第10話
道の半分も塞ぐ落ちてきた大きな岩石、なぎ倒された大木・・・・
辺りの景色はさっきまでと一転していた。
どれくらい時間が経ったのだろう・・・・
ハアハアと息をきらしてフリークと御者が走って来た。
急いで谷を駆け上がってきたのだろう。
砂煙の中、2人は目をこらす。
ケイトとルーチェが抱き合うようにそこに佇んでいた。
そこだけ何もなかったかのようにしーんと静まり返っていた。
落石は俺たちの周りだけを避ける様にして落ちたのだった。
ミーアの自慢の漆黒の毛が逆立ってまだパチパチと音がしている。
ケイトが防御魔法を放ったからだ。
「よかった! お二人ともご無事のようだ。」
「お怪我もなくて、本当によかった」
信じられないというように驚いた顔で2人の元に駆け寄る。
それからのフリークは手際がよかった。
魔法でなんとか馬車が通れるほどの道を確保すると、
ルーチェとケイトを導くように馬車に乗り込ませた。
「どうやら先日の大雨で地盤が緩んでいたようですね。ここは危険ですから早々に移動しましょう。」
そうして馬車を走らせた。
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馬車の中で時間が経つほどに2人も落ち着きを取り戻してきたようだ。
「それにしてもケイトはすごいわ。
咄嗟にあれほどのことができるなんて」
「たまたま運がよかったのよ。もう少し気づくのが遅かったら無事ではいられなかったわよ。」
本当にそのとおりだ。
そう思うと身震いをするルーチェだった。
「それにしてもケイトさんの魔力はすごいですね。あれほどの落石をすべて防御できたのですから。
それに使い魔もすばらしくみごとな黒猫ですねぇ」
フリークがケイトの膝の上にいるミーアを見ながら言う。
「ええ。ミーアと出会えたことはとても感謝しているわ。
お父様が買ってくださったのだけど、これほどみごとな漆黒の黒猫はなかなかいないわ」
ケイトがミーアをなでながら答えた。
『やはり、血統よね。血筋がいいと毛並みもうんと違うのよ。
私はケイトの魔力を10倍にでも増幅してみせるわ。
普通の猫ならせいぜい5~6倍ってとこでしょうけどね。』
褒められたミーアは鼻高々だ。
「これほどの魔力を持っているとなると、ケイトさんのお父様もさぞ将来が楽しみな事でしょうねぇ。」
感心したようにフリークは言った。
「そうよ。ケイトは学園でもトップの魔女なのよ。本当にすばらしい力を持っているのよ」
ルーチェはどんなにすばらしいかを大げさなジェスチャーを沿えてフリークに伝えた。
そんなケイトと親友であることが自慢でもあった。
『ケイトもお父様の血筋を引いてとても優秀な魔女だもの。私はそんなケイトにふさわしい使い魔なのよ。』
ピンとしっぽを立ててミーアが言う。
確かにミーアの艶々の漆黒の毛並みはどんな黒猫より美しい。
魔力の使い手の力を大きく作用する使い魔である。
今回の件はミーアの実力が大きく発揮された事は間違いない。
自分の実力を知っているからそこの自慢なのである。
そんなミーアを俺はうらやましくないと言うと・・・・嘘だ。
自分の1/3ほどもない黒毛を眺めながら思う。
目が覚めたら全身がこの色で覆われていたならと何度願ったことだろう。




