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至高の魔女  作者: みやび
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第19話

カラスが乱した部屋をメイドが片付けるのを待って、俺たちはようやくソファに落ち着いてティータイムを楽しんでいた。


入ってすぐのこの部屋にはシンプルで必要最小限の家具しか置いてないが、質のよさそうな大きなテーブルと椅子が設置され快適な居間になっているようだ。


「ねえアルバートさん。どうして九官鳥なのにカラスなの?」


ルーチェの質問はしごくもっともだ。

俺も聞いてみたいもんだよ。


「いやー、まだ子供だったんでね。九官鳥を見たこともなくてカラスだと思ったんだよ。」


アルバートはちょっと恥ずかしげに頭を掻きながら続ける。


「私が子供の頃はうちは農家だったんでね。両親が山からカラスを捕まえてきたんだと思ってたんだよね。

本当のところは、かなり無理して買って来てくれたらしいが当時の私は知らなかったんだよ。」


アルバートそれにしてはあんまりだよ。

だからと言ってそのまんまカラスって名前にしちゃうとは・・・・・


「私は子供の頃から星が大好きでね。天体望遠鏡で星ばっか見て育ったもんだから。

まあそれが役に立って今の仕事に繋がってる訳なんだが、それ以外は興味がないって言うか世間に疎いと言うか・・

妻にもよく物知らずだと叱られるんだよ」


専門分野以外はまったく興味がないという典型的な学者によくあるタイプだった。


「どうだー!俺の名前を聞いて驚いたかー?

カラスって言うのは強い男って意味なんだぞー!」


突然カラスが自慢げに胸を張って意味不明な事を言い出した。

アルバートが口に一本の指を当てて、内緒の合図を皆に目配せして知らせる。


そうか・・・かわいそうにカラスはそう誤魔化されているのか。

こいつも相当世間知らずな奴であるようだ。


ルーチェもちょっとカラスがかわいそうと思ったが、目を逸らして違う話題を探しすことにした。


「アルバートさんのお仕事って星を研究しているんですか?」


「そう。これでも天文学者なんでね。今ちょっと大事な研究をしててすごく忙しいんだ。

あまりかまってやれなくて申し訳ないんだが、これからまたすぐに仕事に戻らなくちゃいけないんだよ。」


アルバートは残念そうに時計を見ながら言った。


「それで奥に君とケイトの為の部屋を整えておいたよ。

ケイトは熱さえ下がれば戻って来れるけれど、まだ2~3日はかかるだろう。

それまでミーアの事も頼んだよ。」


「でもアルバートさん。私はずっとケイトの側にいるってルシア先生に約束したんです。

1人での行動は禁止されてるんです。」


「そうだったね。でも大丈夫だよ。メイドのセーラがいるからね。

なんでもセーラに頼むといいよ。」


そう言い終わるとアルバートは空になったカップをテーブルに置き、時間を気にしながらカラスを連れて仕事に出かけた。

ドアの外までアルバートを見送ったメイドのセーラさんが戻ってきた。


「お嬢様。こちらにお部屋を用意しましたから、ゆっくりくつろいでくださいな。」


笑顔で話しかけてきたセーラさんは40台後半のちょっと小太りで色白の人のよさげなおばさんだった。

料理が得意で働き者だが、噂好きでちょっとおしゃべりなのがたまにきずと言ったところだ。


「お嬢様方のために旦那様がご用意したお部屋ですよ。

ケイトお嬢様が戻られるまでは寂しいでしょうが、お1人でお使いくださいね。」


案内された部屋は適度な広さで見るからに少女が好みそうな部屋だった。

2つ並べられたベットには淡いピンクのカバーが掛けられ、窓にはかわいい花柄のカーテンが吊るされている。

猫足の小さなテーブルとイスもかわいらしい。

クローゼットには2人の荷物がきちんと整理されていた。


ルーチェは大きな目を見開いて部屋を見回した。


「とっても素敵なお部屋だわ!

大丈夫、私なるべく迷惑をかけない様にこの部屋でおとなしくしてケイトの帰りを待つわ。」


決意表明のようにルーチェは胸に手を当てて言った。


「足りないものがあれば、なんでも私に言ってくださいな。

それにしても東の森がすっかり消えちゃうなんてねぇ・・・・

なんてすごい魔力なんだって城内では今、その噂でもちきりですよ。

落ち着いたら私にもぜひ、その話を聞かせてくださいね。」


そう言いながらセーラさんは食事の支度に取り掛かる為に仕事に戻って行った。

すこぶる乙女チックな部屋で俺達はようやくゆっくりとくつろぐ事ができた。


『城内の人たちが俺達の事を見てたのはそんなに噂になってたからかぁ・・・・

ミーアの毛並みはどうやら関係なかったようだな。』


俺は隣のミーアを見ながらチクリと皮肉ってやった。

ミーアはプイッと横を向いた。


「まさか森が消えちゃうなんてねぇ。私たち叱られちゃうのかしら?

勝手に森を消しちゃったりして、まさか後で損害賠償とか来たらどうしよう。」


『森はすでに燃えてたんだから損害賠償はないんじゃない?

むしろ消火費用が助かったくらいだろうしさ』


『あーやだやだ。貧乏人はすぐお金の話なんだから・・・』


『なんだと?ミーアはしばらくルーチェの世話になるんだから少しはわきまえろよ。』


『何言ってるのよ。もとはと言えばタオのせいでしょうがっ!

ベットを毛だらけにして他の患者に迷惑だからと療養所を追い出されるなんて。

私まで同じ様に扱われて恥ずかしいったらありゃしない。』


『だって冬毛が抜けるのは生え変わりの季節なんだからしょうがないだろ?』


『普段からしっかり毛づくろいをやってないから、そんな事になるのよ。

その艶のないパサパサの毛並みをどーにかしなさいよっ!』


「そうね。今一番心配すべきはケイトよね。

そうだ明日はセーラさんに頼んでケイトのお見舞いに行きましょうよ。

毎日ケイトの様子を見に行く位は許されるんじゃないかしら。」


ミーアは嬉しそうにうんうんとうなずきながら、しっぽを振った。

どうやら今夜、俺は風呂に入れられブラシを掛けられるのは間違いないらしい。

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