プロローグ
北の夜空のかたすみに突然、明るく光る赤い星が現れた。
まるで新しい星が生まれたようにそれから十日間赤い星はどんどん明るくなっていった。
しかし、それは、星の誕生ではなく、死の瞬間のきらめきなのである。
永遠と思われるほど永くそこに存在した星はその最後をひときわ美しく、
まるでキャンパスを描くように長く尾を引く無数の流星群でその夜空を飾った。
星の死を意味する爆発の結果、また新しく生まれる星へと未来へ向かっての可能性も作り出そうとするかの様に。
その自然の作り出した芸術は長く力強く続いた。
その後、100日ほどかけて光は、だんだん弱くなっていった。
-----------------------------------------
教会の広場には人がひしめきあっていた。すべてが天を見上げているのだった。
この教会はけっして狭くはない。いやむしろ広すぎるといっていいほどである。
なぜなら、この世界で一番の大国である中央帝都の城内に設置された中心となる教会だから。
信心深い先々代の皇帝がその権力と財力をもって城と隣接して建設した贅を尽くした造りであることは言うまでもない。
皇帝みずから朝の礼拝はもとより政にもこの教会は大きく貢献しているのである。
ゆえにこの教会は一般の者の立ち入ることは許されない。
この広大な広場にひしめき合う人々というのはすべて聖職者である。
赤い星が突然現れた10日前より、世界中からぞくぞく集まった能力の高い聖職者達である。
遠い国に住む者はどんなに急いでもまだ着いてもいないだろうに、これだけの人が集まるというのはただ事ではないことを思わせる。
そんな聖職者たちの真ん中に皇帝はいた。そして天を見上げていた。
その横には王妃と幼い王子・・・皇室たちを取り囲むように重臣達と護衛兵が垣根を作っている。
「探せる・・・か?」
誰に話しかけるでもなく、ほとんど天につぶやいただけに見えた皇帝だった。
それに答えたのは一番長であろう老齢の聖職者であった。
「ここにいる者たちは皆、自分のなすべき事をわかっている者ばかりです。かならずしや・・・探し出してみせましょう。」
その老齢の聖職者の人徳に現れた暖かいまなざしに幾分か不安が払拭されたようである。
「そうか。頼んだぞ」
「御意」
聖職者はうやうやしく膝をつき礼をとる。
短いやりとりであった。
それから3日の間に集まった聖職者達はそれぞれ旅の支度を整え世界中に散らばる様に旅立っていった。