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第8夜 ーmidKnight taleー




「え…孝太郎来てないんですか…」



クラスの担任は出席簿の孝太郎の欄に×と記入していた。



「先生!!あのっ、あいつから連絡は?」


担任はビクビクしながら答えた。



「あぁ…怒らないで…孝太郎君には放課後プリントを家に届けに行くから…」



見た目から何やらなんて頼りなさそうな担任なんだろう…


(ぜってー任せておけなそう…だな)



「いいっすょ先生。プリントは俺が届けに行きますんで!!」



「あぁ…はぃい〜!!」


そう言って担任は過剰に体をビクビクさせながらプリントを雅人に渡した…







「ねぇねぇ、雅人君!!2人で孝太郎君の家行こ!!」


「ん…あぁ」




放課後まで机で寝ていた雅人に杏樹は話しかけた…



朝あれだけの事があったのに杏樹の元気さは変わりがない。


(それが…杏樹のいいとこなんだけどなっと!!)




雅人は勢いよく立ち上がると鞄を持って歩き出す。



「モタモタしてっと置いてくぞ、杏樹」



「待って待って!!雅人君!!」



その場にいたクラスの一同はラブコメに等しい会話をただ唖然と聞き入るだけだった…









「…と、確か孝太郎の家はここだよな」



どこにでもありふれた中流家庭の家である…


一見したところかの〔未来から来た猫型ロボット〕が滞在する〔の〇太君〕の家のような作りである…


まぁ孝太郎も眼鏡だから若干理にかなっている…と思う



ピンポーン



ありふれたチャイムと共に勢いよく出てきたのは孝太郎ではなく…孝太郎の母だった。




「孝太郎!!…あっ…雅人…君…?雅人君!!孝太郎はどこ!?孝太郎が…孝太郎がいないの!!」



孝太郎の母親は酷く慌てている様子である。

雅人の腕を必死に掴むその姿は何か異様なものだった…



「ちょっ…ちょっと…オバサン!!どうしたんですか!?孝太郎は…」


我に返ったのか孝太郎の母は一旦落ち着きを取り戻した。



「孝太郎が…昨日から帰ってこないの…雅人君!!孝太郎がどこ行ったか知ってる…?」



孝太郎が…帰ってこない…

あのあと俺は孝太郎を帰してそれで……


そこからは分からない…



雅人は孝太郎の母に叫ぶ。


「オバサン…俺…アイツを探してきます!!杏樹っ!!」



「う、うん!!」



そう思うより先に体は動いていた…

胸が熱くなっていく…


(くっそ…嫌な予感がする…孝太郎…)



雅人の頭には一つの考えが浮かんでいた…



奴らが…


ヴァンパイアの連中が孝太郎を…



確信は持てない…だか今は確信以上にそれしか考えられなかった…



雅人は息の続く限り走りつづけた…







あれから三時間あたり…雅人は街の隅から隅までいたるところを走りつづけた。


だけど…孝太郎の姿はどこにも無く気がつけば自分のアパートへと帰路を歩んでいる自分がいる事に気づいた…




「くそ…情けねぇ…」


自分の不甲斐なさに頭がくる…


(オバサンになんて言えば…俺があの時…孝太郎を…)



そんな雅人に杏樹は…



「…雅人君は頑張ったよ…ね…元気出そうよ…」


杏樹の声が尚も雅人に響いた…


「俺が…アイツを帰さなきゃ…こんな事にはならなかったんだよな」



「雅人君は…悪くない…!!」



杏樹は大声でそう叫んだ…



「みんなに迷惑かけたのも私だし…それにこんな事になったのも…元はといえば…私が悪いから!!」



(ゴメン!!)


なぜかその言葉が頭に浮かんだ…


そう言ったのは他にもなく…孝太郎だった…




(や〜いや〜い!!悔しかったら取り返してみろ〜)


(やめてよ〜それは大事なものなんだから!!)




懐かしい光景が思い出されていく…



これは確か…俺と孝太郎が初めて会った時…

はは…そうだったな…孝太郎がこの街に引っ越して来て溶け込めないんで近所の悪ガキにいじめられてたっけ…




(お前ら!!弱いものイジメはやめろ!!正義のヒーロー 雅人が許さないぞ!!)



あ…これって俺か…恥ずかしい事言ってんな…




(誰だよ!!お前!!生意気言ってるとお前もいじめ――ぐはっー!!)



いや…そこまでやらんでも…



雅人の目の前では子供の頃の雅人が半虐殺行為を繰り広げていた…

悪ガキの一人はすでに痙攣しているようだった…



うわ…我ながらやばいな…



(お前らにこの雅人様がやられるかっての!!)



(あの…)



(ん…?)



孝太郎の声に雅人の動きは止まった



(あの…ありがとうございます!!僕この前ここに引っ越して来たばっかりで…友達もいないからいじめられてて…)



雅人は孝太郎の顔をまじまじと見ていた…


そして…



(じゃあ俺が友達第一号だな!!宜しくな!!俺雅人!!え〜と…お前の名前は…?)



