表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

プロポーズは突然に

事件です!

プロポーズされました!


『まずはお友達から』ではなく、『交際の申し込み』でもなく、『プロポーズ』。


確かに出会いが欲しいと言ったけれど。

でも、まずは彼氏が欲しかったのであって、今すぐ結婚したかったわけではない。


何があったのかと言うと、ほんの数時間前の今朝、会社で起こった。


今日は朝から商談の予定が一件入っていた。相手の方はアメリカ国籍の男性、ミゲル・アンダーソンさん。確か31歳。

インディアンジュエリーを主に扱うバイヤーの方で、他にも昔懐かしいアメリカン雑貨も扱っている。

もちろん英語での商談になる。だから、中国語圏担当の私はいらないはずだった。それなのに、英語圏を担当している職員が急遽休みになり、間の悪いことに、英語が出来る他の者も全て出払っていた。そこで、中国語程ではないが、英語の通訳も出来る私が駆り出された。


普段着ることの無いスーツは、いつでも会社のロッカーに入っている。置きスーツしていて良かった。


 肝心の通訳の方は、最近英語を話す機会が無かったので少し不安だったが、スラスラと言葉が出てきた。


商談相手のミゲルさんは、いくつかのサンプルを持ってきていた。

エキゾチックなアクセサリーが大好きな私は、美しくつやつやと輝くブルーグリーンのターコイズと、繊細なシルバーの組み合わせに気持ちがワクワクしてしまい、気付くとたくさんの質問をしていた。

そして、自社の営業担当者に、ミゲルさんからの要望や、アクセサリーの素晴らしさを、熱を込めて伝えた。


しばらく商談が続いて、営業担当者に通訳内容を伝えているときにふと視線に気付いた。


ミゲルさんが、ソファーに座る私の腰?の辺りを見ている。


絶対見ている。


結構遠慮無く見ている。


明らかに顔じゃなくて腰と言うか尻を見ている。だって顔はこちらを見ているのに、目が合わない。見ているのは明らかに尻だ。


そうだ、今は救世主サロペット様じゃ無かった。スーツを着ているんだった。隠せないから目立ってしまって、思わず見てしまったのだろう。


私は急激に恥ずかしさが込み上げてきて、早くその場を立ち去りたくてたまらなくなった。


そこにタイミング良く、営業担当者の じゃあそろそろこの辺でまとめに… との言葉があがり、心底ほっとした。


商談が終わった瞬間、私は失礼にならないように、自分史上最速でその場から消えた。


急いで女子更衣室に入ろうとした瞬間、手を捕まれた。


??!!手!!??


驚いて振り向くと、ミゲルさんに手を捕まれていた。

ミゲルさんは、驚きすぎて固まっている私の手を優雅に持ち直し、まるで映画のワンシーンのように片膝をつき、


「Eu te quero.」


と言った。


ん?えうちけー?


たまたま近くにいた、ポルトガル語圏担当者が叫んだ。


「きゃー!!貴方が欲しいだって!!」


その叫び声で人が集まる。


叫びに動じず言葉を続けるミゲルさん。


鋼のメンタル。


「Eu quero passar o restante da minha vida ao seu lado.」


んん?何て言った?えう?みにゃ???


「ちょっとちょっと野尻さん!プロポーズされてる!『残りの人生貴方と過ごしたい』って!!」


「「「っっきゃー!!!」」」


集まっていた人達の叫ぶ声が、まるで遠くから聞こえてくるような錯覚を覚えた。


いや何でポルトガル語?

さっきミゲルさんは流暢な英語だったよ?


プロポーズされたことより、ミゲルさんの使っている言語が気になる。私はかなり混乱しているようだ。


何故かポルトガル語だし、プロポーズの言葉は頭に入ってこないし、周りが舞い上がって騒いでいるし。


カオス。


「いやいやいや。さっき会ったばかりですよね?それに何故ポルトガル語?」


はっと我に返り、最もな疑問をなげかけるも、帰ってきた言葉でさらに混乱した。


「ヒトヲアイスルノニ、ジカンモコトバモカンケイナイデス。ワタシノハハガ、ブラジルノヒトデス。」


日本語話せるじゃん。というより、プロポーズは伝わらないと意味無いんじゃないかな。英語なら私にも理解出来るんだから、英語でよかったんじゃないかな。うん。


驚きと混乱で、言葉が出てこないでいる私に、ミゲルさんは追撃してくる。


「サワ、アナタニホレマシタ。ツヤヤカナクロカミモ、スタイルモ、アナタノコエモ、スベテガスバラシイ。」


「アシタマタキマス。ヘンジクダサイ。」


そう言ってミゲルさんは帰っていった。


日本語堪能…。”艶やかな”とか、勉強してないとサラッと出てこない単語でしょそれ。


それより最後に何て言ってた?


アシタマタキマス…明日また来ます!


ヘンジクダサイ…返事下さい!


返事を聞きに、明日また来るってこと?


ことを急ぎすぎー!!


マテマテ、ワタシノナニガヨカッタノ?


おっと、私は普通に話して良いんだった。焦った。


落ち着こう。一旦状況と情報を整理しよう。


私は今プロポーズされた。相手はアメリカ国籍のミゲルさん。ミゲルさんは商談相手。ミゲルさんのお母様はブラジルの人。以上。


情報少な!!


周りが何やら騒いでいるが、ぼーっとしたまま、更衣室に入った。そしていつの間にか着替え終えていた。午後は頭がボケたまま書類を眺め、気付けば業務時間が終わっていた。


と言うことがありました。


どうしよう。


いや待て待て。なぜ私は迷っているんだろう。これ迷う必要があるのだろうか。ミゲルさんはきっと冗談だったに違いない。出会ったばかりでプロポーズはさすがにない。


でも騒ぎをものともしないミゲルさんは、とても真剣に見えた。


明日また来るって……そんなに早く答えられない……そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠ってしまった。


きっと一時の気の迷いだ…ぐぅ…でももし本気だったら…?…ぐう…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