第9話
2日目 空は晴れ上がっていた。
宿で朝食を取った一行はさっそく馬車に乗り込み出発した。
昨夜はゆっくり休養をとったおかげか、ルーチェもケイトもすっかり元気をとりもどしている。
確かに馬車にも慣れたのか、山道を走っているというのに、昨日までとうって変わって2人とも余裕があるようだ。
フリークも加わっての馬車での3人の会話もはずんでいる。
「ねえフリークさん。今夜の宿も大きな町なんですか?」
ルーチェはまだ昨日の町の散策が出来なかったことが心残りであったらしい。
馬車に乗り込む前に見た広い通りに並ぶたくさんの店のショウウインドウを思い出す。
どれもこれも、村では見たことのない華やかさであった。
「いや、残念ながらここから先は帝都までほとんど人里らしきものはないんですよ。
この山を越えると大きな森がありましてね。今夜のところはその森でのキャンプとなります。」
フリークの言葉に、露骨にガッカリとするルーチェであった。
「ルーチェ。お楽しみは帝都まで取っておきましょう。帝都はもっとすごいのよ。
市場だけでも私たちが住んでる村くらいの広さはあるわ。」
ケイトはルーチェを励ますように肩を叩いた。
「まあケイト。そんなに広いと私迷子になってしまうわ。」
「大丈夫よ。なぜなら私は帝都観光ガイドブックを持っているのよ。
行きたいところがいっぱいあるわ」
ケイトは自慢げに鞄から大きな雑誌を取り出した。
無計画で行き当たりばったりのルーチェとは違いケイトは綿密な計画を練るタイプだ。
二人の性格はまったく真逆と言っていいだろう。
だからこそ気が合うのかもしれない。
それからの二人は雑誌を見ながら、おしゃれやグルメ等の会話に明け暮れた。
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少し開けた場所に出ると馬車は止まった。
まだ山の中腹ではあるがここで昼食だ。
馬車から降りた二人は山の新鮮な空気を思う存分堪能した。
後ろは絶壁がそびえてはいるが前方は開けていて展望はいい。
川のせせらぎも聞こえる。近くに川も流れているのだろう。
「お嬢様方はここでゆっくりと昼食をお楽しみ下さい。」
フリークが簡単なイスとテーブルを用意しながら言う。
「私は水の調達もありますので・・・・
この谷を少し下った所に川があるので、そこで馬を休ませます。」
一緒に昼食をと誘う二人の厚意をフリークは丁寧に辞退した。
そして御者と共に馬車をひき、谷を下って行った。
残された二人は用意されたテーブルに宿で作ってもらった弁当を広げる。
俺とミーアの分もちゃんと用意されているとこなんざ、フリークあっぱれだ。
俺は弁当を覗き込む。
予想通りカサスがぎっしり詰められていた。
あれだけの港町だもの。
魚がたっぷりのはずと期待してたんだ。
「タオったらお行儀が悪いわよ。ちゃんとお祈りが済んでからよっ」
一口ガブリと食いついた俺はルーチェに叱られた。
しっぽを巻いて反省の色を見せておく。
ミーアがそれを見てざまあみろと言うようにフフンと鼻で笑う。
少しカチンときたが無視だ。
そうしてほぼ食事が済んだ頃だった。
ピクッとわずかな音に俺とミーアの耳が動いた。
コロコロッ・・・・
俺の足元に拳大の石ころが転がってきた。
全員が上を見上げる。
いくつかの石がコロコロと動いている。
落石だー!
俺とミーアは全身の毛を逆立てる。
咄嗟にケイトは立ち上がって呪文を唱え始めた。
ガラガラッと凄まじい音を立てながら大量の石が降ってきた。
辺りが一瞬真っ暗になった。
ドドドッー!!
地響きのような音が鳴り響いた。
すごい砂煙が立ち上がりあたり一面、何も見えはしなかった。




