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第4夜 ー過去ー




およそ日本とは遠く離れた国…。

そこにある少女がいた…。




[お父様〜!!こっち!こっち!]


そう言って一面の花畑を走る少女…。


杏樹。


誇り高きウルスフィード家が誇る子である…。


そして…少女は



   [禁忌の子]




[待ってくれ!!杏樹!]


そう言って少女の後を追いかけるのは

誇り高きウルスフィード家現当主

[ベレヌ ウルスフィード エルン]

代々受け継がれてきたウルスフィード家率いる[狼人族]を束ねてきた王でもある。


[きゃっ!!!]


勢い余って石に足をつまずき今にも転びそうになった少女にエルンは手を伸ばした…。


満面の笑みで手をつかんで笑ってくれる少女をエルンは見つめた。


[杏樹…杏樹は私がずっと守るよ…]







三年前…



[あの子は…生かしていけはいけない!!]


[あの子は禁忌の子だ!!]


[呪われし刻印を持つ子…今すぐ処分を!!]



ガンッッ!!!!



その場にいる皆の視線がその音の先に注目する…。


[あの子は…杏樹は貴様等がなんと言おうと!!

私の子だっ!!!]


ザワザワと周りが落胆やあせりから声を出している。


[ですが…王…。このままでは我が国の存亡が!!]



再びテーブルを叩く音…。


[わかっている…。わかっているが…まだ生まれて間もない子供を…どうしろと…言うのだ…]


エルンは歯ぎしりしその口元からは血がにじんでいる。



ガタンッ!!



突然皆が集まる部屋の入り口から音がした。


足早に闇へと消える影…。

エルンは迷わず駆け出しその影の後を追った。







そこは城の屋外…。夜空にまんべんなく満月が広がっている。


[全部聞こえてたよ?…お父様]


その言葉がエルンの胸へと深く刺さる。

[杏樹…]


エルンは少女のそばへと近寄り座った。


[大丈夫だよ…杏樹は私が守るから]


ふと少女の首に目をやる。

そこには呪われし刻印が刻まれていた。



その刻印を持つ者は世界を滅ぼすと言われている…。

遅かれ早かれその時は来るとは分かっていた。


だが…いや、理由は分かっている。


(すまない…杏樹…)




それは私の犯した罪なのだから…。









(あれから三年…か。)


エルンは思い出したように過去を振り返った。


(このまま…こんな日々であればいいのだが…)


エルンは少女と共に城へと向かう。


これから起こる事も知らず…。




[とうとう運命の日ですな?王エルンよ]


[ほんとにこれでよかったのかね?]


[やつら…下等な吸血鬼の連中は近々行動するでしょうな]


様々な非難の声が王エルンに注がれる。

たしかに非難を浴びる事は分かっていた。

だがいつも王として…それ以前に1人の子の父親として正しい事はしたと思っている…。

だから…



[皆の者…よく聞いてくれ…私は皆が知っている通り我が娘…杏樹のため、これまで多くの同志、家族を失ってきた…。皆には迷惑をかけている…。

だが…私はー]




言葉はそこで途切れた…。


突然城全体に轟音が響き渡る。

次の瞬間…丈夫な外壁は一瞬にして崩れ大きな穴が開いた。


そしてその穴は一斉に蠢く ソレ によって埋められる。




コウモリ…ばかデカいコウモリだった。


ソレは悲鳴に似た声を発すると一瞬にして近くにいた狼人族の男のそばへと降り立った。


そして次の瞬間…




ザシュ…



巨大なコウモリ男は首もとへ噛みつき体中の体液、血液を残らず吸い取りあげる。狼人族の男は自分がやられた事にも気付かずただ呆然と立っていた…。

周りもである。


[やはり…雑魚の血はマズいな…]


その一言は周りを混乱に陥れるには十分なものだった。


辺りは騒然と化した…。







[ふぁぁぁ〜。眠たい]


少女…杏樹は目を覚ます。


なにやら杏樹はいつもと様子が違う事に気がついた。

だいたいこの位の時間であれば誰かが起こしに来てくれるはずなのだが…


何やら今日は城中が騒がしく思える。


とりあえず杏樹は散策してみる事にした。







どうやらこの大広間から音が響いているらしい。


(何かあったのかな?……そうだ!!今日はお父様の誕生日だった!!私ったらすっかり忘れちゃって。じゃあみんなパーティーの準備をしてるんだ!!