雅人は静かに右手を差し出した



(孝太郎!!僕孝太郎って言うんだ!!よろしく…えと…雅人君…)



徐々に遠慮がちになっていき声が小さくなる孝太郎…



(お〜い!!ちゃんと眼を見てしゃべろよ!!あと…君はいらないよ!!ほら!!孝太郎…握手握手!!)



雅人は孝太郎の微かに震えた手を取り握手を交わした…



(ゴメン!!雅人!!)



これが初めて雅人に言ったゴメンだった…




「孝太郎!!」



雅人は立ち上がった


「俺…まだアイツのゴメンを充分聞いてねぇ!!

こんなとこで終わらせれねぇんだよ!!」



それは理由として全く幼稚なものだったが…雅人にとっては充分なものだった。

雅人の拳に再び力が入る…



「まだ…まだ諦めてたまるかっての!!

杏樹!!孝太郎を探すまで俺は――」



その時だった…

雅人の声はそれによって中断される



激しく窓ガラスの割れる音がした…


(この音は…俺のアパートからか!!)



雅人は全力で走る…




ドカッ!!!



雅人は思い切り玄関のドアを蹴り込んだ…もはや鍵などゆっくりと開ける猶予などはない!!



ドアを蹴り破り居間へと土足のまま走り込む…


そこには…



「よぉ…遅かったじゃないか…」



茶髪で挑発的な眼をした男…そう…あの日雅人を襲ったヴァンパイアが悠長に座っていた…



「アアアァァァー!!」

雅人は真っ先にそいつへと拳を走らせた…



しかしそれは届く事無く雅人は突風のような風の固まりに押し返された…



「ぉわあぁー!!」



雅人は思い切りガラス戸へと体を叩きつけた…


「雅人君!!」


杏樹は急いで雅人へと駆け寄り同時にヴァンパイアを睨みつける…



一方…茶髪のヴァンパイアは突風を起こしたとされる背中の翼を羽ばたかせながら余裕の表情をしている…




「まぁまぁ…そう怖い顔するなよ…狼のお姫様!!」



「……!!なんでそれを…」



「なんでって…バカだなぁ…バレてないとでも思ってたとか!?

俺らヴァンパイアは君を追ってきたんじゃないかぁ〜。

まぁ正確には君のその刻印を追って…だけどね…」



「こんな物のために…あなた達はこんな罪もない人達を…」


杏樹は涙ながらにヴァンパイアへと叫んだ。



その瞳に怒りが宿る杏樹とは逆にヴァンパイアはいまだ余裕をなして指を左右に振っている…



「勘違いしないでくれよ…君が思ってるよりもその刻印は恐ろしくも素晴らしい物なんだょ…?今に君にもハッキリ分かるさ…

文字通りね…。

まぁヴァンパイアは君のその刻印を狙ってるけど俺は違うんだ…

俺はそこの男に用事がある…」



と、笑い越しに杏樹をあざけ笑う…



「君に興味がわいたって言ったのは覚えてるよね…雅人君?」



「たいそうなご指名だな…化け物野郎…」



吐息がかすれて意識が朦朧としながらも雅人は精一杯の声を出して答える…



そんな姿にヴァンパイアは面白そうに苦笑する…



「これ…な〜んだ?」


ヴァンパイアがある物を指でつまみ上げた…


それは他でもない孝太郎の眼鏡だった…


すでにフレームが曲がりレンズが割れてるが雅人にはすぐ分かった…



「時間切れ〜正解は眼鏡でした〜」



「てめぇ…それ…どうした…」


「人質っていうんだっけ?こういうの?」



「くそやろう…!!孝太郎をどこにっ…!!」



「まぁそれは雅人君の心構えしだいってやつだね」



「ふざけんな!!」



怒りを言い放ち雅人は再度拳を放つ!!



「全く…」


再び突風を発して雅人を近づけない…



ヴァンパイアはその羽を部屋全体に広げ宙に浮いた



「雅人君のその力はどこから来るのやら…気になってしょうがないね」



あくまでもヴァンパイアは笑って雅人を見る



「さて…一足先に向かうとしようかな。俺は君を待ってるよ!!」



「てめっ…!!まだ話はっ…!!」



激しく吹き荒れる突風…ヴァンパイアはその場から姿を消していた…



「くっそ!!あのやろう…休んでる暇はねぇ!!」



「雅人君!!待って…」


必死に雅人の腕を掴み止める杏樹。



「悪い…杏樹。俺、孝太郎のやつを…あ…杏樹…?」



何かが変だった…その場の空気…空間そのものが異質のものとなっている…



「杏樹…杏樹!!」


杏樹は雅人の腕から手を離しそのまま倒れこんだ。


「ゴメンナサイ…なんか…体が変なの…」


すぐさま体を起こし上げ額へと手を当てた


通常考えられる熱ではない…まるで体の中から沸騰してるようだった…




そして…まがまがと赤黒く輝く首もとの〔刻印〕




「近づいてるって事か…刻印の解放ってやつが…」



それだけは雅人にもハッキリと断言できた…もう時が近づいてると…



「そう…みたい…ゴメンね…こんな時に…」



雅人は大丈夫とだけ伝えた。




強がりだった…どうしようもない状況には変わりない…時はどちらも確実に迫ってきている…



「私…大丈夫だから!!行こう…孝太郎君、待ってるよ!!」



困惑する雅人に声をかけたのはほかでもない…杏樹だった。



「杏樹…お前」



足は小刻みに震え立ってるのもままない状態だろう…

それでも杏樹はいつもの笑顔で雅人を見つめた



「ね…私頑張るから!!」



(なんで…くそっ!!)


