第24話
その夜、アルバートさんはルーチェに星の話をいっぱい聞かせてくれた。
「ねえルーチェ、星の動きというのはこの世界の人々にもいろんな影響を及ぼすもんなんだよ。
一見なんの関係もないように思えるが、この世界の環境だって実は星の動きによってもたらされているんだよ。」
「へえ。たとえば?」
ルーチェは初めて聞く星の話しに興味を持ったようだ。
「例えば、この世界には太陽が2つあるだろう? 双子星とも言われているが、常に同じ位置にあるとは限らないんだ。長い年月をかけてくっついたり離れたりしているんだよ。
その位置によって光の量が違ってくるので作物の育ちや気象状況も違ってくるんだ。」
さすがに専門分野だとアルバートはがぜん饒舌になる様だった。
「それじゃあ、星を調べていたら不作や豊作なんかも予想ができるの?」
「そうなんだ。そういったことは繰り返されるので過去には必ず同じ様な事が起こっているもんなんだよ。
星がその位置に来たとき、過去に何が起こったか? 僕の仕事はそんなことを研究しているんだよ。」
「そっか、星の位置と過去の事を調べて未来のことが予想出来るのかぁ・・・
アルバートさんのお仕事ってすごく役に立つんだね」
ルーチェは尊敬の眼差しでアルバートを見ていた。
確かにこの分野においてはアルバートは尊敬に値する人物であるのは間違いない。
「星の動きはもうほとんど判っているから、後は過去と照らし合わせるだけなんだ。
過去に大きな事が起きたりするとね。かならずなんらかの文献や遺跡となって残っているもんなんだよ。
でもあんまり昔すぎると伝説や言い伝えになってしまってね。真実を知るのが難しくなってしまうんだ。」
「伝説なら私も知ってる! 至高の魔女の伝説!
この世界に破滅が訪れたとき、赤い星が至高の魔女を呼び、そして魔女は世界を救ったって伝説よね。」
ルーチェは手を上げて得意げに言った。
「そうだね。それはこの世界でも一番有名な伝説だからね。
だが、どんな破滅が訪れたのか? 魔女はどうやって救ったのか? 星が魔女を呼ぶってどういう意味?
謎のままなんだよね・・・・」
そう言われてみればその通りだ。
ルーチェは今までこの伝説にそんな謎がある事など考えもしなかった。
「すごいなぁ。アルバートさんのお仕事ってとっても難しそう・・・・・」
「そうなんだ。たとえ文献や遺跡が残っていてもその解明もなかなか時間がかかってね。」
もっと話を聞きたいルーチェだったが、そろそろ瞼が重くなってきていたのだった。
いつの間にか訪れた睡魔と闘っていた。
それに気づいたアルバートは話を切り上げ、ルーチェをベットへと促したのである。
ケイトはいいなぁ・・・・いつもこんな風に星の話しが聞けるなんて。
そんな事を考えながらルーチェは深い眠りに誘われたのであった。
実際のところ、ケイトやアルバートの妻などは星の話し等、興味もない。
しょっちゅう繰り返されるアルバートの話にはうんざりしている事などルーチェは知らないのであった。
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翌朝ルーチェが目覚めた時には、アルバートはもう仕事に出かけた後だった。
起こしてくれれば私もお見送りができたのに・・・・・・
朝からちょっぴり不機嫌なルーチェであった。
そして朝食を食べ終わったら、昨日とまったく同じ予定だ。
支度を整えたらセーラさんに付き添ってもらい療養所に向かうのであった。
今日のケイトは昨日と比べずいぶん顔色もよくなっていた。
バララッタをきっかけに、ようやく食事もとり始めたようだ。
まだまだ量は少ないものの、それだけでも大進歩である。
熱のほうもまだ微熱はあるものの、以前の様に急に上がったりという事もなく落ち着いてきたようだ。
ようやく回復に向かっていると言っていいだろう。
この調子ならケイトの帰りもそう遠くはない。
それもあって帰りのルーチェの足取りは軽かった。
そうして昨日と違うことと言えば、帰りにセーラさんの買い物に付き合って市場に寄った事だった。
セーラにしてみれば昨日の事もあり、ルーチェ1人に留守番をさせるのは心配だったのである。
市場はまだ少し時間が早い事もあり、商人たちは開店準備に追われていた。
半分ばかりの店がやっと開店したところの様で、買い物客らしき姿はまだ見当たらない。
いつもの賑わいより少し寂しいそんな市場で、セーラさんは慣れた手つきで次々と食材を選び出す。
そして買い物を済ませると手持ちの袋に入れていった。
俺はカサスがその袋に入れられた事をしっかり確認すると思わずしっぽを振っていた。
ルーチェとセーラさんはまるで親子の様に楽しそうに買い物をしていた。
袋がいっぱいになった頃、俺たちは買い物を終えて帰路に着いた。
もう少しでアルバートさんの住居に着くというその手前の廊下でセーラは立ち止まった。
「あら、大変。確かに買ったはずなのに・・・・
今夜のパイに使うはずのカボチャが入っていないわ。」
セーラさんは袋を覗き込んでゴソゴソと探す。
「きっと、さっきの店に忘れたんだわ」
戻ろうとするセーラさんをルーチェが止めた。
「私が取りに戻るわ。
だってセーラさんはそんなに荷物を持ってるんですもの。」
確かにセーラさんの手持ちの袋はいっぱいに膨らんで重そうだ。
「お嬢様にそんな事はさせられませんよ」
ルーチェの申し出を辞退しようとするセーラさんだったがルーチェは聞いちゃいなかった。
「大丈夫よ。すぐ近くなんだもの。
セーラさんは先に戻っていてね。」
ルーチェはそう言うと、その身を翻して来た道を駆けていった。
俺とミーアもその後を追って走る。
セーラさんは困った顔をしてその後ろ姿を見送るのだった。