そうと決まれば何か私も手伝わなきゃ!!)


杏樹の本能は告げていた…。


(開けてはいけない…)


杏樹はそれでも扉を開ける…。




ガチャン…。




そこには騒然とした光景が広がっていた…。



逃げ惑う仲間たち


逃げ遅れ捕食される仲間たち


ただ悲鳴をあげる仲間たち


必死に抵抗する仲間たち


そして…捕食するヴァンパイアたち



一匹のヴァンパイアがこちらの存在に気付いた…


[あん…!?あ〜ん!?

あれ〜!?

姫様じゃ〜ん?]


あくまでそのヴァンパイアの口調は楽しげだった。


まさにその血走った目は自然界の捕食者…そのもののようだった。


[あ〜!!俺良いこと考えちゃった〜!!俺が姫様の禁忌の血を吸えばかな〜りナイスじゃないか〜?]


狂っている…杏樹はただそう感じた。


(えっ…やっ!!!

逃げなきゃ…!!どこに!?逃げ場なんて!?)


混乱する杏樹にかまわず一匹のヴァンパイアは目標を一点に絞り突撃してくる…その姿はまさに弾丸のようであった。


[お姫様〜。

い〜た〜だ〜き〜ま〜ジュッッ!!!!]



突然ヴァンパイアの奇声は鳴り止む。

その異変に杏樹は後ろを振り向いた。


そこには…


[お父様っ!!!]



そこには王エルンが立っていた。


エルンはヴァンパイアに向かい城の支柱を投げつけたのだった。

ヴァンパイアは無惨にも支柱に潰されながらグゥと声を漏らしている。


どうやら今の一撃では倒せなかったらしい…。


[大丈夫かっ!!杏樹!!!]


そう言うエルンの体こそ全身が傷やら痣だらけで見るもたえない状態だった…。

そしてその姿は既に体長が2メートル以上はゆうには越えるかというくらいの巨体で黒い体毛に覆われた状態になっている。



すなわち…。



獣人化…。


まさにその姿形は西洋の狼男を模していた。


[杏樹っ…よかった…無事だったか]


[お父様!!一体…どうなって…]


無理もないだろう…年端もいかぬ者がいきなりこんな状況を見せられても頭で理解出来るはずがない…。


[杏樹…こっちに!!]


エルンは半ば無理やり状況を理解しきれていない杏樹の腕を掴み奥の鉄の扉へと向かった。

その時一斉に周りにいたヴァンパイア達は視線を杏樹へと向ける…。


[姫だっ!!!]


[俺によこせ!!]


[あの血はっ!!]


様々な声が呪詛のように木霊する。


[いっ…いゃ…]


杏樹は言葉にならない悲鳴をあげる。

そしてヴァンパイア達は一斉に襲いかかるっ!!


[走るぞっ!!!杏樹!!]


エルンの言葉に杏樹は正気を取り戻し、2人は思い切り扉に向かって走った。




[シャアァアアアッッ!!]


杏樹達を覆う黒い固まり達。

幾つもの牙が2人へと剥き出しの殺意を露わにする…。







間一髪…ほんの一瞬扉を開けるのが遅かったら…もはやその体は骨身となっていただろう。


だが安心は出来なかった…。

その扉は鉄製とはいえ今にも破壊されそうだった。


がんがんと響く破壊音…爪をこすりつける嫌な音。

そしてヴァンパイア達の獲物に対する荒々しい吐息がかけられている。



そう…この部屋には逃げ場がなかった…。

密閉された空間…それが杏樹には自らの棺に思えた…。

狩るものと狩られるもの…それはいやなほどハッキリとしていた。



父エルンを杏樹は見つめる…。


その体毛で覆われた体は徐々に小さくなりやがて本来の父の姿に戻る。


[お父様っ…]


