第11話
夕方になって、俺たちは森の中ほどで周りの木々を利用してテントを張った。
フリークは今夜の食事作りに忙しそうだ。
昨夜の町で買い込んだ材料でシチューを作っている。
シチューが出来るまで、俺たちはしばしの休憩だ。
ケイトとミーアは昼間の疲れが出たのかテントで休んでいた。
あれだけの魔力を使った後なのだから当然だろう。
テントから少し離れた切り株にルーチェは座っていた。
そしてひどく落ち込んでもいた。
「ねえタオ、私何もできなかったわ」
ルーチェは俺の背をなでながら言う。
「お前はちゃんと準備していたというのにね。
それなのに私は驚いて体が固まったように動かなかったのよ。」
『誰にだってそんな事はあるさ。あんなことはめったとある事じゃないしね』
「そうね。それでもケイトはちゃんと皆を守ったわ。
私がもっとしっかりしていればあんなに負担をかけなくて済んだのに」
『ルシア先生だって言ってたじゃないか。よけいな魔法を使うんじゃないって』
「それでも。それでも何か出来たはずよ。
ケイトの負担を少しでも助けてあげる事ができたはずなのに・・・・
そんな自分が情けないのよ。」
ルーチェは肩を落としてうなだれていた。
俺はどう慰めていいのかわからなかった。
カサカサッ・・
かすかな音にふと目をやると一匹のリスがいた。
少し先の木の上だ。
よく見ると数匹のリスが木を登ったり降りたりしている。
どうやら上に巣があるようだ。
ピピッピピッ・・・
上を見上げると小鳥たちの声も聞こえる。
耳を澄まして目をこらせば小さな生き物たちの息吹が聞こえてくる。
この森はまるで命の源のようだ。
俺はルーチェの側を離れそっと近づいた。
ルーチェは動物が大好きだ。
子リスがドングリを抱えて落ち葉の下に隠そうとしていた。
そうだ! こいつを持って帰ればルーチェが元気になるかもしれない。
俺は音もなく、そっと近づき・・・・
子リスに飛びついた。
驚いた子リスはすばっしっこく逃げようとしたが、俺の運動神経にはかなわない。
しっかりと前足で押さえ、首根っこを咥えた。
捕獲成功だ!!
これでルーチェも元気になるに違いない。
俺は意気揚々と子リスをルーチェの元に持って帰った。
「タオッ!!」
落ち込んでたルーチェが今度は烈火のごとく怒りだした。
「なんてことするのっ!
かわいそうにケガをしてるじゃないのっ」
ルーチェはケガをしてぐったりしている子リスを抱きかかえ、あわてて治癒の魔法をかけた。
みるみる傷がふさがり、意識を取り戻した子リスはきょとんとしてルーチェの手の平に納まった。
「よかったぁ」
ルーチェにやっと笑顔が戻った。
「本当にごめんなさいね。痛かったでしょ? 許してね。」
そう言うとそっと子リスを地面に置いた。
「さあ。家族の元にお帰り。」
『なんだよう。せっかく捕獲したのに逃がしちゃうなんて。』
ルーチェはそう言った俺をキッと睨んだ。
「タオ 子リスにひどい事をした罰で今夜はご飯ぬきよっ」
なんでそんな事になるんだよ。
俺は・・・俺はルーチェの笑顔が見たかっただけなのに。
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皆がとうに寝静まった頃、俺はテントを抜け出した。
昼間は騒がしかった鳥や虫たちさえ今は寝ているのだろうか。
夜明けはまだかなぁ。
腹が減って寝られやしない。
月の光はもうわずかに残っているだけだ。
早々と白夜が迫ってきていた。
俺は空腹をこらえてぼんやり空を見上げ、朝を待ちわびていた。
パタパタ・・・
西の空から白鳩が飛んで来た。
あれはフリークの使い魔だ。
そうか昨日どこかへ飛んで行ったよなぁ。
今頃帰ってきたのか・・・
それにしても腹が減ったなぁ。
早く朝飯の時間にならないものか。
夕方ルーチェが落ち込んで座っていた切り株の上で、今は俺が落ち込んでいたのだった。
このままうずくまって朝を待つしかないようだ。