それ以上言葉が続かない…


だけど…



「しっかり掴まってろよ!!杏樹!!」



「うんっ!!」



雅人は杏樹を背中に乗せ走り出す!!







外を出ると異様な光景が空へと広がっていた…



「これ…は…」



空一面へと広がる漆黒の翼たち…



「ヴァンパイアが…こんな…」



そいつらは牙をとがらせ群れをなしてひっきりなしに空を飛び交い獲物を探していた…



「なんで…こんな…」


雅人は絶望する



「雅人君!!前!!」


「えっ…おわっ!!」



一匹のヴァンパイアがこちらに気づきその長い爪に狂気を込めて襲ってきた。



「…んのやろっ…!!」


左へステップしてようやく交わしたが反撃をする事は出来ない…


杏樹を一人にすればそれこそ攻撃どころではない



(この状況…どうすれば…)



気がつけば辺りには二匹のヴァンパイアが取り囲んでいた…


「シャアアアァー!!!」


間もなくそのうちの一匹が襲いかかる。



「それどころじゃ…ねぇんだよ!!!くそったれ!!」



雅人はタイミングを合わせ蹴りを浴びせる!!



見事蹴りが決まりヴァンパイアは雅人の足元へと倒れ込む…


(よし…このまま!!)



ヴァンパイアは一瞬怯むが隙を作ることなく雅人の背面から飛びかかろうとした…



「これでっ!!――っな!!」



先ほどと同じく蹴りを繰りだそうと足を動かそうと軸足を前にする…


だが、行動はそこまでだった…



右足首を先ほど倒したヴァンパイアががっしりと掴んで離さない…



「貴様等、人間ハ…ワレラに捕食されるのだ!!」




その眼には狂気が宿る…



「離しやが…っ!!」



すぐそこまで…もう一匹のヴァンパイアが迫る…



(ここで終わりかよ…!!孝太郎…杏樹…)




ヴァンパイアは距離を縮め…


そして…







ガキンッッ!!




何かの金属音だけがし…その場に静寂が広がる…



攻撃が来ない?



そんな疑問を抱え雅人は静かに眼を開ける…




「あ…」



「全くウルサいと思ったら何がおこってんだか…」




そこには…




「姉貴っ!!」



「ウルサいょ!!一体何がどうなってんのか説明しやがれ!!」



幸は日本刀一本でヴァンパイアの動きを止めていた…



「コノ…人間ごときガァ…!!」



「あぁもう!!わけわかんないんだょ!!

化けもんでも何でもいいけどアタシのアパートこわすんじゃないよ!!」



幸はそう言うと刀で弾き飛ばし向かってきたヴァンパイアにカウンターの〔幻の左フック〕を浴びせ文字通り一撃の下に沈めた…



鬼神のごとき強さを人外のヴァンパイアにまで見せつけた幸は凄い勢いで雅人へと向かって走り出す…



「ったく!!お前もとんだ彼女連れてきたな!!アタシのアパートどうしてくれるんだよ!!」



そう言って雅人の足首を掴むヴァンパイアを蹴り込んだ…



あまりにもその姿は戦慄である…



「おいっ!!」


「はいっ!!」



今の幸を怒らせない方がいい…そう思った雅人は即座に返事した…




「これ…持っていきやがれ!!」



そう言って差し出されたのは幸がさっきまで保持していた日本刀だった…



「これって…」


「さっさと行きやがれ!!!大変なんだろ!?」




少し間を置いて雅人はやっと言えた…



「ありがとう…俺…行くから!!」




幸は何も喋らなかった…



その瞬間幸へとヴァンパイアが襲いかかる!!



幸は鬼神の動きでヴァンパイアへと〔戦慄の膝蹴り〕を喰らわした…



一瞬のうちにヴァンパイアは片づけられた…



その瞬間幸は大声で叫んだ。



「おい!!」



その言葉に雅人は振り返った。



「……負けんじゃねぇぞ!!」





「ああ!!」



雅人はそう言って右手の親指を立て高々と掲げた…



幸は無言で親指を高々と掲げた



(絶対負けんじゃねぇぞ…)



その言葉が雅人に伝わったかは分からない…




だが…雅人は走りつづける…







満月は狂おしいほどに咲き乱れる…



鮮血の刻を知らせるが如く…




どうも、疲労困憊の作者です…(>_<)


いえ…なんでもないです!!

皆様のためならたとえこの身が朽ち果てようと…!!


…とりあえずお休みなさい…


これからも応援よろしく…お願い…しま…すZZzz....



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