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至高の魔女  作者: みやび
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第18話

フリークが夢だった? そんなはずはない。

絶対になにかが変だ。


でも誰も俺の言う事をまともに聞いてはくれなかった。

記憶もない知らない人の話なんてそんなものなのかもしれない。


ケイトはどうなんだろう? 意識が戻ってもやはり皆と同じなのかもしれない。

俺の記憶の中にだけフリークは存在した。


でも何故なんだ?

俺はあの日の事を思い出そうとした。


あの夜、俺は腹が減りすぎてよく眠れなかった。

そう。夕食ぬきの罰をくらったからだ。


あの子リスのせいで・・・・

今考えても腹が立つぜ。


フリークの使い魔の白鳩が帰ってきてたっけ。

てっきりアルバートへの報告だと思い込んでいたのに違ったんだ。

あれはどこへ行っていたんだろう?


そういえば、あの日の夕食はフリークが作ったものだった。

シチューとサラダとパンだけの簡単なものだ。


ルーチェとケイト、それからミーアもうまそうに食べていた。

俺だけが食いっぱぐれたのだ。


あの中になにか入っていたのだろうか?

あの日、俺だけが違った事といったらそれくらいだ。


ぎゅるぎゅるるー・・・・・・

俺の腹の鳴る音だった。


そういえば俺はあれっきり何も食べていなかったのだ。

そこへおいしそうな匂いがしてきた。


意識を取り戻したルーチェに食事が運ばれてきたのだった。

俺はそっちに気を取られ、それまでの思考をすっかり忘れてしまうのだった。


しょせん猫の思考なんか、そんなもんだぜ。


---------------------------------------------------------------------------------


翌日、俺たちはアルバートの後をついて城内を歩いていた。

ルーチェは昨日ゆっくりと療養所で休養をとって、すっかり元の元気を取り戻していた。


その手足にあったかすり傷も回復魔法で、跡形もなく消えている。

ルーチェにとって何もかもが目新しいのか、キョロキョロ周りを見回しながらも迷子にならない様にアルバートに付いていく。

俺とミーアもその後ろを付いて歩いていた。


城内はとてつもなく広かった。

沢山の塔が立ち並び、それぞれが中央の一番大きな建物に回廊で繋がっている。

医療塔や書庫塔、訓練塔、住居塔などその他いろいろ建物によって用途が決まっているらしい。

中心となる中央の一番ばかでかい建物が皇居と、この国の中枢となる政務が行われている場所だ。


中庭のひとつには出入りの商人が店を開いて賑わっていた。

ちょっとした市場のようだ。


行き交う人の数もはんぱない。

皆それぞれの使い魔を引き連れているのだから、いろんな動物たちの姿も目にする事ができる。


この城内だけでも十分に必要な物は手に入れることは可能らしい。

ルーチェの住んでる村よりもはるかに便利な生活ができる規模だ。


城から外に出れば、更にもっと広大な城下町が広がって、世界中からいろんな人や物が集まってくるというのだからこの都にはどれだけの人が暮らしているのだろう。


とは言え、この城内に住居を与えられるのは官僚でもかなり高い立場でないとありえない事だ。

あんな小さな村の出身のアルバートがその1人なのだからどれだけ優秀なのかを物語っているといえよう。

村一番の出世頭というのは間違いのない事実なのであった。


歩きながらちょっと気づいた事があるんだが・・・・

なんだかすれ違う人たちが立ち止まって俺達の方をチラチラ見てはヒソヒソと何かを囁きあっているんだ。


『田舎者がそんなにめずらしいのか?』


俺は無視することにした。


『タオ・・・ あんたじゃないわ。私の方を見ているのよ。

この毛並みがあんまり素晴らしいから、道行く人も振り返って見とれているのね。』


ミーアがピンとしっぽを立てポーズを付けて歩く。

俺は呆れて言い返す言葉もなく黙って付いていった。


「さあ着いたよ。ここが私の住居だ。入りたまえ」


扉を前にして立ち止まったアルバートは、ドアを開けて俺達を招き入れた。


「おじゃましまーす」


ルーチェが元気よくそう言いながら部屋に入った。

俺とミーアもその後に続いた。


「猫だー! 猫がいるよー!

きゃー助けてー! 食われるー!」


バタバタ・・・ガチャン!

バタバタッー・・・ドスン!


唖然とした俺達は入り口で固まっていた。


九官鳥が怯えて飛び回っていたのだ。

脈略もなく飛び回ったせいでテーブルの上の一輪挿しが割れ、壁に掛けてあった絵画が落ちていた。


「大丈夫だよ。カラスこの猫たちは君と同じ使い魔なんだ。君を食ったりはしないからね」


アルバートは穏やかな口調でカラスを落ち着かせるように言った。


「本当か?本当に食ったりしないんだな?

ああよかった。俺ははてっきりノラ猫が忍び込んで来たのかとあせったぜー」


九官鳥はアルバートの肩の上に着地した。

まだ黒い羽をパタパタと広げている。


「紹介しよう私の使い魔だよ。カラスと言うんだ。」


『カラス・・・?』


どうやらアルバートのネーミングセンスはルーチェ以下であるらしい。


『失礼ねぇ。私は高級食材しか食べない高級猫なのよっ

あんたみたいなまずそうな鳥食べる訳ないでしょ!』


ミーアのこだわりはそっちなのか・・・・


ミーアだけでもうんざりだと言うのに、このうるさい九官鳥まで一緒だとは!

俺はこれから先の暗い未来が見えた気がした。



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