第13話
ケイトは意を決して呪文を唱え始めた。
ミーアが毛を逆立ててそれに答える。
しかしケイトは昼間あれだけの魔力を使って消耗している。
迫り来る黒煙をなんとか押さえてはいるが、炎まではなかなか押さえきれてはいないようだ。
炎は一進一退を繰り返しながら、それでもじわじわ輪を縮めるようにして迫ってきている。
『ルーチェ! 何をしているんだ!』
俺は毛を逆立てて準備はできている。
「でも・・でも私、今まで失敗ばかりだもの・・・」
ルーチェは二の足を踏んで戸惑っているようだ。
「だって私はできそこないだから・・・」
『ルーチェ! 呪文を唱えるんだ!』
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そうなんだ。今までルーチェの魔法は失敗ばかりだ。
こんなに自信がなく、萎縮してしまってるなんて・・・・・・
でもそれはルーチェのせいじゃない。
俺のせいなんだ。
ルーチェはけっしてできそこないなんかじゃないんだ。
だってルーチェの魔力は強すぎるんだ。
普通、使い魔は主の魔力を何倍にも増幅するものなんだ。
だが俺は今まで増幅なんかしたことない。
覚えているかいルーチェ?
俺が使い魔になって初めて魔法を使った時の事を・・・・
落ち葉で焼き芋を焼こうとしたときのことだ。
発火の魔法を使ったとたんに、落ち葉どころか芋ごとすべて灰になったのを。
あれから俺は考えたんだ。
ずっとルーチェの魔力を抑えるように分散させる方法を。
この黒い毛でルーチェの魔力を吸収し、あめ色の毛に流すようにとね。
ずいぶんと練習したんだぜ。
それでもルーチェの魔力はいつだって俺が思うより毎回勢いを増していくんだ。
うまくいい具合に調節してやれないんだよ。
いきなり、猛烈な強火だったならどんな料理だってしっぱいするだろう?
あのりんごやカボチャのときだって、俺はせいいっぱい魔力を弱める為に分散したんだ。
もっと黒い毛が多ければ、強すぎるルーチェの魔力をもっと大量に吸収してやれるというのに、
あいにく俺はサビ猫だ。
見た目では、あのルシア先生だってわかりはしない。
だって使い魔は魔力を増幅する為のものだもの。
まさか、あの毛を逆立てるポーズで魔力を弱めているなんて思ってもいないだろう。
『きゃ~~っ ケイトしっかりして!』
ミーアがかなきり声をあげた。
よろめいたケイトがその場にバタリと崩れ落ちるように倒れたのだ。
まだ回復していないケイトの魔力が長時間続くわけもない。
前面に立って防御魔法を張っていたケイトは意識を手放した。
ミーアがケイトをかばうようにその上に重なった。
防御を失ったケイトとミーアに炎は容赦なく襲いかかろうとしていた。
「ケイトッー 危ない!!」
その瞬間ルーチェはケイトに駆け寄り、呪文を唱えたのだった。
興奮したルーチェは力の限り、自分の魔力を一気に放出したのだ。
この時、俺は全身で初めてルーチェの魔力を増幅した。
目の前が真っ暗になり、俺の意識もなくなった。




