで立て続けに経験したルドルフはピクリと片眉を上げたが、もはや動じる事はなかった。


「絶壁に仕掛けられた細工もまったく気づかなかったのか?」


まるで何事もなかったかのように話しを続けた。

その時やっと全員がホッと大きな息をした。


「まるで気付かなかったわ。それで私もタオに起こされるまで火事にさえ気づかなかったのよ。」


『一番寝坊だったもんなぁ・・・』


「タオ よけいな事は言わないでいいのよっ」


「なるほど・・・」


タオの言葉がわかるはずないのにどうして? ルーチェは首をかしげた。

皆、それぞれの使い魔から通訳を受けたらしかった。


「それからこれが一番聞きたいことなんですが、お二人とも寝る前に雷に気付きませんでしたか?」


「さあ? 私は早めに就寝しましたので何も気づきませんでしたわ。」


「私も雷なんてまったく知らないわ。」


俺も一緒に思い出していた。

雷ねぇ・・・それは知らないが、寝る前に見たものと言ったら・・・白鳩だ!


『フリークだ! フリークが居たはずなんだ!』


おい皆、俺の言う事を通訳してくれよ。


「フリーク・・・・とは?」


『誰も覚えちゃいないが、従者のフリークがずっと一緒に居たんだ。

でも消えちゃったんだ。なんで俺しか覚えてないんだよぉ。』


「タオったらずーっとそんな事ばっか言ってるのよ。

この子は嘘を言うような子じゃないんだけど・・・よく寝ぼけるのよね。」


『夢なんかじゃないよ。あの日フリークの作った食事が絶対に怪しいよ。

あの中に何か入ってたに違いないんだ。』


「何か入ってたなら、なぜお前だけが覚えてるんだ?」


『・・・・俺だけが罰で飯ぬきだったんだ。』


「ププッ・・・罰で飯ぬきだー! 情けない奴だー!

さまーみろー!」


カラスの奴め・・・・


スイーッ・・・ バタバタ・・・グワシ


「ギャー! 痛いよー! 許してー!」


『お調べのじゃまをするんじゃないわよっ』


今度はサリーに鷲掴みにされていた。

どこの世界でも女って・・・・・怖いもんだと俺はつくづく思った。

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