杏樹はこらえていた恐怖心をとうとう抑えきれなかった。


愛する父の胸へと顔を埋めた…


[すまない…杏樹]


父は一言そう言った…。







あれから何時間たったのだろう…。未だ扉の向こうでは惨劇が繰り広げられている事だろう…


ふと杏樹はある事に気がつく。


背の大きな父の姿でいままで分からなかったが大きな棚がいくつもある。


ここは城で唯一立ち入り禁止の烙印が押されていた父の書斎である事が分かった…。

どの本を取っても何を書いてるのかサッパリ分からない。



父はある本を手にとりながら言った。




[杏樹…私は…長年君のその刻印について研究してきた…]


刻印…そうその意味は杏樹自身わかっていた…

一族の中でこんな伝説話を聞かされた事がある…



(その刻印持たれしもの…世界を滅ぼす力持たれり…)



[私の研究によれば伝説には続きが存在するんだ…]



そう言うと父は淡々と語り始める…


[されど光あらざれば刻印、相反し光とともに照らすだろう…]


光…杏樹にはそれが一体なんのことかサッパリ分からない。



その時…扉からとてつもない音がした。


ガンガンッッ!!!ガチャガチャン!!



よく見れば扉が歪み隙間が出来ている…

そこには…


[きゃあぁああ!!]


ヴァンパイア達は血走った眼で見つめながら異常な力で扉をこじ開けようとしていた。


[おとうさっ…!!!?]


エルンはいきなり杏樹をドンと押してその場につき倒した…


[えっ…お父様…?]



[Elris…vallel galpretta…]


エルンは聞き覚えのない言葉を発している。


[杏樹…私はようやく分かったんだよ…光がなんたるかを]


エルンの口調はとても優しいものだった。

杏樹はその言葉の意味をようやく理解してきた…


[杏樹なら大丈夫だよ…強い子だから。困った時はいつも私がそばにいるから…]



ポゥ…っと優しい光が杏樹の体の周りを包み込む…。

それは光ではなく魔法陣のようだった。


[やだよ…そんなのやだよ!!お父様!!]


エルンはあくまで優しい顔つきのままその言葉を口ずさむ。


[sametyvani…les…]


その言葉は狼人族に古くから伝わる呪文だった。

それを意味するものは…

すなわち…[転送]を意味していた。


[お父様!!!お父様!!!]


杏樹の叫びはすでに届いていなかった…



見ると鋼鉄のドアが徐々に引き裂かれているのが見えた。


杏樹を包み込む魔法陣が徐々にに明るくなっていく…。


[やだよっ!!!そんなのっ!!]


杏樹はもはや泣いていた…。


[お父様!!お父様!!]


よく見るとエルンは何が言っている…


杏樹はかまわず叫び続けた…


[お父様!!やだよっ!!おとうさっ…]


[杏樹…光はきっと…君を照らし続けるから]


[…お父様…]




そして…次にはもう杏樹の姿は消えていた…。


同時にエルンへと言葉がかけられる。


[よぉ。王様。…別れは終わったかい?]


残酷にも吐き捨てられる言葉…


エルンは無言でいる。


[惜しかったなぁ〜あの姫様の血を飲めなかったのは!!まぁ…いいや。アンタで我慢しとくよ]


ビキビキと音を立ててヴァンパイアの牙は伸びていく…


[じゃあ…いただきまっ…]




ヴァンパイアの顔面に大きな手が覆われる。


次の瞬間…エルンであった[狼人]はヴァンパイアを凄い力で床へと叩きつけた。




[貴様等…覚悟は出来てるだろうな…]



気がつけばヴァンパイア達の前には恐ろしい大きさの怪物が立ちはだかっていた…。


刹那…轟く野獣の叫び…




それは悲しくも美しく響く…。






満月は美しく輝きちらす…



それはまるで生命の終わりのように…



大変更新が遅くなって申し訳ありません(>_<)!!


毎回皆様には迷惑かけておりますね…(泣)


で…今回の話は杏樹の過去話ってわけですが…がんばって書きましたょ〜(T_T)



出来れば感想よろしくお願いします!!!


どーもRev crazy dreamでした〜(*^-^)b

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