此花神社
──続きまして、NEWSです。
昨晩、此花神社にさい銭泥棒があったようです。
賽銭箱が壊されていました。
犯人は捕まっていません。
続きまして──
「へえ。そこのすぐ近くの神社じゃない。せこい話だね」
「嫌だね。罰当たりな」
きつねうどんを母と二人で食べながらTVでお昼のニュースを見ていると、近所のお稲荷さんでさい銭泥棒があったらしい。
さい銭泥棒とはいえ、近所でよくお参りする神社なのでいい気はしない。
しかし、こんなピンポイントで小さなニュースをTVで流すだろうか?
地方局だけど。
夕方からの勤務なので支度を終えて靴を履く。
夜勤だから余裕と見せかけて、忙しいんだろうな──
「行ってきます」
母に一声かけて家を出る。
今日は、一日雨の予報だから傘を用意した。
しかし、ぱらつきもせず無駄になった。
(まぁ、夜に降るだろうし……)
空一面の白い曇り空。
商店街のアーケードにいつもの烏が止まっている。
それはそれは大きな…………とても不釣り合いな、アーケード壊れるだろ…………という大きな烏が一羽止まっている。
私はいつものようにその烏に手を振る。
(行ってきます)
1人の老人が前から来てすれ違った。
灰色のパーカーに灰色のスウェット。
不審でも無かったけども、違和感を感じた。
とはいえ通勤なので気にもとめずに地下鉄の駅へ急ぐ。
その日の晩は大層繁盛した。
仕事を片付けて帰路に着く。
予報は90%の雨の予報だったが、またしても降られなかった。
傘を用意するも…………偶には降られたい。
夜空は白く光り紫色の雲に包まれて、恐らく当分繁盛するだろう。
翌日。
休日に遅く起きて、母にぶつくさ言われる。
昼飯の前に、さい銭泥棒に遭った此花神社にお参りに行く。
信心深いかというと、どうだろう。
いまいち自分が信用出来ない。
それでもお賽銭を入れて手を合わせる。
賽銭箱は新しいのが設置されていた。
…………仕事が早い。
鳥居を潜り、なんとなく後ろを向いた。
すると青い顔色の悪い蛭子様が居た。
稲荷神社だし…………商売繁盛繋がりか……………。
ヨシ!
明日も繁盛する気がした。
晩ご飯をおさんどんをして、夜のNEWSを母と視る。
さい銭泥棒が捕まっていた。
犯人の映像が映る。
──灰色のパーカーに灰色のスウェット。
やっぱりあの時の老人だった。
そんな気はした。
(馬鹿だねぇ………彼処の稲荷は効くのに)
恐らく祟りがいくだろう。
犯人の老人に少し同情した。
ニュースを見終わり、寝室の2階に上がろうと電気を消した。
ポゥ
音はしないけど、暗闇に長方形の白い枠が浮かんだ。
電気をつける。
何もなく壁が見える。
電気を消す。
ただの暗闇が訪れた。
烏といい、白い枠といい、異界からの誘いが来る。
(ドラフト1位かな…………)
心でつまらない事を呟いて、2階に上がった。




